【詩】次の夏まで
『 次の夏まで 』
ひまわりがうつむく姿を
なんでもない顔で通り過ぎて行けるわたしたちは
ひとり欠けてもふたり欠けても
別にどうってことのない生きものなのでしょう
忘れたくないものを書き出しては
書き出したことを忘れながら
無臭の息を吐きつづけて
風のつめたさに文句ばかりを言うようになる
夏はどうでしたか
夏はどうでしたか
夏は、きれいでしたか
覚えていられないくらいなら
花なんて誰も植えないでいようよ
そういえば私が死にたがっていることなんて
私も誰も知らなかったな
名前を呼んでほしいひとに
名前を呼んでもらえないから
この名である必要がなくなって
ちがう名前をわたしに与えてみました
家に帰るたびに
過去の名に泥を蹴飛ばすようにしています
雨の日には家の前の歩道に置いて
わざと水しぶきに殴られるようにしています
雨がつづく
気温が夏を負かして
情熱を一度さましてくれている
ひまわりだって燃えるごみになる
わたしだっていつかは火葬される
知っているから安心して生きていられる
次に晴れる日
何かが終わっていることに気がつけたら
大切をたいせつにして
すこしの幸せが味方をしてくれるでしょう
ひとりでも大丈夫だよ
あなたにそばにいてほしいよ
約束は紡いでゆこうよ
次の夏、ひまわりがまた笑ってくれるまで
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