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映画『月』を見て。石井裕也監督が描く「人間の尊厳」。(※ネタバレなし)
心揺さぶられる衝撃
すごい映画に出会った。映画「月」。主演は宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョーら。スクリーンにエンドロールが流れ、劇場が明るくなっても席を立たない人が目立つ。筆者もその一人だった。あまりの衝撃に呆然として立ち上がれなかった。重いテーマだ。頭の中で自問自答を繰り返したが時間が経っても回収できず、3日後の10月22日(日)、名古屋・伏見ミリオン座で開かれた石井裕也監督の
初公開!「関東大震災絵巻」に見る朝鮮人虐殺
関東大震災から100年が経った。東京・新大久保にある「高麗博物館」で関東大震災の惨状を描いた貴重な絵巻が公開されていると聞き(2023年7月5日〜12月24公開)、名古屋から足を運んだ。ビルの7階にある小さな展示スペース。朝鮮半島出身の人たちの歴史を伝える展示物の中心に「関東大震災絵巻」は展示されていた。上下2巻で全長30メートルという大作。その一部に描かれているのが朝鮮人虐殺の場面だ。朝鮮の人
もっとみる日本の美しい建築①ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)/兵庫・芦屋市
芦屋に残る”フランク・ロイド・ライト”の贈り物 近代建築における三大巨匠の一人、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(1876〜1959)。その作品群のうち、ニューヨークのグッゲンハイム美術館などアメリカ国内にある8件は、去年(2019年)世界遺産にも登録された。ライトは日本との関わりも深く、生涯最高傑作の一つとされる旧・帝国ホテルはその一部(玄関と入り口ロビー)は愛知県
もっとみる杉本博司『瑠璃の浄土』展を訪ねて (京都市京セラ美術館で〜10/4まで)
生まれ変わった「京都市京セラ美術館」
およそ3年間の改修期間を経たあと、本来なら今春にリニューアルオープンするはずだった京都市京セラ美術館。新型コロナ対策のため開館が遅れていたが、このほどようやくオープンした。6月下旬からは県外来場者も入館できるようになり、本格オープン。まずは新たに生まれ変わった京都市京セラ美術館と新型コロナ対策に配慮した入場方法から説明しておこう。
1933年(昭和8年)
一度は行ってみたい!『モザイクタイルの不思議なミュージアム』知られざる誕生秘話
田舎町に突如現れた、摩訶ふしぎな建築物
名古屋から車で1時間、自然に囲まれた田舎町にその不思議な建物は立っていた。岐阜県多治見市笠原町に立つ「多治見市モザイクタイルミュージアム」。見上げるほどの土の壁、小山を縦に切り取ったようだ。壁面にかわいい窓が並び、よく見ると山の上に木も植えられている。直感的に「これはトトロの家だ」と思った。自然とメルヘンが一体になったように見えたからだ。
高さ20メート
《新型コロナ》をめぐる差別はなぜ生まれるか?ハンセン病に学ぶ感染症と差別の因果
新型コロナウィルスの感染が広がる中、患者や家族、医療従事者に対する差別や偏見が顕在化している。報道されているだけでも、コロナ対策の最前線で働く医療従事者が子供の通園や通学を拒否されたり、感染の疑いがある一般市民の家に石が投げ込まれたり、家の落書きがされたというケースが伝えられている(三重県知事会見より)。またある県では県外から来る人たちの車に「来るな」という張り紙が貼られ、車を傷つけられるという
もっとみる映画「新聞記者」は事実か、フィクションか?純粋に楽しめる秀逸なドラマ (※ネタバレあり)
初ブログ。遅ればせながら、映画「新聞記者」を見た。主役を若手実力派の松坂桃李が演じるくらいのことは知っていたが、インディペンデントな会社が作ったマニアックな映画?くらいにしか思っていなかった。しかし、今年(2019年)度の日本アカデミー賞の最優秀作品賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞したのを知って(とても感動的な授賞式だった)映画館に出かけた。感想はとても見応えがあり、純粋に映画としてのクォリティ
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