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異世界で暮らす義母へ、ミモザの花束を贈る。
長い長い夜を、抜ける。
富士山に近づくに連れ、車内の温度がだんだんと下がってきた。いつもより多めに回っている環状線のおかげで、だいぶ到着が遅れそうだ。
助手席から、キャップを外したペットボトルが差し出された。
「ここらへんの子はさ、小学生になると宝永山まで遠足に行くんだ」
富士山の中腹にぽっこり小山があって、それが宝永山って名前なんだけど。宝永山が見える位置で富士山の顔が変わるから、道に迷
スルメイカが焼けるまで待って
だらりと垂れていた右腕を、ゆっくりと円を描くように上昇させる。両手首にスナップを効かせて、くねくねと揺り動かした。
次に、身体全体をうねうねと捩りながら、鳩尾を覗き込むようにして背中を丸めていく。
「スルメイカの真似」
「ぶふぉ…!」
呟くと、目の前にいる男が口の中に含んでいた液体を盛大に噴き出した。「な…なんじゃぁ…!こりゃぁ…!」と白々しくも、大惨事になった手の平をワナワナと震わせてい
2021年某日、わたしは美容室で革命を起こす。
飽き飽きしていた。
見慣れた頭。ストレートの、ありきたりな焦げ茶色。アイロンで巻いても、コシのない髪はすぐに元の形状に戻ろうとする。かと思えば、一度ついた寝癖は中々とれない。極めつけは前髪内側のど真ん中に、一部分だけ天パが混じっている。こんなところに天邪鬼な性格を反映してくれるな。纏まらない寝癖と部分天パの双璧が、難攻不落の城砦を築く。うまく鎮圧できたところで、目ぼしい用事もないのだが。
出か
退職する日、手提げ鞄に「大切なこと」を仕舞って夜のオフィス街を歩く
引き継ぎもようやく終わって、今日はひたすらに貸与品の返却処理だった。スマホも、メールデータも、フォルダに保存してきた雑多なファイルも。自分の痕跡を、隅々まで消去していく。会社でやる「消す」作業って、なんだかものすごく、ドキドキする。
この前の休日を利用して揃えた「お世話になりました」の品々たちが、順々に私の手元から離れていく。
朝、出社してまずひとつ。これは同じ部署で働いていた皆に、仕事のお供
未来を見える化する習慣
毎週月曜日に、必ずチェックするものがあります。新聞の見出し、週間天気予報、note編集部のおすすめ、アニメの録画予約…週刊占い。
見ちゃうんですよねぇ…『しいたけ.占い』。ここ数年の、ルーティンです。特段、未来を知りたいだとか宇宙的な予知能力を信じているわけではありません。文末に添えられたラッキーカラーなんて、その日の内に忘れてしまいます。なのに月曜日の昼休みは、占い見たさにソワソワしちゃう。
夢から醒めたサンタクロースがクリスマスに星夜を駆ける
サンタクロース、いつまで信じてましたか?
うちは宗教上の理由からクリスマスがち勢な家庭だったため、わたしは小学5年生くらいまでは本当にサンタが実在しているのだと信じていました。それはもう、家族総出で騙しにきていたのです。と言うと少し語弊がありますが、いや、なんか…「サンタさんへのお手紙」とか書かされてたんですよね…。何が欲しいかを葉書にしたためて、サンタさん来るといいね~♪なんて言われながら、郵便