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気ままな読書日記

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ジャンル関係なく、気ままに本の感想を書いていきます。
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2021年10月の記事一覧

今野真二『『広辞苑』をよむ』岩波新書

今野真二『『広辞苑』をよむ』岩波新書

『広辞苑』を知らない人は少ないだろう。実際には手に取っていないとしても名前だけは知っている。日本で一番権威があるように思われる日本語の辞書である。名前から、少ししゃれて、普通の辞書と別格な感じがする。

本書は、『広辞苑』を中心にして、いろいろな辞書について考察している。辞書を「よむ」とは、辞書を使いながら、いろいろと違うことがらを考えることをいうらしい。

「凡例」とは何だろう。辞書を使用する場

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増田悦佐『増補改訂版 クルマ社会の七つの大罪 自動車が都市を滅ぼす』土曜社

増田悦佐『増補改訂版 クルマ社会の七つの大罪 自動車が都市を滅ぼす』土曜社

クルマによってアメリカが落ちぶれたということを論じた本である。著者は、元々は株式アナリストとして、投資関係の著書が多いが、現在では文明評論家を名乗っている。

馬車なんか持てない身分だった下層民の多くが「馬なし馬車」(自動車)なら持てる一般大衆になって、よりしあわせになった。だからこそ、アメリカは多くの移民を受け入れながら驚異的な文化統合をやってのけ、どんなに貧しい人間にも自助努力さえすれば、経済

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マイケル・サンデル『実力も運のうち 能力主義は正義か?』早川書房

東大生の親の60%が年収950万円以上であることは、いまでは周知のことである。親が裕福でなければ、一流大学には入学できない。

米国では、さらに極端であり、ハーバード大学の3分の2は、所得規模で上位5分の1にあたる家庭出身である。小学校の時代から選抜があり、裕福な家庭の子は、たとえ公立であっても特別な学校に入学する。一方、貧困家庭は、その選抜システムがあることも知らない。

人種や性別、出自によら

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林郁&DG25周年プロジェクトチーム『デジタルガレージ 未来が生まれ始まるところ』講談社

林郁&DG25周年プロジェクトチーム『デジタルガレージ 未来が生まれ始まるところ』講談社

デジタルガレージ社は、日本で初めて個人ホームページ「富ヶ谷」を開設したところから始まったインターネット関連事業を行う会社である。価格.comや、食べログを運営するカカクコムなどをグループ会社として持つ。

1995年創業から、25周年の会社の歴史を記述した本である。それは、日本のインターネットの歴史を記述することとなる。

Yahoo!に対抗する検索サービスinfoseekの日本語サービスを立ち上

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中山繁信『増補図解いきなり絵がうまくなる本』角川新書

中山繁信『増補図解いきなり絵がうまくなる本』角川新書

絵を描く才能がない人が、いきなり絵がうまくなると書かれていれば、ついてに取ってしまう本があった。これさえあれば、絵が下手くそと言わせないことができるかもしれない。

著者は、ルールを知れば絵は簡単に描けると言う。この本では4つの方法を紹介している。

最も簡単な立体は同次形法、その応用で平行移動法、簡単に遠近感を出すには相似形法、建物を描くには消点法がある。また、陰影をつけると形を立体に見せること

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岸田奈美『傘のさし方がわからない』小学館

岸田奈美『傘のさし方がわからない』小学館

本書は、著者の3冊目のエッセイ集である。父親は早くに他界、弟はダウン症で、母親は車いす。普通に考えれば、絶望的に思うのだが、いくつもの困難を楽天的にやすやすと越えてしまう。NHKのパラリンピックの中継番組に出演していたり、民放の朝のテレビ番組にも時々顔を出している。

「全財産を使って外車を買った」は、車いすの母親が乗る車を買い替えた話である。父親がこやなく愛した(父親の死去で手放した)ボルボを買

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ロリ・アーンスパーガー『いじめ防止の3R すべての子どもへのいじめの防止と対処』学苑社

ロリ・アーンスパーガー『いじめ防止の3R すべての子どもへのいじめの防止と対処』学苑社

著者は、20代前半に、軽度の障害のある女性と出会い、学校でいじめの標的となった経験について話を聞いた。その中で、彼女が「私はいじめた子のことは許します。でも、”他者の沈黙(silence of other)”は許すことはできないのです。」と言ったという。

