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4月12日「劇場」

仕事の彼女と一緒に目覚めて、塩パンを準備した。どんぐりというパン屋さんの塩パンが素朴で好きだった。
そのまま食べても美味しいのだけれど、BALMUDAのトースターで焼くと、ちょっとした喫茶店みたいな味になるので嬉しい。日々の生活には一滴くらいの喜びがあってほしいものだが、このトースターは何度使っても廃れない喜びをもたらしてくれる。

パジャマに鳥の巣の頭のまま彼女を見送り、食器を洗った。食器洗いは割と好きな家事だった。
洗濯機を回すのは嫌いだが、洗濯物を干すのと畳むのは好き。掃除機をかけるのは腰が重いが、部屋の整理整頓は好き。ほとんどの家事を面倒だと思っていたけれど、実は半々くらいの割合のようだった。
家事だけではなく、嫌いなことをするために消費するカロリーの方が僕らの体に染みついているから、家事が面倒だというイメージになっているのだろうか。
あと、僕は機械に頼る家事が嫌いなようだった。自分の手で綺麗になったり、整えられたりするものが好きだ。それは家事が好きなのではなく、終わったあとの達成感が嬉しいのかもしれない。

そんな調子で家事をこなしてから、Netflixで『Sing』を観た。動物たちが入り乱れているアニメーション映画だった。正直そんなに期待をせずに観たのだけれど、めちゃくちゃ面白かった。つまらない瞬間が一秒もなかった。大袈裟じゃなく、息継ぎ無しでクロールを泳ぎ続けているみたいな感覚だった。
もしかすると、最近読んでいる本や見ている作品の時間の流れが遅いせいで、ギャップを感じているのかもしれないとも思ったが、そんなレベルじゃなかった。そぎ落とすところが全くなかった。

ざっくりとしたあらすじは、ショーに取り憑かれて劇場を運営している主人公のパンダが、劇場にかつての輝きを取り戻すために、助手のカメレオンおばさんと賞金をかけたオーディションを計画する。
カメレオンおばさんの手違いで、賞金が0の二つ多い$100,000になっており、応募者が殺到してしまう。
そこで選ばれたのは性格の悪いネズミと、ヤクザの息子のゴリラ、子沢山のお母さん豚と別の派手な豚、彼氏とうまくいっていないハリネズミ。選び終えた後に、賞金に手違いがあったことが発覚して、お金のやりくりのために東奔西走するのだが、いろんなアクシデントが待っているよ、というような感じ。

文章にして思ったのだが、ストーリーの起伏の激しさに加えて、キャラクターがとても濃い。それぞれのバックグラウンドも描いているて、みんなのことを好きになる。
全体を通してポジティブな作品だった。
陰気臭い作品はそれはそれでいいのだけれど、今は、騒々しいくらいに明るいものを欲している時期のようだった。今日からの活力を引っ張り上げてくれる映画はいいものに違いない。

どん底に落ちるとなにが素晴らしいか知ってるか? 残った道は一つだけ。上昇するだけさ!
主人公バスターの発言
怖くなんかない。歌い始めれば大丈夫。
同上

最高だ。単純なことだ。
でも、僕たちは自分の知っていることを他の人の口から聞きたいと思っている。バスターはパンダだけれど、自信満々に僕らに伝えてくれるから、どこまでも元気にしてくれる。
ちょうど続編が公開中なので、そのうち観に行くことに決めた。

そのあとは、日記を書いたりしていた。
8日の日記を12日に書いているのは如何なものかと思うけれど、ある程度出来上がっているところに、その日に書きつけた〈気になったメモ〉からもう少し付け足して成形した。
その日のうちに日記を書き初めても、ご覧の通り、文字数が多くて書き終わるまでには時間がかかってしまう。それに加えて、他にもやりたいことは山のように重なっているから、書き終えないうちに日記をほっぽり出すことは僕にとって難ないことだった。

当日 に書きつける日記は中途半端になることを見越して、その日にあったことや気付いたことを書き残しておけば、後から書き足しても違和感は減る。それに当日とは違った見方もできるから、文章が出来上がるのは、時間が過ぎてからでもいいと思っていた。
時間は連なっているのだから、その日のことを書きつけていれば「日記」として成り立つと信じていた。日記ではなくて、日記の浅漬けかもしれなかった。

どちらでもいいことを一つに選ぶ 昨日のことを今日考える
永井裕「広い世界と2や8や7」より

継続は力なりだろうか。
分からないが、4月に入ってからはnoteを更新をしない時でも、毎日何かを書くような習慣ができてきた。不意に、書いて何になるのだろうという疑問が急に頭に湧いた。
これはまずい。意味を持たせようとしたならば、僕の筆は止まってしまう。何かを目標としてしまったら、それを達成した時に辞めてしまうだろうし、達成できなかった時には悲しむ羽目になってしまう。
それだけは勘弁だった。意味なんてないのだ。日記を書くという行為がそこにあるだけだ。書き始めれば大丈夫なのだ。

ひとまず書き終えて、夕食の準備をすることにした。
今日は豆苗としめじと卵の中華スープにしよう。

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