短編 ツツジ
京都駅のタクシー乗り場には多くの花が咲いていた。
その花の名前を自分を知らなくて、その花を見ていた。
彼女は自分の目線に気づいたのか。
「あれはツツジって言うんだよっ。繁殖力がすごくて、だから色々な場所で咲くの。」
この子は俺の知らないことをよく知っている。
この前は家の近くに鈴蘭が咲いていたと嬉しそうに言っていた。
鈴蘭という名前は聞いたことはあったが見たことなく、帰りの道に「これ!小さいでしょ。」と見せてくれた。
こんな小さいのによく気づいたなぁと感心して確かに鈴の形をしている。
ツツジは桜の時期が終わり、藤棚の後に咲く、
つまり梅雨あたりに咲く。
そして今年もツツジが多く咲いていた。
「ここにも咲くのか。繁殖力ね。」
花言葉が気になってふと調べたら少し笑った。
節度と慎み。
あーあの頃には無かったものだ。相手を思う花言葉なんだ。
今の俺には、あるのかな。
ツツジが一つ落ちていて不意に拾った。
拾ってよく見て、
次は節度と慎みを持った、人間関係を築ける自分になります。
そう誓い、縁石の上に置いた。
あれはツツジって言うんだよっ。
空耳がした。
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