彼女は日常的に繰り返されるいじめについて、教師に何度も報告にもかかわらず、彼らは「あまり気にせず、無視するように」と言うだけであったという。周

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楠木健・山口周『「仕事ができる」とはどういうことか?』宝島新書

楠木健・山口周『「仕事ができる」とはどういうことか?』宝島新書

仕事で成果を出すためには、「サイエンス・スキル」より「アート・センス」の方が重要だという。

スキルがもてはやされてきたのは時代の要請で、スキルが金になったからである。最近は「役に立つ」ことが求められなくなって、「意味がある」ことに価値の源泉がシフトしている。

「役に立つ」はスキル、「意味がある」はセンスで、役に立って意味がない日本車より、役に立たないが意味があるランボルギーニや、フェラーリの方

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郡山史郎『定年格差 70歳でも自分を活かせる人は何をやっているか』青春新書

郡山史郎『定年格差 70歳でも自分を活かせる人は何をやっているか』青春新書

2021年4月、大企業が対象ではあるが、70歳までの継続雇用が努力義務化された。これまでも、65歳までの継続雇用が義務化され、ほとんどの企業が65歳までの再雇用制度を採用した。しかし、今後は、定年前から社員を追い出しにかかるんではないかと著者は予想する。

著者は、86歳となった現在でも、現役で働いている。定年前より今の方が10倍面白いという。しかし、そのためには早くから準備が必要だという。また、

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菅原裕子『「ボヘミアン・ラプソディ」の謎を解く』光文社新書

菅原裕子『「ボヘミアン・ラプソディ」の謎を解く』光文社新書

本書は、クイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」は、そのボーカルであるフレディ・マーキュリーがゲイであること告白したカミングアウト・ソングであるという仮説について、その真相を明らかにしようとしたものである。

著者は、クイーンのマニュアックなファンではないが、中学生のころ、80年代には洋楽漬けの毎日を過ごしていたという。「ボヘミアン・ラプソディ」を初めて知ったのは、ギリシアの女の子との海外文通から

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尾原和啓『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』幻冬舎

尾原和啓『プロセスエコノミー あなたの物語が価値になる』幻冬舎

完成品を売る一般的な商売の仕方を仮に「アウトプットエコノミー」と呼ぶとすれば、良いものを作って、安く提供して、適切に知ってもらい、適切に届けることが大事である。

しかし、情報が流通しやすい現代において、すぐに真似されてクオリティは高くなり、悪いものはすぐ淘汰される結果、品質では差別化しにくくなっている。このため、品質で差がないから、マーケティング、流通、ブランドの競争となる。

これに対し、顧客

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デボラ・グルーンフェルド『スタンフォードの権力のレッスン』ダイヤモンド社

デボラ・グルーンフェルド『スタンフォードの権力のレッスン』ダイヤモンド社

権力とは、他者とその行動をコントロールする能力のことをいい、自分の権力は他者が自分を必要とする程度で決まるという。

本書は、権力と何かを明らかにし、権力の使い方、権力への対抗の仕方について述べた書籍である。

女性にとって「ハイヒール」は身長を高くするだけではない。ハイヒールはセクシーなものであり、そこに権力が生まれる。ハイヒールが硬い床を叩く音は、だれかの到着を告げる音だという。

人の上に立

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ジャスパー・チャン『Day1毎日がはじまりの日』PHP

ジャスパー・チャン『Day1毎日がはじまりの日』PHP

GAFAの一角を占めるアマゾン(Amazon)について、どれだけ知っているだろうか。書籍の購入ばかりではなく、毎日の買い物をすべてアマゾンから買っている方も多い。また、アマゾンの収益の多くは、アマゾンウェブサービス(AWS)というクラウドのデータベースサービスであることなど。

著者はアマゾンジャパン合同会社の社長で、香港出身である。2000年にアマゾンジャパンが設立され、翌年から社長を勤めている

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メアリー・ホーランド他『子宮頸がんワクチン問題』みすず書房

メアリー・ホーランド他『子宮頸がんワクチン問題』みすず書房

コロナワクチンの成功の裏で、子宮頸がんワクチンの接種の促進を厚労省が検討するとの報道がされている。この問題について、何の知見も持ち合わせていないのでコメントはできないものの、参考となるべき書籍がある。

子宮頸がんワクチンは、製薬会社の天文学的な収益をもたらしている。病気のブランド化というマーケティング活動のおかげで、HPV(ヒトパピローマウイルス)が子宮頸がんの原因であると認知させた。しかし、H

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