見出し画像

短編 クリスマス

ちょっとした喧嘩だった。

彼女にとってのクリスマスと、私にとってのクリスマスは違った。
彼女にとってはただの1日。

私は母の誕生日でもあり、みんなでホールのケーキを囲んで楽しむ特別な日。

私にとっての特別は彼女に伝わらなかった。

でも、彼女は来てくれた。

私は、彼女の大好きな洋菓子屋のケーキをこっそり予約して、始発で取りに行く。

彼女はすごく嬉しそうだった。

彼女にとって初めてホールケーキをクリスマスで食べること、プレゼント交換、誰かと祝うクリスマス。

当時のことを思い返すと、すごく暖かい空間だったなと思う。

そして彼女からもらったものはクリスマスカード。

新幹線にしがみつく沢山のサンタのカードだった。

その年の夏、東京に旅行に行ったことが1番の思い出だったからそのカードを選んだと中には書いてあった。

私はそのカードがお金や金額を超えた、本当に価値ある物だと思った。

そしてすごく嬉しかった。

自分のことを思ってこれを選んで、書いてくれたこと。

あれだけクリスマスというものの考えが合わなかったのに、用意をしてくれたこと。

愛しく思った。

今日はクリスマスイブ。
いつもと変わらないただの1日の変わってしまったクリスマス。

あの時にただの1日と言っていた、彼女の気持ちが今なら分かるかもしれない。

その1日を特別にするのって、何をするというより、誰と、何だろう。

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?