短編 した
キスをした時、こう言われた。
「舌が大きいね」
気にしたことがなかったが、確かにそうだと思う。
体格には18センチ近く差があったら、
内部の物も大きさが違う。
ただその時に舌が大きいという話だけなら、
記憶には残らなかったかもしれない。
別の日だったか、舌の話に付け加え、
こんな事を言われた。それはきっと食事時。
「舌が大きいから、私とは違う味を感じてるんだろな。」
何を食べてる時だったかは覚えてなく、
ただそれもまたなるほどなと思った。
舌のにある味蕾の数だったり配置とか、
そういう違いの話だろう。
ただ彼女は本当に美しい、可愛らしい事を言う人だ。
キスをして舌の大きさの違いから、
感じる味の違いに繋がる人、
私はこれからきっと会うことはないと思う。
それだけの感覚への敏感さで、言葉の宝庫。
今日私は人生で初めてワインを買った。
勧めてくれた人が感じた味を感じてみたいと思ったから。
そしてこの話を思い出して少し寂しくなった。
味って人によって違う。
あんな表現が出来る人は、もう、いない。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?