首里の馬

読んだ記録のお引越12

読んだ記録のお引越12

「首里の馬」高山羽根子著、新潮社刊。 https://www.shinchosha.co.jp/book/353381/ 一文が短く読みやすい。その中に情報がぎゅっと詰まっている。 在野の研究者である順(より)さんが、収集した沖縄の郷土資料を置いている資料館。主人公の未名子は仕事が休みの日にそこに通って、インデックスカードの整理を手伝う。かたわら、スマホで資料を撮影し、大量のSDカードを自宅にため込んでいる。 沖縄が激しい砲撃と地上戦にさらされ、地形が変わってしまうほどの被

【250字レビュー】首里の馬

【250字レビュー】首里の馬

ゆっくりした流れの中で、登場人物たちの背景が少しずつ明らかになる。けれど物語はどこにも焦点を結ばない。孤独な登場人物たちの住む場所はバラバラだが、クイズで繋がって生きている。偶然やってきた古い馬に乗り、記録の詰まった場所が壊されるのを見ている、このシュールな映像が切なく印象的。記録で人は自分の存在がどんなものか知ることができる。人間が恐れや不安から解放されるには、時間の経過を通して自分のいる場所や世界を知り、自分もここで消えていくことを良しとすることなのかという感触。自分が世

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私が選ぶ2020年マイ芥川賞

私が選ぶ2020年マイ芥川賞

2020年の芥川賞は上半期が遠野遥『破局』高山羽根子『首里の馬』、下半期が宇佐見りん『推し、燃ゆ』となりました。しかし自分だったらどの作品を推すだろうかと思い、候補作10作品を実際に読んでランキングしてやろうというのが、今回の企画です。 1位 遠野遥『破局』 自分の感情の動きを極めて客観的に描写した実験作のように思える。喜怒哀楽のある健全な青年であるが、本質的に人生をロールプレイングゲームのように捉えている感があり、その虚しさが淡々とした文体から滲みでる。受験勉強なりスポ

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【#読書の記憶から6】記録の意味と意義✖️私たちに訴えかけるもの

【#読書の記憶から6】記録の意味と意義✖️私たちに訴えかけるもの

30代になって、『もっと“社会の仕組み”そのものについて知りたい』と思うようになった。 ネットのトップニュースをかいつまむだけじゃなくて、もっと “現状”や“当事者の声”により近づいて、知見を広げたいと感じることが増えた。 でもそのためには、ニュース番組では(ニュースの規模や内容が)おおまかすぎるし、新聞紙では紙面の制限が大きすぎる…。 そこで、ノンフィクションやルポタージュのジャンルの本を読むことが増えた。 1冊読み終わるのに時間もかかるし、リアタイと違って発刊や読

高山羽根子「首里の馬」を読む。どこが面白いのか

高山羽根子「首里の馬」を読む。どこが面白いのか

私は最近いろいろあって芥川賞を受賞した作品をちまちま読んでいるのだが、本当に面白かったのでブログを書こうと思った。現状一番面白かったのは円城塔の「道化師の蝶」だが、これと並ぶくらい面白かった。面白さの方向性が大分違うため、私は「道化師の蝶」の読解に関しては現状私の力量では沈黙せざるを得ないが、高山羽根子の「首里の馬」に関しては言語化が可能なため記していこうと思う。あと諸注意であるが、ネタバレを含むのでそこにはご了承いただきたいが、エンタメと違いネタバレをされた後に読んでも面白

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読書感想 『首里の馬』 高山羽根子 「有用性の向こう側」

読書感想 『首里の馬』 高山羽根子 「有用性の向こう側」

 芥川賞と直木賞の予想と、その選考結果について書評家の2人が話し合うラジオ番組があって、それは、とても率直で、取り上げられた小説を読みたくなるような話が繰り広げられていて、ここ数年聞くようになった。  文学という世界から見たら、自分のしていることは、にわかファンみたいな行動なのだと思うし、読みたくなる、といっても、そんなに全部は読めないし、作品によっては、ラジオで聞いていた時のほうが面白いこともあった。  とても遅いとは思うのだけど、小説を語ることも、当然だけど、それは一

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身近に当たり前にあるはずのものが、急になくなってしまうことがある。あのジャンバラ屋さん、どうなったでせうね?――幼いころからあまり人間が好きじゃないと考えていた未名子は、でも、いくつかの、身の回りにいる少数の人間は思えばすべて、かすかに、でもたしかに大切な人だと思えた。(p71)

身近に当たり前にあるはずのものが、急になくなってしまうことがある。あのジャンバラ屋さん、どうなったでせうね?――幼いころからあまり人間が好きじゃないと考えていた未名子は、でも、いくつかの、身の回りにいる少数の人間は思えばすべて、かすかに、でもたしかに大切な人だと思えた。(p71)

沖縄の作家は「足下の泉」を掘り続ける宿命なのだろう、と言う話。

沖縄の作家は「足下の泉」を掘り続ける宿命なのだろう、と言う話。

10月27日、沖縄初の芥川賞作家である大城立裕さんがお亡くなりになりました。最後の最後まで物書きであり、そして一貫して沖縄を描いて来た人でもありました。 同じく芥川賞作家である又吉栄喜さんが新聞に寄せた追悼コラム、そして少し前に自らの執筆スタンスについて書かれていた事を思い出してこの記事を書いてみます。 沖縄文学は沖縄から離れない、離れられない 大城さんが芥川賞を受賞した作品『カクテル・パーティー』は、米軍占領下の沖縄で書かれた小説です。米軍──引いては軍隊の持つ加害性

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首里の馬

首里の馬

著:高山羽根子 馬の来訪から何かが始まってゆく未名子の物語。 「情報」「歴史」「学ぶこと」「知ること」 それらをフォルダに入れてゆくことの大切を伝えてくれる。 好きな文体だった。

わたしの本棚16夜~「首里の馬」

わたしの本棚16夜~「首里の馬」

ひとつの作品に対して、選考委員と候補作によって、これだけ評価が異なるものなんだなあ、と今年の芥川賞と三島由紀夫賞の選評を読んで感じました。両賞にノミネートされたのは、「首里の馬」だけでした。芥川賞では、各選考委員の好評価が多く、松浦寿輝氏などは絶賛されていましたが、三島由紀夫賞では欠点をいう選考委員もおり、川上弘美氏は5作品中最下位だと、はっきり明記しています。賞というものは候補作中の相対評価であることを、改めて感じてしまいました。 ☆「首里の馬」 高山羽根子著 新潮社 1

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