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新・芥川賞作家、高山羽根子の現実を先んじる想像力に瞠目!(No. 875)

考える人 メールマガジン
2020年7月30日号(No. 875)

虎屋文庫は知っている――
信長に光秀に家康、戦国武将は羊羹でおもてなしをしていた!


室町時代創業の虎屋に、和菓子の研究をする「虎屋文庫」という部署があるのをご存じでしたか?

虎屋文庫による『ようかん』が売行き好調、重版出来!

今回は大河ドラマでもおなじみの戦国武将たちと羊羹の知られざる関係をお聞きしました。ますます奥の深い「ようかん」の世界をぜひお楽しみください。

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編集長のお気に入り

◎高山羽根子『首里の馬』(新潮社)

私が「考える人」と兼務している「新潮」編集部から、第163回芥川賞受賞作が出ました。「新潮」2020年3月号に掲載された高山羽根子さんの「首里の馬」です(遠野遥「破局」と同時受賞)。

「新潮」からの受賞作は第160回芥川賞の町屋良平さん「1R1分34秒」以来1年半ぶりとなります。27日に単行本が刊行になりました。

オブジェクタム』(朝日新聞出版)で話題になってから約3年間、高山さんは毎回、次はどんな小説を書かれるのかと楽しみにさせられてきた作家でした。毎回、この手があるのか、と驚かされる、アイデアの魔術師のような小説家はそんなに多いわけではありません。「首里の馬」はその中でも一番アイデアの詰まった傑作です。賞を得て、おそらくもっと自由な書き手になるであろう高山さんが今後どのような方向に向かうのか、楽しみでなりません。

担当編集者は、以前、新潮別冊「平成の名小説」を紹介したときにも登場してもらった杉山達哉くんです。せっかくなので、このメールマガジン読者向けにメッセージを書いてもらいました。以下、杉山くんの文章です。

*

「首里の馬」執筆前の打ち合わせで、高山さんとは大きく二つのことを決めました。一つは、原稿用紙200枚超という、ご自身にとってこれまでで最も長い作品にすること。そしてもう一つは、現代の沖縄という具体的な土地を舞台にすること。最初の段階から琉球競馬の馬を登場させるというアイディアはあったのですが、実際に書き進めていく中で、不思議な私設資料館でのボランティアや遠隔地で働く人にクイズを出す仕事など、次々に魅力的な設定が生まれていきました。そして、これら一見バラバラな要素がラストでは綺麗な像を結び、高山さんの現時点での集大成とも言える非常に柄の大きな作品になったと思います。

作家の想像力が現実に先んじるということが時に起きますが、本作が雑誌に掲載された直後にコロナ禍の時代に突入し、作中描かれるリモートワークやビデオ通話が身近なものになったのは本当に驚きました。この世界の全てを記録しようという主人公・未名子の願いは、世界の在り方が大きく変貌しつつある今だからこそ、より痛切に感じられます(ある意味でこの作品は政治小説でもあります)。物語の終盤、未名子は異国の孤独な友に向かって、三つの言葉からなるクイズの問題を投げかけます。答えが作品の中で示されることはありませんが、ヒントは埋め込まれていますので、気になる方は解いてみてください。現実のある出来事を想起させるその答えに、息を呑むことでしょう。

担当者としても読むたびごとに新たな発見があるこの作品を、ぜひ皆様にも味わっていただけたら嬉しいです。

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