マガジンのカバー画像

四月日記

25
思いついたままに書きつけた日記
運営しているクリエイター

2022年4月の記事一覧

4月17日「いとま」

4月17日「いとま」

夜のうちに、青森県にいるせいで遅刻をする夢を見た。三内丸山遺跡で貝塚を眺めたり、津軽海峡を見渡せる断崖絶壁で石川さゆりのあの曲を歌ったりしているうちに、飛行機の時間に間に合わなくなって仕事をすっぽかす、という内容だった。
ろくに夢を見ることもないのに、たまに見たとなれば変なストーリーなので、なんだかうんざりしてしまった。遅刻だと思って飛び起きると時間にはまだまだ余裕があった。焦り損というか、心臓に

もっとみる
4月16日「バグ」

4月16日「バグ」

朝、目覚めてサラダを食べた。
昨日の晩御飯として用意したものだったけれど、お腹の許容量の関係で余してしまったものだった。新鮮さは損なわれてしまったかもしれないがそれでも美味しい。キューピーのゴマだれドレッシングが大好きだ。いろいろ試して辿り着いた最適解だった。

昔は野菜なんて好んで食べることはしなかったのに、今ではむしろ好きな部類に入っていた。食卓に出てきても愚痴を言わなくなったし、むしろ自分か

もっとみる
4月15日「おしゃれ」

4月15日「おしゃれ」

仕事をしながら、メガネチェーンが欲しいな、と急に思った。
おじいちゃんとか、EXILEみたいなイカつい兄ちゃんがしている、首掛けにもできるようなアレである。
もう少し具体的に言うのなら、メガネの耳にかける部分に引っ掛ける紐で、お洒落なものから地味なものまで、ピンからキリまであるアレ。

うーん。
うまいこと説明できないので、アニメやドラマのキャラクターに頼ろうと思ったけれども、誰一人として思いつか

もっとみる
4月14日「自殺」

4月14日「自殺」

仕事を終えて本を読み始める。
シェリー・ケーガンの『DEATH「死」とは何か』という、イェール大学で人気を博している講義を、文章に落とし込んだ本だ。

この本は日本縮小版と完全翻訳版の二種類が出ており、完全翻訳版の方が、厚さが二倍になっている。絹ごし豆腐くらいの厚みのある単行本で、読み切るには結構な時間を要しそうな量だった。
書店で目にした時にはどちらを買おうか迷ったが、縮小版だと前半の形而上学の

もっとみる
4月13日「卒倒」

4月13日「卒倒」

仕事をしていると店内入口の方でビターンという物音がして、大きいこんにゃくを思い切り叩きつけたのかな、とか呑気に考えながらそちらに寄っていくと女性が倒れているのが見えた。
前の方に倒れてしまったのか、うつ伏せのまま両腕が頭の上に伸び、顔は左のほうを向いているのが見えた。
どう見ても、転んでしまいました、で片付けられるような体勢ではなかったので急いで駆け寄ると、女性の目は緩く閉じられたまま痙攣しており

もっとみる
4月12日「劇場」

4月12日「劇場」

仕事の彼女と一緒に目覚めて、塩パンを準備した。どんぐりというパン屋さんの塩パンが素朴で好きだった。
そのまま食べても美味しいのだけれど、BALMUDAのトースターで焼くと、ちょっとした喫茶店みたいな味になるので嬉しい。日々の生活には一滴くらいの喜びがあってほしいものだが、このトースターは何度使っても廃れない喜びをもたらしてくれる。

パジャマに鳥の巣の頭のまま彼女を見送り、食器を洗った。食器洗いは

もっとみる
4月11日「きゃぱい」

4月11日「きゃぱい」

朝からの仕事を卒なくこなした。
仕事の中で、もっとステップアップしたいと思うことがあった。自分の得意なことを伸ばすのは楽しいけれど、苦手な部分と向き合うのは苦痛でしかない。それと真摯に向き合う以外に今の自分を成長させる手立てはないのだ、という実態を垣間見た。

