元報道記者の一望千里

名古屋のCBCテレビで30年にわたり報道記者を務める。その間、海外支局長、デスク、ディレクターなどを歴任。コソボ独立、北朝鮮核問題、帰国後は東日本大震災、福島原発事故、ハンセン病差別など幅広く取材。戦後70年、伊勢湾台風特番などのドキュメンタリーも制作。旅、アート、歴史が趣味。

元報道記者の一望千里

名古屋のCBCテレビで30年にわたり報道記者を務める。その間、海外支局長、デスク、ディレクターなどを歴任。コソボ独立、北朝鮮核問題、帰国後は東日本大震災、福島原発事故、ハンセン病差別など幅広く取材。戦後70年、伊勢湾台風特番などのドキュメンタリーも制作。旅、アート、歴史が趣味。

最近の記事

映画『月』を見て。石井裕也監督が描く「人間の尊厳」。(※ネタバレなし)

心揺さぶられる衝撃  すごい映画に出会った。映画「月」。主演は宮沢りえ、磯村勇斗、二階堂ふみ、オダギリジョーら。スクリーンにエンドロールが流れ、劇場が明るくなっても席を立たない人が目立つ。筆者もその一人だった。あまりの衝撃に呆然として立ち上がれなかった。重いテーマだ。頭の中で自問自答を繰り返したが時間が経っても回収できず、3日後の10月22日(日)、名古屋・伏見ミリオン座で開かれた石井裕也監督の舞台挨拶にも出席し、再び鑑賞した。近年、稀に見る傑作映画だ。個人的には今年見た洋

    • 初公開!「関東大震災絵巻」に見る朝鮮人虐殺

       関東大震災から100年が経った。東京・新大久保にある「高麗博物館」で関東大震災の惨状を描いた貴重な絵巻が公開されていると聞き(2023年7月5日〜12月24公開)、名古屋から足を運んだ。ビルの7階にある小さな展示スペース。朝鮮半島出身の人たちの歴史を伝える展示物の中心に「関東大震災絵巻」は展示されていた。上下2巻で全長30メートルという大作。その一部に描かれているのが朝鮮人虐殺の場面だ。朝鮮の人に襲いかかる大勢の軍人や自警団。滅多刺しにした人から流れ出る鮮血。無造作に投げ捨

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         世界遺産である熊野古道を行ったついでに、くじらの町として知られる和歌山県太地町を訪ねた。この町を全世界に知らしめたのが、2009年に公開されたアメリカのドキュメンタリー映画「ザ・コーブ」だ。イルカの追い込み漁を潜入取材した作品はアカデミー賞を受賞したことで物議を醸した。広い入江(=Cove)がイルカの血で真っ赤に染まる映像は衝撃的だったが、当たり前のようにイルカ漁を続けてきた町民にとっては不本意な扱われ方だった。反捕鯨思想に偏りすぎている内容が「反日的」と批判され、上映禁止

        • 日本の美しい建築①ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)/兵庫・芦屋市

          芦屋に残る”フランク・ロイド・ライト”の贈り物            近代建築における三大巨匠の一人、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト(1876〜1959)。その作品群のうち、ニューヨークのグッゲンハイム美術館などアメリカ国内にある8件は、去年(2019年)世界遺産にも登録された。ライトは日本との関わりも深く、生涯最高傑作の一つとされる旧・帝国ホテルはその一部(玄関と入り口ロビー)は愛知県犬山市の博物館「明治村」で見ることができる。 フランク・ロイド・ライト(186

          杉本博司『瑠璃の浄土』展を訪ねて   (京都市京セラ美術館で〜10/4まで)

          生まれ変わった「京都市京セラ美術館」  およそ3年間の改修期間を経たあと、本来なら今春にリニューアルオープンするはずだった京都市京セラ美術館。新型コロナ対策のため開館が遅れていたが、このほどようやくオープンした。6月下旬からは県外来場者も入館できるようになり、本格オープン。まずは新たに生まれ変わった京都市京セラ美術館と新型コロナ対策に配慮した入場方法から説明しておこう。  1933年(昭和8年)に開館し、日本で最も古い公立美術館建築としての歴史を誇る京都市美術館。リニューア

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          岡田准一主演、映画「燃えよ剣」は動乱の幕末を生きた新選組の生々しい群像劇

          新型コロナウィルスの影響で、2020年5月の公開が延期された原田眞人監督、岡田准一主演の映画『燃えよ剣』をいち早く鑑賞した。素晴らしい出来栄えだった。一日も早い公開が待たれる。筆者(アラフォー世代)は中学生の頃、司馬遼太郎の「燃えよ剣」を初めて手に取って以来、30年以上にわたって新選組を愛し続けてきた。中でも鬼の副長・土方歳三については、ゆかりの地である京都や多摩、函館などに何度と足を運び、人生の師とも仰いできた。映画「燃えよ剣」は、その長年の想いに応える素晴らしい作品だった

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          一度は行ってみたい!『モザイクタイルの不思議なミュージアム』知られざる誕生秘話

          田舎町に突如現れた、摩訶ふしぎな建築物  名古屋から車で1時間、自然に囲まれた田舎町にその不思議な建物は立っていた。岐阜県多治見市笠原町に立つ「多治見市モザイクタイルミュージアム」。見上げるほどの土の壁、小山を縦に切り取ったようだ。壁面にかわいい窓が並び、よく見ると山の上に木も植えられている。直感的に「これはトトロの家だ」と思った。自然とメルヘンが一体になったように見えたからだ。 高さ20メートルの高い壁を見ながら、映画「ロード・オブ・ザ・リング」の小人が入るような入り口を

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          《新型コロナ》をめぐる差別はなぜ生まれるか?ハンセン病に学ぶ感染症と差別の因果

           新型コロナウィルスの感染が広がる中、患者や家族、医療従事者に対する差別や偏見が顕在化している。報道されているだけでも、コロナ対策の最前線で働く医療従事者が子供の通園や通学を拒否されたり、感染の疑いがある一般市民の家に石が投げ込まれたり、家の落書きがされたというケースが伝えられている(三重県知事会見より)。またある県では県外から来る人たちの車に「来るな」という張り紙が貼られ、車を傷つけられるという事件も起きている。ネット上では「自粛警察」と言う言葉も生まれた。メディアで報じら

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          映画「新聞記者」は事実か、フィクションか?純粋に楽しめる秀逸なドラマ (※ネタバレあり)

           初ブログ。遅ればせながら、映画「新聞記者」を見た。主役を若手実力派の松坂桃李が演じるくらいのことは知っていたが、インディペンデントな会社が作ったマニアックな映画?くらいにしか思っていなかった。しかし、今年(2019年)度の日本アカデミー賞の最優秀作品賞、主演男優賞、主演女優賞を受賞したのを知って(とても感動的な授賞式だった)映画館に出かけた。感想はとても見応えがあり、純粋に映画としてのクォリティーも非常に高いと感じた。主役に抜擢した韓国の女優シム・ウンギョンや松坂桃李ら、俳

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