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短編集

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私の過去にした大恋愛の、過去と、今を比較した作品となっています。ぜひ読んでください。
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短編 紅葉

短編 紅葉

彼女の手を引いて、自分の通った学校、その近くの紅葉を見に行った。
2人で初めて見る紅葉、そしてあまりいい思い出がないこの街に、君がいる。

昔話をしながら歩いてると、彼女は目を見てちゃんと聞いてくれる。

小さな川にはしゃいでいて、滑ってしまわないか心配になったり、過去、ここで走り回っていた思い出が蘇った。

不思議なものだと思う。

自分の物語に、突然違う世界のキャラクターがそこに現れた気分。

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短編 ネクタイ

短編 ネクタイ

夏の旅行。

彼女にサプライズを一つ用意していた。

それは赤いネクタイ。

旅行に行く少し前に、昇進した君へのお祝い。

仕事中ネクタイをつけていて、仕事中のネクタイは決まりがあるかと聞いたら、少し可愛くても問題ないと言っていた。

彼女の持ち物にあったものがいいなと思い、赤にした。

そして旅行当日にホテルで渡した。

そのネクタイを仕事中付けてるところを考えて送って、彼女にはピッタリの色だと

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短編 答え合わせ

短編 答え合わせ

京都駅の下に着いた。
彼女が来るまでそわそわしていたが、一時間はあっという間で、エレベーターから降りてきて俺を見た。

ほい。

彼女にマカロンを渡しそして。

「手紙書いたよ。読みたい?」

と見せると笑顔で手紙を抜けとって、嬉しいと答えてた。
でも内容は分かっていない。

だから俺は、今読んでと言った。

何で?って顔をしてたけど、今読んで、感想が聞きたいと少し遠回しに言ってみて、彼女は手紙を

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短編 手紙

短編 手紙

2018年1月6日

俺はある試験を受けに東京にいた。

ずっと受け続ける、子供の頃の夢、その夢を叶えるための試験。

ただ正直気が気ではなかった。

当時、仲良くしていた人のことが自分は気になっていた。

お正月に、俺の事を好きだと友人に相談したと、俺に言ってきた、変な人ではあった。

その子とはその日までいろんな思い出が出来ていて、九月から突然始まった仲良しな関係が少しずつ色が付いていってその

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短編 祇園祭

短編 祇園祭

「見つけた。」

手を掴まれ、彼女は私を見つけてくれました。

初めての祇園祭の夜。道を歩いていてどこを見ても人人人。

コロナ前、多分外国人も、日本人も一番の密度で京都にいたと思います。

「蟷螂鉾、長刀鉾、大船鉾、鉾が休んでる時にね。狭い道と道の間でおじさん達が座って休憩してるの見れるよ。」

彼女は生まれ育ったこの場所で何度も見た風景なのだろう。

いつもよりも饒舌に教えてくれました。ただ仕

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短編 息をしている

短編 息をしている

そこには何食わぬ顔で本を眺める君がいた。

初めは何も気づかなかった。ただ通り過ぎた時、目の端に見覚えのある鞄があって立ち止まり、鞄、足、手、顔と見た。

間違いはなかった。顔はよく見えなかったけどすぐにわかった。

ただそのあとは、話しかけなかった。

確認したらただ通り過ぎ、目的の本の元へ行った。

話しかけたい気持ち、ないとは言えない。
でも今の自分が話しかけたい過去の自分の肩を掴んだ。

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短編 ツマガリ

短編 ツマガリ

私たち2人を繋いでくれた物に、お菓子がある。

まだお付き合いをする前、私は彼女に本を貸した。本と共に帰ってきた物、それはお菓子とひとつの手紙だった。

手紙にはお礼と、今の私たちの関係が彼女にとって大きな出来事になっていることが書いていた。
そして入っていたお菓子は彼女が1番愛したお菓子だ。

