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4月17日「いとま」

夜のうちに、青森県にいるせいで遅刻をする夢を見た。三内丸山遺跡で貝塚を眺めたり、津軽海峡を見渡せる断崖絶壁で石川さゆりのあの曲を歌ったりしているうちに、飛行機の時間に間に合わなくなって仕事をすっぽかす、という内容だった。
ろくに夢を見ることもないのに、たまに見たとなれば変なストーリーなので、なんだかうんざりしてしまった。遅刻だと思って飛び起きると時間にはまだまだ余裕があった。焦り損というか、心臓に悪いというか、なんにせよ遅刻でない分だけまだいいと思うことにした。

朝はいつも辛かった。僕はどちらかといえば夜型の人間で、ぼーっとでもよければ起きていられる方だった。
その代わり起きるのが苦手だった。夜型な上に、ロングスリーパーだった。できれば、九時間くらい毎日眠れたら最高だった。疲れているかどうかに関係なく、それくらい寝なければ自分の身体としてしっくりこない。

小さい時から異様に眠る子供ではあったのだけれど、誰もがどこかのタイミングで耳にする「人間の最適な睡眠時間は六時間!」という言葉に釣られて六時間睡眠を試してみたら、日々辛すぎてしょうがなかった。中学高校大学社会人、すべてのタイミングで試しているけれど、いつ試してみても身体が慣れることはほとんどなかった。
社会人になってからは、仕事の日は出来るだけ五、六時間睡眠にして、休日に九時間くらい眠るという生活スタイルを確立しつつあった。慣れるには慣れたのだが、それでも僕の身体に合う睡眠時間は人よりも長くなくてはならないようで、やはり朝は辛いものだった。

世のロングスリーパーたちはどう折り合いをつけているのだろう?
眠いと思った時に必ず眠るようにしてしまっては、自分のための自由時間を確保できないから、僕はそれに抗いながら生活をしているのだが、どうなんでしょう。誰か読んでいたら教えて欲しいと切実に思う。

仕事の合間にTwitterを開いて暇をつぶした。TLを眺めている分には楽しいけれど、トレンドを追いかけるのは時間の無駄だなと思った。
よく知らないアイドルのこととか、興味のないスポーツのこととか、見る気もないアニメのこととか、マスク社会を反対する人たちとか、自分のセンサーの反応しない事柄が多すぎてうんざりした。
アイドルやアニメには熱狂的なファンのツイートが観れるだろうし、スポーツではスーパープレイの動画が見れるだろう。ニュースについては素人意見の、掃いて捨てるようないきり立った人たちが群がっているはずだった。
僕には無関係だし、対岸でやっていてくれという事ばかりだった。トレンドもカスタマイズできればいいのだけれど、僕が知らないだけで、Twitterのアプリはそういうこともできるのだろうか。どちらにせよ見なければいいだけなので、これからは積極的に避けていくことにした。

あなたには、あれやこれやに対して意見を持たない自由も、そうすることによってあなたの心を波立たせない自由もある。

第十六代ローマ皇帝 マルクス・アウレリウス・アントニヌスの発言

平静な心で生きるためには意見を持たない必要があるし、意見を持たないためには、余分な情報を目にしない方が良さそうだった。自分の生活で精一杯のところに、手の届かないところにあるニュースやトレンドを自ら摂取するのは、どう考えてもコスパが悪いように思えた
そうする暇があるのなら、その暇を自分の興味のあることや仕事やタスクに当てたほうが身になるだろうと思った。

どうやら今日は「時間」をテーマにして頭でものを考えているようだった。
四月に入ってから何かを書いてみたり、意識的に本を読むようにしたり、手に収まる分だけの能動的な活動をするようにしてきたおかげで、一日の時間は短すぎるように感じているのかもしれなかった。

やりたいことはまだたくさんあった。
どうやって入れ込んでいこうか。やりたいことを入れ込んでみて、何かを捨てなければいけないときには、何を捨てようか。睡眠か、Twitterか、noteなのか。読書か、旅行か、仕事なのか。大袈裟だ。

大袈裟だけれど、やりたいことを始めることで生活が豊かになるのと同じように、やめてもいいことを見つけることも、同じく豊かになるための方法だろうと思った。表裏一体であるかもしれない。
始めながらやめて、やめながら始めて、やりたいことだけを続けていけるのならば、時間が短くたって満足できる生活になるのかもしれない。

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