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出戻り小学生

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根っからの学校嫌いが大人になって、まさかの学校で働くことに…。 現場における謎と不思議、笑いと感動に溢れた日々の記録。 今でも、戻れるのなら戻りたい…。
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2023年9月の記事一覧

それぞれの春 ①

 春が苦手だ。昔から。出会いと別れの季節…というが、先ず、そのどちらも苦手。学生時代はクラス替えなどで前後左右の景色が変わるのもストレスだった。
 進学を繰り返す度、ひたすら挫折を経験したのも原因ではある。
 就職氷河期真っ只中に社会へ出てからも、長らく毎年更新の有期雇用者だったため、翌年仕事があるのか、路頭に迷うのか、何ヶ月も前から不安で倒れそうだった。
 希望を胸いっぱいに抱いて羽ばたこうと将

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卒業し損ね小学生 ③

 新年度初日の打ち合わせだけでなく、ありとあらゆる校内行事を放棄している。そもそも、参加したところで場違い感が半端ではないので苦にはならない。
 新学期に間に合わせるために、削減された勤務時間分の業務を穴埋めせねばならない。始業式や終業式は、司書一人が図書室に籠っていたところで、殆ど誰も気付かないような学校の規模。黙ってボイコットしたことは何度もあった。しかし入学式や卒業式は、雑務の振り分けがある

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卒業し損ね小学生 ②

 日記代わりにつけている手帳がある。仕事の記録や記念日の振り返りに大いに役立っているが、こまめにつけていたそれには、当時の記録がごっそり抜けている。食べたものですら【記憶なし】などといい加減な書き方をしているので、恐らく、後で書こうと思ったまま忘れてしまったのだろう。
 面接結果の連絡が来たのは、翌週を跨がなかった気がするのだが、記録がない。確か、家族間でのある事件を発端に、身も心も草臥れ果てて、

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卒業し損ね小学生 ①

 新年度が始まっている。
 例を見ない人事大異動で、職員室はおろか、学校全体が見知らぬ異世界のようだ。今年度は二十人近くが去った。私の知る限り、前代未聞の多さ。その分入ってきているのだが、出て行った人に対し、入って来た、若しくは戻って来た(復帰した)人の女性率が高い。また、個性豊かな去り人達に対し、来たり人達は何だか皆似ている。人が苦手なくせに人に興味がある質なのか、顔と名前を一致させるのは割と得

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ありとあらゆる境目に

 新年度が始まって、毎年何人かがやって来る。100%女の子で、100%高学年だ。
「友達が出来ない。」
「誰と仲良くしたら良いのかわからない。」
 今年やって来た子たちは、ストレートだった。
 学校の規模が大きいと、毎年クラス替えが行われる。クラス数が多ければ多いほど、小学校6年間で、一度も話したことがないとか、同じクラスにさえなったことがない…などという話もよく聞く。
 自身が小規模校の出身で、

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任期満了まであと一年 ③

 次年度の任用について意向調査があったのは秋も盛りのことだった。
【任用を希望しても、同じ勤務形態で雇用されるとは限りません】というような一文が添えられていた気がして、ずっと違和感があった。【希望する】に〇をして提出したが、記入するとき、心の中では『同じ勤務形態でなければ希望しません』と思っていた。○を付ける場所が二択だけで、他に意見を記入する欄などは設けられていなかったため、氏名と○以外には何も

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任期満了まであと一年 ②

 緑色の封筒から出てきた書面に書かれていたのは、4月以降の勤務時間変更についての通達であった。現行より45分間短縮され、月額報酬が2.3万円減額になると書かれてある。パニックになった。
 天職からの転職を経て4年弱、次の年度で契約満了となる。再来年度は現在の嘱託職員から、会計年度任用職員という新職種になることは既に通達があった。これが結構曲者で、フルタイムの職種であれば正規職員同様、昇給・賞与や退

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任期満了まであと一年 ①

 二月も残りあと一日…という日、自宅に帰ると明るい緑色の封書が届いていた。勤務先の市からのものである。
 毎日仕事に行っているのだから、関係機関と連携している宅配ボックスやメール便などを使って職場の方へ配達する方がお金はかからないと思うのだが、時々こういうことがある。確か市は財政難。何故送料を使うのか解らない。
「市からこうやって届くやつって、ろくでもないことが多いねん。」
 母に向かって冗談交じ

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献血問題②

 科学的根拠はまるでないらしいが、血液型による性格や考え方の傾向、または人間関係の相性などに関し、個人的にはどちらかと言えば信じやすい方である。基本的に偏見は可能な限り持ちたくないが、何事も積み重ねというか、やはり様々な人と関わってきて今があるので、自分に合う人とそうでない人というのも、少なからずわかってきている。それが血液型や干支などに起因している場合が少なからずあるせいで、全く無視できなかった

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献血問題①

 三時間目から五時間目までのフリー参観日は、来校した保護者向けに献血を募るのが例年の倣いとなっているらしい。これまで知らなかったのは、私が週二日と三日の二校兼任で、各校の行事を確実に把握するには忙し過ぎたせいでもあるのだが、そのフリー参観日に、該当校へ出勤しているとは限らなかったからである。また、出勤していたとしても、授業時間の一日六限は基本的に埋まっており、昼休みや長休みのみならず、授業合間の十

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集団行動②

 集団行動が苦手なのは、今に始まったことではなかった。多分、自分が自覚するよりずっと前から苦手だったのだ。
「協調せよ」と、当たり前のように指示される場面では、殆どの場合違和感を拭えずに生きていた。当たり前とされるそれを、何の疑問も感じさせずに出来ている人々や集団を、何処か俯瞰しているような、そんな見方を気付かずにしているような…。常に『何故?』が付き纏い、反発する術すら知らずに協調しているフリを

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集団行動①

 以前働いていた職場で、こんなことがあった。
「誰か、これ運ぶの手伝ってー!」
 彼女の手元に置かれているのは、小学校の教室にあるような、一人用の勉強机。十人にも満たない小さな事務所に居た数人が、一斉に立ち上がる。結局、一人用の勉強机を4、5人でわいわい言いながら運んで行った。
 彼女達が立ち上がった時、私は声のする方を見はしたが、立ち上がらなかった。
「手伝ってー!」が異様だと感じたのは、『そん

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2年生で辞典が流行している件

 一学期半ば、何故か辞典が流行している。小学2年生のとあるクラスで…。それも国語辞典、または漢字辞典。
 小学校では3年生で国語辞典の引き方を習うらしいので、明らかに未だ早い。一人が借り始めて、それに影響されたのか、毎週一人か二人が借りて行く。しかも男子のみ。面白いらしい。
 女子はまるで見向きもしない。大方、絵本か女子力高めなきらきらレディ系の本。依って、熱心に借りて行くのは男ばかりであるが、静

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30センチだらりん事件

 このところ、やたらと続いていることがあり、それがとても気になっている。
 実はトイレのことなのだが、職員トイレにある三つの個室のうち、唯一の洋式トイレで、それは起こっている。
 入ってみると、トイレットペーパーが30センチぐらい、だらりーんと垂れ下がっているのだ。先は勿論、途中で引き千切られた形相。ガッタガタのギッザギサ。扉を開けるなり、毎回ギョッとする。
 あまりに続くのだが、それと共に、トイ

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