私はその中のクッキーを一つ口にして、手紙を読んでいた。
よくわからないが涙が出た。人からストレートに感

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短編 クリスマス

短編 クリスマス

ちょっとした喧嘩だった。

彼女にとってのクリスマスと、私にとってのクリスマスは違った。
彼女にとってはただの1日。

私は母の誕生日でもあり、みんなでホールのケーキを囲んで楽しむ特別な日。

私にとっての特別は彼女に伝わらなかった。

でも、彼女は来てくれた。

私は、彼女の大好きな洋菓子屋のケーキをこっそり予約して、始発で取りに行く。

彼女はすごく嬉しそうだった。

彼女にとって初めてホール

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短編 した

短編 した

キスをした時、こう言われた。

「舌が大きいね」気にしたことがなかったが、確かにそうだと思う。

体格には18センチ近く差があったら、

内部の物も大きさが違う。

ただその時に舌が大きいという話だけなら、

記憶には残らなかったかもしれない。

別の日だったか、舌の話に付け加え、

こんな事を言われた。それはきっと食事時。

「舌が大きいから、私とは違う味を感じてるんだろな。」何を食べてる時だっ

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短編 寝顔

短編 寝顔

寝顔とは不思議なものだ。

疲れてる時は少し眉間にしわを寄せ、いい夢を見れてる時は口がほくそ笑み、
時には口を開けていて羞恥というものはどこへ行ったものかと考えさせられる。

彼女の寝顔も様々な面を見せてくれた。

先に説明すると、彼女はよく眠る子だった。

夜眠りが浅くちょっとしたことで目を覚ましたり、今考えると、カフェインの影響とか、不安障害とか、あったのかなとも思う。

電車の中は手を繋いで

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短編 金木犀

短編 金木犀

家の近くに金木犀の木がある。

学生、習い事、遊びに行く時、いつもそこにある木は私に秋を教えてくれる。

しかし近くにあるものこそ、気づかなかったり、気に掛けられなくなるものだ。

彼女はうちに遊びにきた時、その金木犀の木が花を咲いていることを教えてくれた。

帰りに送る時、金木犀の場所を教えてくれた。

彼女は花のことをよく教えてくれた。教えてくれるたびに私の心のノートにはその名前も、意味も綴ら

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短編 ツツジ

短編 ツツジ

京都駅のタクシー乗り場には多くの花が咲いていた。
その花の名前を自分を知らなくて、その花を見ていた。
彼女は自分の目線に気づいたのか。

「あれはツツジって言うんだよっ。繁殖力がすごくて、だから色々な場所で咲くの。」

この子は俺の知らないことをよく知っている。
この前は家の近くに鈴蘭が咲いていたと嬉しそうに言っていた。

鈴蘭という名前は聞いたことはあったが見たことなく、帰りの道に「これ!小さい

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短編 その人を知る方法

短編 その人を知る方法

彼女と烏丸御池駅から少しのところで生ハムを食べていた時、こんな話になった。

「その人を知りたい時、あなただったらどうしますか?」

質問が抽象的というか大まかすぎて初めて聞いた時は?と頭の中は小さな混乱を起こしていた、と思う。
つまり面接でも、仕事の後輩でも友達でも、その人の中身を知りたくなったらどうしたり、何を見たりするかを、昔に話した事を思い出したみたいだ。それを俺に質問してきた。

「一緒

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短編 男とは、女とは

短編 男とは、女とは

彼女はよく言っていた。

「男の女という呼び方が嫌い。」

その時の自分はあまり理解はできていなかったが理由を聞くたびに彼女の信念や考え方が織り交ぜられていくのが自分の中でわかっていく。

男は女に女である事を強要してくる。化粧をしなさい、言葉遣いを気をつけなさい、などあげれば多数、じゃあ男は?何を日々頑張っている?時には強がって時には泣きつき、昨今草食と言って男らしさを失ってるくせに女に女である

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