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東原そら
2021年3月31日 19:48
「パパ。ぼく、このあいだ、はじめておつかいしたんだ」「へえ、何を買ってきたの?」「おてがみをとどけたの」「へえ、誰に?」「よく、おうちにくるひと」「よく来る人?美香ちゃんのママかな?」「ううん。おじさん」「おじさん?」「うん。ママがよくチュウしてるおじさんだよ」
2021年3月30日 20:35
「最後の晩餐は何がいい?」「そりゃおまえの手料理さ」「もうバカ~」 隣のバカップルが、うざい会話をしてやがる。「ねぇ修二なら最後の晩餐は何にする?」 隣に触発されたか。 機嫌を損ねると、あとが恐い。「俺はおまえが食べたい」 失敗したらしい。 美紀と連絡が取れなくなった。
2021年3月29日 23:29
僕には尊敬する偉人がいる。 二宮金次郎だ。 薪を背負い、勉学に勤しむ姿勢は学ぶべきだ。「歩きながら本読むと危ないよ」 彼女が僕に注意する。「僕は二宮金次郎を目指してる。時間を無駄にしたくない」「ふ~ん。でも歩きスマホと同じだよね」 冷たい汗が流れ、僕はそっと本を閉じた。
2021年3月28日 21:17
別れた女だ。 男と子供と歩いている。 笑う声が聞こえる。 彼女は所謂尽くす女だった。 色々と手を焼いてくれた。 でも俺は重い女と罵った。 仕事の失敗を八つ当たりした、くそったれだ。 幸せそうな顔だ。 柄にもなく、嬉しくなる。 ふいに視線が重なる。 その笑顔は、あの頃のままだった。
2021年3月27日 20:29
今つき合ってる人いないし、まあいいか。 告白への答えは、軽い思いだった。 でも彼はいつも笑顔で話を聴いてくれた。 彼は他とは違う。 ある日、元カレから誘われ迫られた。 軽い気持ちで唇を重ねるも、偶然、彼がいた。 泣いていた。 彼はもういない。 私は今も帰らない日々を求めてる。
2021年3月26日 20:12
告白は気持ちの押しつけ。 そう思っていた。 同じ美化委員で、おっちょこちょいだけどいつも優しい彼に私は惹かれた。 でも押しつけは嫌。 いつしか彼は恋人ができた。 卒業式の最後の会話で「本当はずっと好きだった」と彼は苦笑いした。 もう遅い言葉に、私は漸く臆病だった自分を知った。
2021年3月25日 20:36
目が覚めると知らない所にいた。 そもそも俺は誰だ。 真っ赤に染まった手と赤い刃の包丁。 俺は何者なんだ。「何やってんの?」 女だ。「誰だ?」「は?」「チキンライス作ってて記憶失くしたみたいで」「原因に心当たりは?」「前にケチャップ見て貧血起こしました」 俺はチキンか…
2021年3月25日 17:07
その路面電車は奇妙な光景だった。 乗客全員が頭を垂れている。 皆スマホに夢中だ。 じいさんまでもゲームに興じている。 時代の流れか。下ばかり見るな。 現実に目を向けろ。 俺は違うぞ、上を向いて歩く。 一歩踏み出すと、何かにつまづき倒れた。 視線が痛い。 上ばかり見ても駄目だな。
2021年3月23日 21:26
グラデーションの変化がない青い空が果てしなく広がっている。 あの端っこはどこだろう、とふと思う。 僕がいる場所は、世界の中心で端っこだ。 世界は広いらしい。 空に一本の線が入る。 あれはなんだろう。 まだ知らないことばかりだ。 だから行こう。羽を広げて。 今日、僕は世界へ翔ぶ。
2021年3月22日 19:42
僕には許嫁がいる。 親の政略だ。 僕は彼女に惹かれていた。 でも彼女は将来の伴侶と決めている人がいた。 彼女の幸せが僕の幸せだ。 結納の席で僕は架空の恋人をでっち上げ、勘当された。 数年後、風の噂で彼女が意中の人と結婚したと聞いた。 その時の涙のわけは、僕にはわからなかった。
2021年3月21日 20:13
彼の私服はダサい。 よれよれの服で組み合わせも悪い。 友達はなぜ付き合うのかと、いつも訊く。 その度、私はお茶を濁す。 今日は卒業パーティー。 突然、女子の黄色い声が上がる。 有名男性モデルが現れたのだ。 男性がにこやかに私に近づく。 女子の嫉妬の視線が痛い。 ついにバレたか。
2021年3月20日 20:39
鋭いジャブが来た。 俺は蝶のようにかわす。 この試合は敗けられない。 俺には誓いがある。 隙あり!カウンターだ。 王者がリングに倒れた。 勝った。 俺はリンクサイドの彼女に叫ぶ。「結婚しよう!」「いや。ボクサー収入安定してないし」 俺もリングに伏す。 ダブルノックダウンだ。
2021年3月20日 20:29
拡声器の声が校庭から聞こえる。「学園の教師は全員出ろ!」 先日、卒業した三年生が武装して集まっている。「バカなことをするな!」 教師達は諭そうとする。 途端、生徒達は深々と礼をした。「三年間ありがとうございました!」 ドッキリ成功。 教師達が全員涙したのは言うまでもない。
2021年3月19日 16:46
「かわいい娘さんね」「いえ妻です」「お父さんとお散歩?」「いえ夫です」 俺達はよく親子に間違えられる。 その度に妻は頬を風船にして否定する。「どうしてみんな間違えるの!同い年なのに」 仕方ないよ。 童顔低身長に加え、ゴスロリファッション。 頼むから逆ギレしないでくれ。