北風こんろ

夫とふたり暮らしの物書きです。

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初心者が宝石研磨に挑戦してみた

きれいな宝石がほしい。高いから買えない。それでもほしい。そんな葛藤を繰り返しては、宝石へのあこがれを募らせている。百貨店にある宝飾店は横目でみることしかできない…

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夢を叶えるタネ

「いらっしゃいませ」 アンティーク調のドアを開けると、すらりとした体型の女性がカウンターの前に立っていた。前髪から揺れる灰青色の瞳がこちらを覗き、窓から漏れる光…

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宝だと信じたときもあったよねゼロから描くにじいろの夢

何時からか、スケッチブックを埋められなくなった。 時間がないから?上手さを求めたから? どれも合っているようで違う。 顔も知らない誰かと比べられるのが、怖いんだ。 …

北風こんろ
5か月前
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佐藤さんちの塩

「おやつにしようか」 角張った餅をポリ袋から取り出し、アルミホイルを敷いてトースターの扉を閉めた。 「焦げないように見張ってて」 「ぼくは"看守"じゃないんだけど…

北風こんろ
6か月前
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誠に申し訳ございません

バイト中、クレーマーらしきおばさまに声をかけられた。おばさま曰く「ここにいる○○と○○が好かんでよ。店長に言っても何もしてくれんし」とのことだ。 私はそうですか…

北風こんろ
10か月前
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はじまりの朝

食べたかったモーニングがない。 この事実だけで店を引き返しそうになるが、今日は違う。閉店する喫茶店に来ているからだ。 扉の前には提供されるモーニングの名前と、営…

北風こんろ
11か月前
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靴裏の真相

犬のフンが真横にあったとき、人はどのような反応を示すだろうか。厳密に言うと乾いた犬のフンが数日前から私の車の横に鎮座しているのだ。今日は生憎の雨ということもあり…

6

「疲れる」は案外いいことなのかもしれない。

人生の帰路に立たされている。お金か夢か、母親か。 私は何事も卒なくこなせる器用なタイプではないので、選ぶべき道を2年前からずっと決めかねている。 でも、そろそろタ…

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1リットルのインスタントラーメン。

500ml必要な水を、1000ml注いでしまった。鍋でインスタントラーメンを作ろうとした矢先だった。 どんぶりに入ったスープはダム決壊のごとくあふれ、みるみるうちに流し台…

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昔ばなしをしよう。

高校生のとき、休憩時間のたび机につっぷしていた。容姿も最悪だったので、友だち以外のクラス全員に笑われ対象になっていたことがあった。 私の様子に耐えかねた祖父が学…

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もういちど、星に願いをたくす子どものように。

最近、衝撃的な言葉をみつけた。 その名は「子どもおばさん」。 【意味】 年齢を重ねても精神的に幼く、 子どものような振る舞いをしている大人の女性。 フローリングに…

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母親すごいぞ、天才だぞ。

マヨネーズと塩があれば幸せになれる。 サンドイッチの話だ。 私はサンドイッチが好きだ。いちばん好きなサンドイッチ、名付けて“母の作ったべちょべちょサンドイッチ”…

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めくるめく感情、求める凪。

昨日の異常湿度とはうってかわり、ちょいジメの朝。 夫の髪がぴょこりと跳ねていたので、ポチャッコみたいでかわいいと褒めた。 「この犬、ポチャッコっていうんだ」 淡…

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黄ばんだワイシャツは妻へ、ではない。

夫のワイシャツが黄ばんだので、スーツ屋さんにワイシャツを買いにいった。どうやら面接用に必要らしい。 スーツ屋さんは近所に2店舗ある。一つは販売実績No.1の某店、二…

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「第58回宣伝会議賞」一次通過応募作品まとめ

こんにちは。キャッチコピーに心を奪われて早5年になる、副業ライターのきたかぜコンロです。 今回はコピーライターの登竜門と呼ばれる『宣伝会議賞』にて一次通過した202…

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【企画参加】noteという街、住人にどう向き合っているか。

こんにちは。きたかぜコンロです。 note、たまに書きにきては消し、下書き送りにするの繰り返しで、なかなか陽向に当たらない文章がフォルダの中にたくさん眠っています。…

