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短編 その人を知る方法

彼女と烏丸御池駅から少しのところで生ハムを食べていた時、こんな話になった。

「その人を知りたい時、あなただったらどうしますか?」

質問が抽象的というか大まかすぎて初めて聞いた時は?と頭の中は小さな混乱を起こしていた、と思う。
つまり面接でも、仕事の後輩でも友達でも、その人の中身を知りたくなったらどうしたり、何を見たりするかを、昔に話した事を思い出したみたいだ。それを俺に質問してきた。

「一緒にご飯食べるかな。それで頼むものだったり作法だったり、お腹膨れるとなんか安心して話せる気もするし。」

「それもあるね。剣道だったら一戦してみたり、食事もいいし、単純な会話もある。私はなんて答えたと思う?」

「本?持ってる本を見せてとか?」

「あっ近い。でもほぼ答え。本棚を見せてくださいって言うの。本棚の本の扱い方とか、読んでる本の種類とか見て見てあーこういう人なんかなって予測する」

彼女らしく、そして面白い答えだと思った。別れてから本を多種に渡って読むようになった今もその答えに心から同意する。他人の多くの本棚をインスタで拝見したがもちろんお洒落に撮るための置き方もあるが、その置いてる本のジャンル、本の扱い、本の使い方は本当に違う。

「俺の本棚を見たときはどう思った?」

「細かくて丁寧なんやろなって思った。だって、置いてるのは漫画だけやけど帯を全部残してたり、一巻から順番に置いて、出版社とかジャンルをだいたいを同じ場所に置いてるからあの本棚は綺麗やし、あとは繊細さが見える。あれを崩されるん嫌やろなーとか。」

ほぼ正解でまるで刑事ドラマのプロファイリング(犯罪捜査における犯人像の分析技法で、犯罪の特徴をもとに統計的なデータや行動心理学などを用いて犯人像を推論するもの)を間近で見ている気分だった。そして心を覗かれてる気持ちがくすぐったくなる。

「そうやな。当たってて少しびっくりした。」

その時には答えられなかった事だが、

本が並んでるのを見るのが昔から好きで自分にとっては砂のお城だった。丁寧に作って満足する
最近は本が種類を増やしたから本棚に入り切らない本ばかりだが早くこの子達を並べたいとずっと思っている。今あの子がこの本棚を見てどんな答えだろ。気になるが聞けない今。

「ここのハム食べ放題やから来たけどやっぱりいっぱい食べれへんね笑」

彼女の屈託のない笑顔。今でも自分の思い出の本棚には開けたくない時ばかりだが、ちゃんとそこにある。この本は俺の宝物。

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