思えば、面倒ごとやら嫌いなことからは目を背けて、自分の好きなことばかりやってきた四半世紀だった。
勉強とか、運動とか、人生を歩む上での建設

もっとみる
4月10日「背景」

4月10日「背景」

友人からカフェに行こうと誘いがあった。四月か五月には行けたらいいねえ、と話していたのに、思ったより早く顔を合わせることになった。行ってみたいお店を見つけたらしい。

彼はコーヒー関係の仕事に就いていて、豆の発注やら商品の販促なんかをメインの業務にしているのだけれど、ここ最近の従業員の減り具合が「リーマンショックの時の株価くらい」だとため息混じりのLINEが来たから「ギザギザに減ったんだね」と軽口を

もっとみる
4月9日「嗅覚」

4月9日「嗅覚」

鼻炎と花粉症を同時に患っている人は高々と手をあげてほしい。そして、そのまま手を下ろして前に出し、僕と固い握手を交わしながら、お互いの辛さを分かち合おう。
人はそれを傷の舐め合いと揶揄するかも知れないけれど、それでも構わない。誰かと共有したいくらいの苦痛がある。

ほこりがその辺を舞っていると鼻水が止まらなくなり、くしゃみを誘発する。さらに、春が近づいた頃からは、白樺の花粉の攻撃でナイアガラの滝もい

もっとみる
4月8日「生徒」

4月8日「生徒」

朝、目覚めてスマホを開くと、職場の常連だった大学一年生からDMが届いていた。
僕の仕事は飲食関係であり、受験戦争真っ只中の頃、彼は勉強をしによく来ていた。何度か顔をあわせるうちに去年の夏、彼の方から連絡先を教えて欲しいと言われた。一緒に働いている女性ではなくて、僕の方に声をかけてきたことに好感を持った。それに、本当に僕と話したいのだ、というのが伝わってきて嬉しかった。

現代の高校生の連絡先の交換

もっとみる
4月7日「四季」

4月7日「四季」

日記を書くにあたって、天気の調べで始めるのは人間のあるべき姿なのか、それとも生きてきた中で獲得した「日記らしさ」に則っているのか、どちらなのか気になった。
空模様を書いておけば、ひとまず、文章の入りとして落ち着きがあるのは分かる気がした。時候の挨拶みたいなものなのだろう。ということは、日記は未来の自分に向けた手紙のようなものか。タイムカプセルに入れた、小っ恥ずかしい手紙を書き連ねているのか。
それ

もっとみる
4月6日「煙草」

4月6日「煙草」

東京が悪天候だった次の日の札幌の天気は悪い。日本の天気図を思い浮かべた。やはり、雲は西から東に流れているようだった。
友達のInstagramのストーリーの投稿で、遠く東京の天気を知って、僕は僕なりの天気予報をする。投稿は、仕事の合間に、雨の中で煙草を吸っている様子だった。雨だろうと吸うのか。右手の甲が火種の傘か。なんにせよ、同じ空の下だ、と思った。

今日の空は、太陽が煙草をふかしているみたいな

もっとみる
4月5日「抽象画」

4月5日「抽象画」

職場までの道のりには、もはや夏の雰囲気があった。雪は残っているけれど、照りつける日差しの強さが、春をうっかり忘れてしまったみたいに容赦なく僕まで届いた。
春物の羽織にしてよかった。何年も前にGUで買った安物だった。もうそろそろ買い換えたいけれど、致命的に壊れたり、未だにボロくなっていないせいで、なかなか手が伸びなかった。

仕事を終えてご飯を済ませ、夏目漱石の『明暗』を読み始めた。漱石の未完の絶筆

もっとみる
4月4日「深夜ラジオ」

4月4日「深夜ラジオ」

なんだかいろんなことを話して、自分の中の言葉のストックをほとんど出し切ってしまったような一日だった。
目的の言葉をめがけて辞書を引いても、閲覧した後に辞書の中から言葉が失われることはないけれど、自分の頭の中にある言葉は、少しずつ減っていくような感覚があった。
本当にそんな現象があるなら、フリースタイルラップは自殺行為でしかなくなる。きっとそんな現象はない。主張が減っていったことの錯覚だろう。

もっとみる