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派手に笑う、kolorを着た彼女

彼女は派手に笑って、僕の手をぐんぐん引っ張って行った。花火やライオンを彷彿とさせるような、本当に派手な笑顔だった。襟元が鮮やかなkolorの洋服が、一層それを際立たせた。目の大きさがどうとか、鼻の高さがどうとかなんて忘れさせてしまうくらい、根源的な魅力がそこにはあった。実際、今となっては全く具体的な要素を思い出せないのだ。

「そんなに無防備な笑顔を見せるのって、少し躊躇ったりしない?」

衝いて出た僕の質問に、彼女は何か答えたが、長くは続けなかった。

「記念写真撮ろうよ」

彼女はスマホの内カメラを向け、入るように僕に言った。その時初めて、スマホの画面を通して、彼女の髪が美しい青色であることに気づいた。スマホという媒体を通さなければ一つ一つのパーツを視認できないほどの、抽象的、総合的な美にドキッとした。僕らは河川敷をしばらく歩いていくと、いつの間にか空は真っ暗になり、ネオン街に出ていた。仰々しいほどにカラフルなネオンの光は、彼女の横顔を照らしていた。時刻は12時を回っていた。

「良いところ知ってるんだ!一杯飲みに行こうよ」

そう言うと、僕の手を引き、どこにでもありそうなビルに入っていった。地下へ続く階段を降りると、薄暗い部屋をいくつも通り抜けて行った。外で見てイメージした中の広さよりも遥かに広い空間に戸惑いながらも、僕はただ言われるままについて行った。やっと目的地らしい明るい部屋が見えてくると、それはコインランドリーだった。暗い部屋を通り抜けてきたせいか、その明るいコインランドリーは妙に安心感を与えた。だけど、コインランドリーでお酒なんて飲めるのだろうか。

「ここのビールが美味しいんだよね」

だけど、そこには一人の男がポツンと立っており、既に今日の営業を終えたことを無表情で伝えた。彼女は残念そうな顔をしていたが、仕方ないので僕らは引き返した。一階へ戻る階段に向かう道中、暗闇の中から大量のゾンビが僕達を襲ってきた。支離滅裂な状況なのに、なぜか僕はとても落ち着いていて、彼女の手を握り、今度は僕が強くその手を引っ張り、何とかビルから出ることが出来た。外に出て振り返ると、何も変なことは無かったとわざとらしくアピールするように、ビルは佇んでいた。僕達も何も無かったかのように、ネオンの街の更に深いところへ進んで行った。街には、「グッド・バイ・トランスファー」のような曲が流れていたが、歌詞は僕の知るものと少し違っていた。








そこで私は自覚的に目を覚ました。平日に二度寝ができるのが大学生の特権だ。二度寝をすると、面白い夢を見れる確率が高いような気がする。普通の時に見る夢よりは覚めても憶えていられるし。私の夢は私の中に蓄積されたものからしか構成されないが、時に自分の想像を超えるような物語を紡いでくれる。




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