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[短編小説] サントリーニの夜
白を基調とした内装は、窓から見える暗闇を引き立てていた。窓の外からは猫が喧嘩している鳴き声が聞こえる。黒板を引っ掻いたような音が耳に障る。
「今回、取材を受けてくださったのは何故ですか?」
「何でって、あなたが取材依頼を申しこんできたんじゃないですか。内容は物騒なものだったが。」
しわがれた声でゆっくりと話す長の声は、移動で疲れた体を更に気怠く感じさせた。コペンハーゲンからアテネまで3時間、ア
ジャンプ+読み切りあらすじ 「君にオートクチュール」
日本における服飾のトップ校、装麗学院。二年生の針生はトップデザイナーの両親により、幼少期から服飾に関する英才教育を受けてきたが、美しさとは何かを見失い、ファッションに意味を見出せなくなっていた。
ある日、授業で隻腕の青年、糸瀬と出会う。縫製など荒い部分はあるが、その服には他にない美しさを感じた。彼の美学は、あらゆる身体的特徴の美しさを洋服で引き出すこと。
学内でも異質で、冷ややかに見られてきた
君にオートクチュール 本文
「また帰らなかったんだ」
不必要に広いリビングは、昨晩と同様がらんとしていた。時計の針はもう八時を指していた。急がないと。自室に戻ると、パジャマを脱いだ。クローゼットの中は、親のブランドの服で一杯だ。
「これと、これでいっか」
私は針生千服。この春から、装麗学院の二年生になった。装麗学院は日本におけるファッションのトップ校であり、世界で活躍するトップデザイナーを多数排出してきた。
新宿駅を降り