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芸術一般

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芸術について、なんでも書きます。はじめはヨーロッパ絵画をかなり題材にしていましたが、現在は映画評論・芸術論・文学論などが多くなっています。
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#神話

<書評>『バレエ 形式と象徴』

<書評>『バレエ 形式と象徴』

 『バレエ 形式と象徴(原題の直訳は「バレエ 形式と本質 現代ヨーロッパのダンスにおける象徴的な言語」) Ballett—Gestalt und Wesen Die Symbolsprache im europaeischen Schautanz der Neuzeit.』 ゲルハルト・ツァハリアス Gerhard Zachaias著 渡辺鴻訳 美術出版社1965年 原著は1962年 Koln(ケ

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<書評>『悲劇の死』

<書評>『悲劇の死』

『悲劇の死 The Death of Tragedy』ジョージ・スタイナー George Steiner 喜志哲雄 蜂谷昭雄訳 筑摩書房 1979年 原書は1961年

 本書の内容は、もちろん本文が中心なのだが、スタイナーによる最後の解説的な第10章とそれを補足する訳者の解説は、最初に読むべきだと思った。最初に読んでいれば、本文の感じ方がかなり異なった気がする。

 アメリカ人ジョージ・スタイナ

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<短編小説>ヴィヴァルディ『四季』協奏曲第4番「冬」から

<短編小説>ヴィヴァルディ『四季』協奏曲第4番「冬」から

 ヴィヴァルディの『四季』と言えば、出だしのところしか知らない人が多いと思う。同様に、ベートーヴェンの第5交響曲やチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番も出だしのところはよく知られている。またCMやドラマなどにもしばしば使われる。一方、ベートーヴェンの第9交響曲は、出だしのところではなく、最後の第4楽章(特に合唱部分)が有名だ。そこが最も盛り上がるように出来ているからだ。同様に出だしが有名なベートー

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<書評>『トリックスター』

<書評>『トリックスター』

『トリックスター』ポール・ラディン 皆河宗一訳、カール・ケレーニイ 高橋英夫訳、カールグスタフ・ユング 河合隼雄訳、山口昌男解説、晶文社 1974年
原書は、”The Trickster—A study in American Indian Mythology” Paul Radin, Karl Kerenyi, C.G.Jung, 1956 Routledge & Kegan Paul, Lon

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<書評>『ギリシアの神話 神々の時代 英雄の時代』

<書評>『ギリシアの神話 神々の時代 英雄の時代』

『ギリシアの神話 神々の時代』、『ギリシアの神話 英雄の時代』 カール・ケレーニイ(Karl Kerenyi)著 植田兼義訳 1985年 中公文庫 ドイツ語の原著(Die Mythologie der Griechen)は1951年と1958年に(Rhein-Verlag, Zurich)で発行。

 1985年以前に、単行本で中央公論社から出版された『ギリシアの神話 神々の時代』を購入したものの

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<閑話休題>2022年のまとめと2023年の抱負

<閑話休題>2022年のまとめと2023年の抱負

 明けましておめでとうございます。旧年中のご愛顧を感謝申し上げますとともに、引き続き本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

 2022年4月以降は、定年退職して時間ができたこともあり、読書及び創作活動に勤しむことができた。そこで、2022年のまとめと2023年の抱負を書きたい。

1.読書

(1)2022年のまとめ

 なんといっても、ダンテ『神曲』を邦訳ながら読了できたこと。翻訳しているせいも

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<海外TVドラマ評>『スーパーナチュラル、シーズン15』及びシーズン全体を通しての感想

<海外TVドラマ評>『スーパーナチュラル、シーズン15』及びシーズン全体を通しての感想

 本当は2020年に終了するはずだった最後のシーズン15は、新型コロナウイルス感染拡大により撮影が続行できず、2021年シーズンに持ち越すこととなった。また、通常ひとつのシーズンは22話で構成され、また最後のシーズンとしても特徴あるエピソードを織り込むべきでありながら、いつもあるいわゆる「遊び」としての、主人公をパロディーの世界(例えば、西部劇、ホラー映画、ハイスクールものを茶化したもの)に迷いこ

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<映画評>シャイニング

<映画評>シャイニング

 スタンリー・キューブリックの映画手法による面白さが、よく表現された作品である。キューブリックの最高作品は、なんといっても『2001年宇宙の旅』だが、『2001年・・・』の素晴らしさは、何よりもセリフをなるべく少なくして、映画本来の表現力である映像で語りかけていることに集約される。そして、『シャイニング』も、映像による表現力に同様の素晴らしさを見つけることができる。

 冒頭の、主人公一家が山道を

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<物語翻訳>「ボルネオの民話―点描―」

<物語翻訳>「ボルネオの民話―点描―」

「Folk-Lore in Borneo A Sketch」William Henry Furness ウィリアム・ヘンリー・ファーネス著 2009年 Opus Publications Kota Kinabalu Malaysia オプス出版 マレーシア,コタキナバル

著者は,パリ地理学研究所会員,アメリカ合衆国人文科学研究所会員,アメリカ合衆国東洋研究所会員
初版は,1899年に,アメリカ合

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