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おじさんマガジン

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長年の文通相手である「おじさん」に関する記事を纏めます。
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#文通

ここにある すべて。

ここにある すべて。

午後八時半。チャイムが鳴った。
誰か訪ねてくる予定はない。なにかネット注文していただろうかと考えたが思いつくものはなく、インターホン越しに要件を聞いた。

相手は聞き覚えのある声で「郵便局です」と言った。

こんな時間に郵便物が届くのは珍しい。だけど、これが朝の八時ごろであれば、送り主にだいたい察しがつく。

おじさんだ。

おじさんというのは私の長年の文通相手のことで、御年80歳。私が幼い頃住ん

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エッセイ | 手料理をねだる〝第三の父〟へ送る不幸の手紙。

エッセイ | 手料理をねだる〝第三の父〟へ送る不幸の手紙。

 もやもやしていて他のことに集中出来ないので吐き出してしまおう。

 料理のことである。

 わたしは料理が苦手だ。それなりに頑張ってみた時期もあるし、楽しいと思ったこともなくはないけど、ほんの一瞬だった。そもそもセンスが無い。そして、ずっと認めたくはなかったが、興味がない。

 どうして突然料理のことを嘆いているかというと、発端はおじさんだ。

 おじさんはこの十日ほどの間に、わたし宛に三通の手

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エッセイ | おじさんと小説

エッセイ | おじさんと小説

 知人と久々にランチをした休日。出先でヤマト運輸から不在通知をメールで受け取った。
 休日の朝、私のもとに届くゆうパックであれば、それは九割以上の確率で送り主はおじさんだ。だけど、今回はヤマト運輸からの荷物だったために、私はしばし考えてしまった。

 ちなみに、おじさんというのはわたしの長年の文通相手のことで、御年80歳、血縁関係にはない。幼少期の近所付き合いから、住む土地が変わっても30年間文通

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エッセイ | 40歳差の私たち。文通30周年メモリアルイヤーはエメラルドグリーンの輝き。

エッセイ | 40歳差の私たち。文通30周年メモリアルイヤーはエメラルドグリーンの輝き。

 祝日の朝早く、ゆうパックが届いた。
    私にゆうパックを送ってくれる相手で思い当たるのは一人しかいない。おじさんだ。

 おじさんというのは、私の長年の文通相手のことで、昭和19年(1944年)生まれの八十歳である。

 おじさんとは、私が一歳の頃に出会った。

    おじさんは当時私が住んでいた家の、真向かいにある古いアパートの一階に夫婦で住んでいた。
    その頃から、家の前で会えば

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日記 | 好き勝手やる。お互いに。

日記 | 好き勝手やる。お互いに。

おじさんから何やらダンボールで届いた。

おじさんは先月誕生日を迎えて、80歳になった。
前年、おじさんの誕生日を数日すぎてから祝辞を述べたら拗ねられたので、今回は年末に一ヶ月早くビール券を送っておいた。
お歳暮ではなく、誕生日プレゼントだと念押して。

そうして一月の末にようやく、わたしから年始の挨拶とおじさんへのバースデーメッセージを送った。実は今回も手元に残しておいたビール券を三枚だけポチ袋

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日本人は失恋しているらしい。 (日記)

日本人は失恋しているらしい。 (日記)

今朝、家を出る間際の忙しい時間にチャイムがなった。
朝は大体、化粧をしながらnoteを読んでいたりするのでついついのんびりしてしまう。

インターホンからは「郵便局です」の声。急いで前髪につけていたピンをはずす。姿見の前に2秒だけ立つ。その2秒で靴下の中に部屋着のズボンの裾を入れていたことを思い出し、慌てて直す。そしてフローリングを滑るようにして玄関へ走った。

郵便局の方は大体いつも急いでいる。

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94円でクイズに答える。 (エッセイ)

94円でクイズに答える。 (エッセイ)

昨日、家のポストを開けるとおじさんから手紙が届いていた。
文通相手のおじさんは、その時々で様々な厚さの手紙を送ってくれる。今回は薄い。
直ぐに読みたい気もしたけれど、午後は用事が詰まっていたので、落ち着いたらゆっくり読もうと一旦放置。noteで記事を読むのと違って、手紙は移動の合間にちょこっと読むとか、そういう慌ただしい読み方をしたくない。
そんなことを思っていたらすっかり忘れて、夜になってしまっ

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おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

おじさんと私の間を流れる不要品たち。(エッセイ)

土曜の朝。郵便配達のお兄さんは、怪しい衣装ケースを運んできてくれた。
透明な80サイズくらいの使い込まれた衣装ケース。持ち手の部分や全体に、青い養生テープを巻き付けてある。この斬新な梱包を施した主は、やはり文通相手のおじさんだった。

中身は透けて見えているが、どう見ても冬物のジャケットだった。それが2枚、ぎゅうぎゅうに詰められている。

見た感じ、手紙らしきものは入っていないようなので、ひとまず

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ルリ色の田沢湖のような男前〔エッセイ〕

ルリ色の田沢湖のような男前〔エッセイ〕

昨日、文通相手のおじさん(80歳)から、同時に2通の手紙が届いた。
誰でも開けられる古いタイプの我が家のポストから、バサッと落ちかけた2通の手紙と、数枚のチラシ。

字を見ればどちらもおじさんからだとわかる。
一通は、最近おじさんがよく使用しているブルーの封筒。
おじさんは封をした後、ポストに行くまでの間にも、私に伝えるべきことが浮かんでしまうようで、封筒の裏や、表の宛名書きの下にもびっしり文字が

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80歳の告白 (つぶやき...)

80歳の告白 (つぶやき...)

文通相手がいます。来年で齢は80。男性です。
年齢に誇りを持っている方なので、ここでバラしてしまいます。

昨日、大きな封筒(いつものことですが)で、手作りの冊子が届きました。文通相手(以後、おじさんと呼びます)の故郷の湖の写真や、それに付けた自作の詩を表紙にして、数ページありました。

数年前に亡くなった愛妻がプレゼントしてくれた辞典の中の好きなページのコピー、長年コンサートに足を運んで、顔まで

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