今年上半期芥川賞受賞作の感想文(^_^)
本「首里の馬」「破局」
令和2年上半期芥川賞受賞の2作品です。受賞作品は文学界のトレンドを知るために毎回読んでいますが、今回は2作品あるのでいつもの2倍読むことができました。
「首里の馬」はその題名の通り、沖縄が舞台の小説で、主人公の女性が宮古馬に出会う物語です。序章は資料館に勤務する主人公の日常が淡々と事務的に描かれていますが、中段からオンラインでの仕事が導入されると、これまでの反動で、一気に物語の展開に期待してしまいます。
ただこれも最後まで解明されない中途半端な感はぬぐえませんでしたし、ヒコーキと名付けた宮古馬の登場も、何かの象徴なり暗示であったかもしれませんが、私の読解力不足なのか、これも最後まで捉えることはできませんでした。
最近の芥川賞受賞の女性作品では、昨年の今村夏子さんの「むらさきのスカートの女」や少し前では村田沙耶香さんの「コンビニ人間」など、ストーリー展開に長けながら、エンタメのスパイスも効かせたメリハリのある作品が多かっただけに、残念ながら今回の作品には、それらを見い出すことができませんでした。
「破局」は作者が28歳という若い世代の受賞作ですが、読了した感想は、これは小説というより映画だなと思いましたね。彼女との単調な生活からドラスティックな結末が待っている訳ですが、そうしたストーリー展開や、短文の集積による文章は、小説というよりもセリフ以外の表現も含めて、映画のシナリオのような感じでした。
正直粗削りに感じた文章も、28歳の将来性に期待した選考委員の意見だったかもしれませんが、逆に若さゆえの鋭い感性というものが、個人的には文章から伝わってきませんでした。
彼女とのセックスを描いたイロ物とどう違うのか、私にはうまく説明ができませんが。
まあ今回の受賞作品は、個人的な評価はイマイチでしたが、これも昨今の文学界のトレンドなのだと理解すれば、また次回受賞作に期待したい所ではあります。
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