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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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2021年3月の記事一覧

はじめてのおつかい? (140文字小説)

はじめてのおつかい? (140文字小説)

「パパ。ぼく、このあいだ、はじめておつかいしたんだ」

「へえ、何を買ってきたの?」

「おてがみをとどけたの」

「へえ、誰に?」

「よく、おうちにくるひと」

「よく来る人?美香ちゃんのママかな?」

「ううん。おじさん」

「おじさん?」

「うん。ママがよくチュウしてるおじさんだよ」

選べ!最後の晩餐 (140文字小説)

選べ!最後の晩餐 (140文字小説)

「最後の晩餐は何がいい?」

「そりゃおまえの手料理さ」

「もうバカ~」

 隣のバカップルが、うざい会話をしてやがる。

「ねぇ修二なら最後の晩餐は何にする?」

 隣に触発されたか。

 機嫌を損ねると、あとが恐い。

「俺はおまえが食べたい」

 失敗したらしい。

 美紀と連絡が取れなくなった。

危険な金次郎 (140文字小説)

危険な金次郎 (140文字小説)

 僕には尊敬する偉人がいる。

 二宮金次郎だ。

 薪を背負い、勉学に勤しむ姿勢は学ぶべきだ。

「歩きながら本読むと危ないよ」

 彼女が僕に注意する。

「僕は二宮金次郎を目指してる。時間を無駄にしたくない」

「ふ~ん。でも歩きスマホと同じだよね」

 冷たい汗が流れ、僕はそっと本を閉じた。

その笑顔は、あの頃のまま (140文字小説)

その笑顔は、あの頃のまま (140文字小説)

 別れた女だ。

 男と子供と歩いている。

 笑う声が聞こえる。

 彼女は所謂尽くす女だった。

 色々と手を焼いてくれた。

 でも俺は重い女と罵った。

 仕事の失敗を八つ当たりした、くそったれだ。

 幸せそうな顔だ。

 柄にもなく、嬉しくなる。

 ふいに視線が重なる。

 その笑顔は、あの頃のままだった。

帰らない日々 (140文字小説)

帰らない日々 (140文字小説)

 今つき合ってる人いないし、まあいいか。

 告白への答えは、軽い思いだった。

 でも彼はいつも笑顔で話を聴いてくれた。

 彼は他とは違う。

 ある日、元カレから誘われ迫られた。

 軽い気持ちで唇を重ねるも、偶然、彼がいた。

 泣いていた。

 彼はもういない。

 私は今も帰らない日々を求めてる。

真実の想い (140文字小説)

真実の想い (140文字小説)

 告白は気持ちの押しつけ。

 そう思っていた。

 同じ美化委員で、おっちょこちょいだけどいつも優しい彼に私は惹かれた。

 でも押しつけは嫌。

 いつしか彼は恋人ができた。

 卒業式の最後の会話で「本当はずっと好きだった」と彼は苦笑いした。

 もう遅い言葉に、私は漸く臆病だった自分を知った。

赤い刃のミステリー (140文字小説)

赤い刃のミステリー (140文字小説)

 目が覚めると知らない所にいた。

 そもそも俺は誰だ。

 真っ赤に染まった手と赤い刃の包丁。

 俺は何者なんだ。

「何やってんの?」

 女だ。

「誰だ?」

「は?」

「チキンライス作ってて記憶失くしたみたいで」

「原因に心当たりは?」

「前にケチャップ見て貧血起こしました」

 俺はチキンか…

なにごともほどほどに (140文字小説)

なにごともほどほどに (140文字小説)

 その路面電車は奇妙な光景だった。

 乗客全員が頭を垂れている。

 皆スマホに夢中だ。

 じいさんまでもゲームに興じている。

 時代の流れか。下ばかり見るな。

 現実に目を向けろ。

 俺は違うぞ、上を向いて歩く。

 一歩踏み出すと、何かにつまづき倒れた。

 視線が痛い。

 上ばかり見ても駄目だな。

翔べ、果てなき世界へ (140文字小説)

翔べ、果てなき世界へ (140文字小説)

 グラデーションの変化がない青い空が果てしなく広がっている。

 あの端っこはどこだろう、とふと思う。

 僕がいる場所は、世界の中心で端っこだ。

 世界は広いらしい。

 空に一本の線が入る。

 あれはなんだろう。

 まだ知らないことばかりだ。

 だから行こう。羽を広げて。

 今日、僕は世界へ翔ぶ。

涙の理由 (140文字小説)

涙の理由 (140文字小説)

 僕には許嫁がいる。

 親の政略だ。

 僕は彼女に惹かれていた。

 でも彼女は将来の伴侶と決めている人がいた。

 彼女の幸せが僕の幸せだ。

 結納の席で僕は架空の恋人をでっち上げ、勘当された。

 数年後、風の噂で彼女が意中の人と結婚したと聞いた。

 その時の涙のわけは、僕にはわからなかった。

彼は、劇的!ビフォーアフター (140文字小説)

彼は、劇的!ビフォーアフター (140文字小説)

 彼の私服はダサい。

 よれよれの服で組み合わせも悪い。

 友達はなぜ付き合うのかと、いつも訊く。

 その度、私はお茶を濁す。

 今日は卒業パーティー。

 突然、女子の黄色い声が上がる。

 有名男性モデルが現れたのだ。

 男性がにこやかに私に近づく。

 女子の嫉妬の視線が痛い。

 ついにバレたか。

最強は誰だ!? (140文字小説)

最強は誰だ!? (140文字小説)

 鋭いジャブが来た。

 俺は蝶のようにかわす。

 この試合は敗けられない。

 俺には誓いがある。

 隙あり!カウンターだ。

 王者がリングに倒れた。

 勝った。

 俺はリンクサイドの彼女に叫ぶ。

「結婚しよう!」

「いや。ボクサー収入安定してないし」

 俺もリングに伏す。

 ダブルノックダウンだ。

ドッキリスクールウォーズ (140文字小説)

ドッキリスクールウォーズ (140文字小説)

 拡声器の声が校庭から聞こえる。

「学園の教師は全員出ろ!」

 先日、卒業した三年生が武装して集まっている。

「バカなことをするな!」

 教師達は諭そうとする。

 途端、生徒達は深々と礼をした。

「三年間ありがとうございました!」

 ドッキリ成功。

 教師達が全員涙したのは言うまでもない。

妻は納得がいかない (140文字小説)

妻は納得がいかない (140文字小説)

「かわいい娘さんね」

「いえ妻です」

「お父さんとお散歩?」

「いえ夫です」

 俺達はよく親子に間違えられる。

 その度に妻は頬を風船にして否定する。

「どうしてみんな間違えるの!同い年なのに」

 仕方ないよ。

 童顔低身長に加え、ゴスロリファッション。

 頼むから逆ギレしないでくれ。