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初心者が宝石研磨に挑戦してみた

初心者が宝石研磨に挑戦してみた

きれいな宝石がほしい。高いから買えない。それでもほしい。そんな葛藤を繰り返しては、宝石へのあこがれを募らせている。百貨店にある宝飾店は横目でみることしかできないが、イオンにあるストーンマーケットには気軽に入れる。私は大人になっていた。学校の帰り道に落ちていたBB弾を拾いむじゃきに喜んでいた自分にはもう戻れないのだ。

そこで、お金をかけずに宝石を手に入れる方法を考えてみた。宝石になる前の原石を磨け

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夢を叶えるタネ

夢を叶えるタネ

「いらっしゃいませ」

アンティーク調のドアを開けると、すらりとした体型の女性がカウンターの前に立っていた。前髪から揺れる灰青色の瞳がこちらを覗き、窓から漏れる光の反射でブラウンの髪の毛が透き通っている。うつくしい人だと思った。

「すみません、夢が叶うお店があるってネットで見たんですが……」

「……口コミってバカにできませんね。チラシを配るのにもお金がかかりますし」

彼女はカウンターに肘を乗

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宝だと信じたときもあったよねゼロから描くにじいろの夢

宝だと信じたときもあったよねゼロから描くにじいろの夢

何時からか、スケッチブックを埋められなくなった。
時間がないから?上手さを求めたから?
どれも合っているようで違う。
顔も知らない誰かと比べられるのが、怖いんだ。

「そんなことで?」
そんなことで、人の心は簡単に折れる。

自分の可能性を狭めるのはやめよう。
本当の言い訳を、本当にするのはやめよう。

佐藤さんちの塩

佐藤さんちの塩

「おやつにしようか」

角張った餅をポリ袋から取り出し、アルミホイルを敷いてトースターの扉を閉めた。

「焦げないように見張ってて」
「ぼくは"看守"じゃないんだけど」

焼きつくさないためのタイマーじゃないの?彼はそう言いたげな表情で私を一瞥し、餅につける砂糖醤油を作りはじめた。

あまじょっぱいものが好きなひとは多い。彼は極端な性格の持ち主だから、甘いものは甘いもの、しょっぱいものはしょっぱい

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誠に申し訳ございません

誠に申し訳ございません

バイト中、クレーマーらしきおばさまに声をかけられた。おばさま曰く「ここにいる○○と○○が好かんでよ。店長に言っても何もしてくれんし」とのことだ。

私はそうですか〜、そうなんですね〜、と相槌を繰り返し、いつ自分に矢が飛んできてもいいように身構えていた。

ひとしきり不満を述べたのち、「女性がここにおるん珍しいね。アンタがいる時にまた来るわ!」と言い残して何もなかったように退店された。

怒りの矛先

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はじまりの朝

はじまりの朝

食べたかったモーニングがない。

この事実だけで店を引き返しそうになるが、今日は違う。閉店する喫茶店に来ているからだ。

扉の前には提供されるモーニングの名前と、営業日のカレンダーが貼り出されていた。カレンダーはカウントダウン式にバツが付けられており、残すところ一日となった。

扉を開けると店内は賑わっていた。ほぼ満席の状態で、ひとりのホールスタッフが駆け回っている。今日で閉店ということもあり、カ

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靴裏の真相

靴裏の真相

犬のフンが真横にあったとき、人はどのような反応を示すだろうか。厳密に言うと乾いた犬のフンが数日前から私の車の横に鎮座しているのだ。今日は生憎の雨ということもあり、湿った犬のフンだった。妙なのは久しく野良犬を見ていないことだ。だとすると野良猫の可能性が非常に高い。野良猫ならアパートの周辺で頻繁に集会を開いているため、おそらく犬のフンではないと容易に推測ができる。ではなぜ私は猫のフンではなく犬のフンだ

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「疲れる」は案外いいことなのかもしれない。

「疲れる」は案外いいことなのかもしれない。

人生の帰路に立たされている。お金か夢か、母親か。
私は何事も卒なくこなせる器用なタイプではないので、選ぶべき道を2年前からずっと決めかねている。

でも、そろそろタイムリミットだ。

この頃、頭痛に悩まされていた。原因はとある採用試験の勉強だった。手応えはまるでなかった。落ちたら潔く夢を諦め、夫との将来をきちんと考えると約束した。夫は子どもがほしいのである。

