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短編 手紙

2018年1月6日

俺はある試験を受けに東京にいた。

ずっと受け続ける、子供の頃の夢、その夢を叶えるための試験。


ただ正直気が気ではなかった。

当時、仲良くしていた人のことが自分は気になっていた。

お正月に、俺の事を好きだと友人に相談したと、俺に言ってきた、変な人ではあった。

その子とはその日までいろんな思い出が出来ていて、九月から突然始まった仲良しな関係が少しずつ色が付いていってその色が名を持った。

恋色というのだろうか。

そしてその子に、自分の思いを打ち明ける事にした。でもどういうのがいいのかな。

俺は東京行きのバスに揺られながら、試験にも関わらず考えていて、ホテルに着いて、一枚のルーズリーフを取り出した。

前に、本を貸したお礼のお菓子とお手紙をくれた。

「いつか俺も手紙書いてみるな。」

そういうと楽しみの一言と、子供のようなくしゃっとした笑顔をしていた。


その事を思い出して、高校生みたいだなと思いつつ、ルーズリーフに純粋な思いを書いた。

自分はフリーターで未来は見えないとか。
それでも離れたくないみたいな事を書いて。

ただ、自分の書き記した事で1番覚えてるのは

「付き合って、もし別れることがあっても、あなたと出会って良かったと思えるから。」

その言葉は、言霊となってリアルに別れの未来に繋がっていたと、誰も予想はしなかった。

そして手紙を書き終えたら、LINEを送った。

「帰ったらお土産持って行くから、駅で待ってて。」

彼女が食べたいと言っていたマカロンを買って、手紙と共に思いも渡そうと、俺は正直、試験よりもその日が大事に思えた。


次の日、新幹線の中で、お土産と思いを抱きしめながら、4号車8番A席に座る。

二時間で京都。
仕事終わってからだから三時間後か。

あんなに京都に着くのが楽しみな自分は今でも超えることはない。


今、四年月日を超え、出張ではあるが手紙を書いたあの街にいる。

今日は手紙ではなく、noteを書いていて、当時もマスクはつけてたけどただの乾燥予防で、当時着てたスーツをまだ着てる。

変わったこともあるし、変わらないものもある。


変わった自分もあるし、変わらない思いが、そこにあった。

そしてあの色がまだ心にはべっとりついたまま。

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