卒業し損ね小学生 ②

 日記代わりにつけている手帳がある。仕事の記録や記念日の振り返りに大いに役立っているが、こまめにつけていたそれには、当時の記録がごっそり抜けている。食べたものですら【記憶なし】などといい加減な書き方をしているので、恐らく、後で書こうと思ったまま忘れてしまったのだろう。
 面接結果の連絡が来たのは、翌週を跨がなかった気がするのだが、記録がない。確か、家族間でのある事件を発端に、身も心も草臥れ果てて、張り詰めていたものがぷつりと切れ、突発的に大号泣したその日だったのかも知れなかった。
 相手にも焦りがあったのだろうと今は思う。新学期まで一週間なのに、求めている人材の確保が出来ていない。かかってきた電話の内容は、ひたすら勤務を求める説得だった。応対中、ずっと震えが止まらなかったのは、相手の熱意の重さだけでなく、そこまで自分を求めてくれているのに、現状をあっさり放棄できない自責のせいでもあった。
 転職は保留になった。相手は「待つ」「また連絡する」と言って電話を切った。こちらは相手の熱意に感謝し、しかし他に人を当たって欲しいと伝えた。あれからそろそろ一ヵ月が来ようとしているが、相手方からの音沙汰はない。不採用なら返却されるはずの応募書類も、毎日ポストを確認しているが、返送されて来ない。断った時点ですっぱり忘れるべきであるが、何だか宙ぶらりんな気がして、ずっともやもやしている。

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