夢を諦めるといっても、好きなこと(文

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1リットルのインスタントラーメン。

1リットルのインスタントラーメン。

500ml必要な水を、1000ml注いでしまった。鍋でインスタントラーメンを作ろうとした矢先だった。

どんぶりに入ったスープはダム決壊のごとくあふれ、みるみるうちに流し台を汚していった。

「キャベツ入れすぎたんかな」

『馬鹿やな、コンロちゃんは』

話の本質をうまく見抜けない私に、夫の捨てゼリフが頭のなかで反芻する。失礼極まりない。

しかし今回の話は、馬鹿やな、とかで済む話ではない。

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昔ばなしをしよう。

昔ばなしをしよう。

高校生のとき、休憩時間のたび机につっぷしていた。容姿も最悪だったので、友だち以外のクラス全員に笑われ対象になっていたことがあった。

私の様子に耐えかねた祖父が学校にそのことを連絡してしまい(しないでほしかった)、お昼の校内放送で名指しされ(しないでほしかった2)、間もなく公開処刑された。

名前を呼ばれただけで爆笑されたときの惨めさ、恥ずかしさに代わる感情は、未だみつかっていない。

職員室にい

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もういちど、星に願いをたくす子どものように。

もういちど、星に願いをたくす子どものように。

最近、衝撃的な言葉をみつけた。
その名は「子どもおばさん」。

【意味】
年齢を重ねても精神的に幼く、
子どものような振る舞いをしている大人の女性。

フローリングにいろいろぶちまけるかと
思うほど当てはまる節があって、
ショック死するかと思った。

「子どもおばさん」というフレーズが
頭から離れなくて、気になって調べてみた。

すると、記憶がえぐられるようなワードが
いくつかヒットした。

詳し

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母親すごいぞ、天才だぞ。

母親すごいぞ、天才だぞ。

マヨネーズと塩があれば幸せになれる。
サンドイッチの話だ。

私はサンドイッチが好きだ。いちばん好きなサンドイッチ、名付けて“母の作ったべちょべちょサンドイッチ”である。悪口ではない。

トマトやレタスの水分が染み込み、生地がふやけてべちょべちょになっている、それが好きだ。ふやけることで塩の浸透具合もバッチリになる。天才だ、調合が。

お店の綺麗なサンドイッチも好きだ。エビカツサンドは至高だ。定期

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めくるめく感情、求める凪。

めくるめく感情、求める凪。

昨日の異常湿度とはうってかわり、ちょいジメの朝。
夫の髪がぴょこりと跳ねていたので、ポチャッコみたいでかわいいと褒めた。

「この犬、ポチャッコっていうんだ」

淡々と、数年越しの発見に驚いた様子もない。調べてみてと強要したせいか、ポチャッコについてひと通りリサーチを終えた夫は、即座にYouTubeの画面に切り替えていた。

私も例えられたい。
夫の目には、私がどう映っているのか。

サンリオキャ

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黄ばんだワイシャツは妻へ、ではない。

黄ばんだワイシャツは妻へ、ではない。

夫のワイシャツが黄ばんだので、スーツ屋さんにワイシャツを買いにいった。どうやら面接用に必要らしい。

スーツ屋さんは近所に2店舗ある。一つは販売実績No.1の某店、二つめは品質なら●●のフレーズでおなじみの某店。

どちらも以前から利用していたが、後者のアプリがたまたまスライド先の近くにあったので、今回はこちらを利用することにした。

店内に入りワイシャツを探していると、店長らしき人が駆け寄ってき

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「第58回宣伝会議賞」一次通過応募作品まとめ

「第58回宣伝会議賞」一次通過応募作品まとめ

こんにちは。キャッチコピーに心を奪われて早5年になる、副業ライターのきたかぜコンロです。

今回はコピーライターの登竜門と呼ばれる『宣伝会議賞』にて一次通過した2020年度の応募作品を紹介します。

本来なら選ばれたコピーを載せるのが筋だと思うのですが、一次通過作品は各課題で応募者の名前だけが公開されるため、どの作品が通過したのかわかりません。

しかし生まれて初めて公募賞に名前が掲載された喜びや

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【企画参加】noteという街、住人にどう向き合っているか。

【企画参加】noteという街、住人にどう向き合っているか。

こんにちは。きたかぜコンロです。
note、たまに書きにきては消し、下書き送りにするの繰り返しで、なかなか陽向に当たらない文章がフォルダの中にたくさん眠っています。朝だよ起きろ〜。

何事もそうなんですが、一度手をだすと満足する飽き性なので継続が難しいんですよね。仕事みたいに強制されれば惰性で続けられるんですが、好き勝手にしていいよと言われると、さわりだけかいつまんで後は放置……というのが多くて。

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