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詩🕊️

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記事一覧

【詩】次の夏まで

【詩】次の夏まで

『 次の夏まで 』

ひまわりがうつむく姿を
なんでもない顔で通り過ぎて行けるわたしたちは
ひとり欠けてもふたり欠けても
別にどうってことのない生きものなのでしょう
忘れたくないものを書き出しては
書き出したことを忘れながら
無臭の息を吐きつづけて
風のつめたさに文句ばかりを言うようになる

夏はどうでしたか
夏はどうでしたか
夏は、きれいでしたか
覚えていられないくらいなら
花なんて誰も植えない

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【詩】高技術閃光

【詩】高技術閃光

高技術閃光
 
 
咲いた点から消えゆく点までを
わざわざと結んだ造られた光線が
目撃したものよりもきれいなものとして飾られる
 
人間はきれいなものが好きで好きで追いかけ続ける
そして汚く死ぬ
 
優秀作品として回り、また誰かがそれに憧れる
複製される、コピー、コピー
全部ちがうのに全部同じ
今年の空も、来年の空も
同じ線を美しがる やめてくれよ
最新機種ではないこのスマホで写したほうが
よっぽ

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【詩】私の好きな花

【詩】私の好きな花

『 私の好きな花 』

夏の花を思い浮かべるときに
私のなかで堂々と顔をあげるものはひとつ

打ち上げ花火

あなたは好きなものをどう大切にしますか

私は打ち上げ花火を
写真で見たくないと思うことで大切にします

この目でみたものとはまったくちがう線を
ちがう光を
エモーショナルとしておさめた写真は
私の好きな花ではない

フォトコンテストで優秀とされる光
それはつくられた残像で
何も正しくない

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【詩】あのこと行ったパスタ屋さんが思い出せない

【詩】あのこと行ったパスタ屋さんが思い出せない

あのこと行ったパスタ屋さんが思い出せない
隣町にある小さな店でおじいさんだったかな
ひとりで営業していて隠れ家のような場所で
秘密基地を教えるように連れて行ってくれた
関係ないはずなのにあいみょんを聞いてたら
蘇ってきちゃったあの記憶とあのこのことが
気になる今はどこで生きているかな仕事とか
うまくやっているのかな辛くて転職したとか
聞いたっきり私は勝手に全ての関係を絶った

あのこと行ったパスタ

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【詩】ナチュラルエンドロール

【詩】ナチュラルエンドロール

『 ナチュラルエンドロール 』

眠らせてくれないことに気づいたとき
またひとり主人公が私に会いに来る
上手い具合に波打ち際で足を湿らせるような
心地の好い朝焼けを過ごす
つぎの夜がくる前に 私にバレないように
私から一本の映画を取り出してほしい

隅ばかりを探さないで

特等席にあるものに目を向けて 早く盗んで

大きな劇場へ持って行ってよ
著作権を騙すための
偽ビンテージフィルターと
音声の加

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【詩】愛だといいな

【詩】愛だといいな

『 愛だといいな 』

愛してるという意味の「食べちゃいたい」と
あなたを殺したいという意味の「食べちゃいたい」に
大きな違いはない

どちらであろうと、
好きなひと・好きだったひとに抱くその感情は、
結局は愛である

拗らせだと馬鹿にするか、メンヘラだと笑うか
指を刺して笑われるくらいの人間であれるほうが、
人間らしくて汚くて、うれしい

愛しているあなたを、殺したいあなたを、
食べてしまったら

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【詩】つまらないね

【詩】つまらないね

わたし、よのなかの全てを知っているから、こころが震えることなんてあんまりなくて、でもひとりぼっちになるのが苦手だから、よのなかのことはぜんぜん知らないのって顔でひとと仲良くするのが得意でね、きみのその話もこれから始まる話も、知っているから、なんでそんなにしあわせになれるのだろうとふしぎに思いながら聞いているよ、あのキスもあのキスもその先も、告白も、本当の初めてを教えてほしかった、教えてほしかった相

