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半世紀前から普通の人生に挑戦した車椅子おばあちゃんの物語

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語1~58
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2024年4月の記事一覧

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊽

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊽

「行くしかない!」


翌年5月、最後の手段
かの有名な求職サイトに障碍者専用の窓口があることを
ネットサーフィンをしていて見つけたのです
「へぇ、こんなの出来てるんだぁ」
「時代は変わったのねぇ」
「たぶん無理だろうけれど、まぁ、ダメもとで」
と、いつものようにとりあえず登録だけしてみました
そして、面談を申し込むと、
なんと面談場所は都内の、たしか板橋の方だったとおもいます
一人で都内まで行

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊾

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「やったー!」


さて、落ち込んではいられません
先日受けた面接の採否連絡が来る前に、次です。

高速道路のインターチェンジのそばにある
「関係者以外立ち入り禁止」の看板を通り抜け
真っ赤なポルテを運転して待ち合わせ場所へ到着しました。
駐車場の入り口にスーツ姿の優しそうな男性が待っていてくださり
なかへ誘導していただきました。
車の窓を開け「○○です」
と名乗ると
「お待ちしていました。ご苦

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊿

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語㊿

ピカピカのバリアフリーオフィス

2012年
56歳、四捨五入すると60歳で
再びフルタイム勤務の始まりです。

通勤時間は渋滞もあり1時間弱はかかります。
朝3人分のお弁当を作り(長女は友人とルームシェア中)
会社の制服姿で出勤です
本社が都内にあるためでしょうか、胸元に大きなリボンが付いたオシャレな女子事務員の制服は56歳の私にはかなり抵抗があるデザインでしたが、
鏡に映った制服姿にちょっと

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語51

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語51

「死んじゃうかもしれない」

途切れてしまった電話
しばらく待っても再度の着信はありませんでした
「どうしよう」
とりあえず、専門学校の先生に連絡を取りました
状況を説明し、先生も情報を集めて、現地と連絡を取ってくださるということになりましたがなかなか難しいようです。
仕事中でしたが、Twitterで現地の状況を調べ続けました。
大きな地震があったことは分かりますが、ほかには何の情報もつかめずに

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語52

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語52

「寒いからな、気をつけて帰れよ」

翌年の秋のことです
家族4人と母で恒例の軽井沢へ向かう車の中です
「きれいだねぇ」
「あ、ほらあの木もきれい」
窓の外には色づいた木々が徐々に増え始めていた時に
母の携帯電話がなりました。
「あ、〇子だ」
「もしもし」
「うん、うん、うん」

実はこの頃、父は腰痛を訴えていて、病院通いが続いていました。
この日は検査結果が出ることになり、受診の予約が入ってしま

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語53

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語53

「何一つ恩返しが出来なかった」

その朝は珍しく雪が降り始め、大雪の予報が出ていました。
出勤時間にはまだあまり積もっていなかったので、
とりあえず出勤したのですが職場に近づくにつれて雪は激しさを増し、
いつもの通勤路はあっという間に雪景色に変わってしまいました
慣れない雪道を慎重に運転している時に妹から着信がありました。
「もしもし、おはよう、どうした?」
「じいじいが危ないんだけど、この雪じゃ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語54

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語54

「そうだ、ハワイに行こう!」

還暦を迎えました。
いよいよ、普通のおばあちゃんデビューです、
定年退職後の雇用延長はお給料が大幅に下がってしまうので
「もういいかな」と、退職するつもりでした。
ところが、会社からのご厚意で仕事を続けることになりました。
定年は定年なので、少しだけ退職金と、残っていた有給休暇をとれるので
「どこかに旅行でもしたいな」
とソワソワし始めました。
「よし、決めた」

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語55

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語55

「有り金はたいてほんとによかった」

ここはワイキキの中心街、有名なお店が並んでいます。
多くの観光客が行き来する中、
ガイドブックとスマホを片手に娘たちがあっちだとかこっちだとか言いながら
お目当てのカフェを探します。
「あ、ここじゃない?」
「あ、そうだね」
たどり着いたおしゃれなカフェ
ところが、入り口は階段の上です。
段数は6~7段ぐらいあります。
「階段だねぇ」
「どうしようか」
「ちょ

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語56

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語56

「母に謝りたくなります」

2018年夏
夢のようなハワイ旅行からちょうど1年が経った頃のことです。
母の定期検診に付き添っている妹からLINEが届きました。
「やばい!肝臓にしこりがあって血液検査の結果数値が高いって」
「国立病院にCT検査に連れていく」
「え、この間は異常なしだったよね」
母には8年ほど前に私と同じ乳がんが見つかっていました。
同じ先生にに診て頂いていて、乳房の全摘手術を受けて

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半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語57

半世紀前から普通の人生に挑戦して、普通のおばあちゃんになった車椅子ユーザーの物語57

「花嫁が大好きなおばあさま」

翌年、長女の結婚式がありました。

「ママ、ドレスでいいかなぁ」
「お着物はちょっと無理だし」
「え、でもね、友達の結婚式で花嫁のお母さんがドレス着てたら
スタッフに一般参列者と間違われちゃったみたいよ」
「着物、着れないかなぁ」

数日後、長女がLINEでURLを送ってきました。
「これ、どうかな」

ホームページを見てみると「明日櫻」という車いす用着物のレンタル

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