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【詩】パーマネントグリーン

【詩】パーマネントグリーン


『 パーマネントグリーン 』

キャベツみたいなドレスが生える花壇のふちで
仰向けに寝たい
譜面通りなだけの弾き語りとサイファーのリズムが
不協和音に響く夜のまち
羨ましくてうれしい
特別なんかいらないから
宇宙と平行になる姿を無視していてほしい
ここでねむる ここでおきる
おはようを投げかけてくるあれを太陽と呼ぶ

朝定食四百円
節約でも情けでも凌ぎでもない
至福の目的地
フル稼働のしあわせ

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【ココア共和国2月号掲載】【詩】歩いて、春へ

【ココア共和国2月号掲載】【詩】歩いて、春へ

『 歩いて、春へ 』

寒いっておもしろい
求めていないのに着込んで着込んで
その手段は布以外もたくさんあって、どうせ、

何かしらからの温もりがないと春になれない私たちは、
「別にそんなことないし」と
下着を戦闘服にしたり、しなかったり

中途半端だとわかっていても、きもい情を纏うなら
たとえ無理をしても春はこない

斜め三十五度下の濡れた地面を見ているふりをして
どうせ、歩いている

満足させ

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【詩】ひとみをにつめる

【詩】ひとみをにつめる

『 ひとみをにつめる 』

瞳にも食べ頃がある
テーブルマナーよりも先にそれを知った人間たちから
恋が始まる
恋という名でもそうでなくとも
憧れとして少しだけ特別な感情を抱いては
目をみつめる
みつめるという行為に無意識なしあわせを覚える
そうすると、
腐らせないようにと努力をしてゆく
につめるという隠し味の加え方を覚える
感情の料理 レパートリーが増えてゆく
きみの、瞳の奥にハートマークをみつけ

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【詩】ずるいから、冬

【詩】ずるいから、冬

イルミネーションと打ち上げ花火の殺傷能力を調査する職業に就く。季節の代表的な光として私を殺すものは花火。花火が、電球ならどんなによかったか。ずるいよな、期待させる下手くそな線を描いて上に向かう、ひらいて、一瞬だから写真に撮るよりも記憶のほうが綺麗に保存できちゃって、次から次へと夏が来ても更新ではなく増えてゆくだけ。ずるいよな。だから、今年もイルミネーションに囲まれて、踊るふりをして、きみが好きだよ

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【詩】オータムレトロノイズ

【詩】オータムレトロノイズ

春夏秋冬で決める好きという感情も好き、毎週音楽特番が各局で放送されるから好きを感じる時期も好き、好きな季節の話、好みじゃなくて、また今年もきたな、と思う感覚のこと、また、って大事、舞っているだけの、落ちて踏まれて刻まれて風になるような、なんとなくの破片が、舞って地面すれすれを遊んで踏まれても形はこのままで、良くも悪くもこのままで、特別な生命としないから、破片でいる今を茜色と名付けたくなる十一月三日

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【詩】2023年10月19日の詩

【詩】2023年10月19日の詩

頻繁に大便 出ちゃうね大変
うまいもん食いてえ そのあとトイレ
出しても痩せねえ 動くかジムで
精神病 yeah!
人格多数 聞こえるあいつ
人生降ります やめとけ殺す!
いきてる理由 疑問 鬼門 祈祷? きも
アイラブユーより 食べちゃいたい
が愛の誓い 博愛 いらない 吐きたい愛
飲み込め 沈め
藍デンティティ ブルーの目
左右異色 300通りの青を知ってる
きみのことは8番目で刺す
痛い居た

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【詩】きみが憧れきみの憧れ

【詩】きみが憧れきみの憧れ

憧れが増えると死ぬ 色んな臓器や骨から死んでいく タラレバの対象を人物にすると死ぬ 個なら自由なのに恋しくなるから人間としての馬鹿が絶好調で良かった 憧れたって鏡にしない そんな気持ちの悪いことはしない だから死ぬなよ 酔える量を知っている 正しく酔う そうやって美しくなれたらきみの憧れ