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seiji_arita
2024年7月4日 23:39
「最後の言葉」沢山の記憶の積み重ねによって僕等の人生は成り立っている僕等は暗い空に浮かぶ雲の周りに希望の縁取りを探し求める頭上の暗雲の中に幾つもの願い事を書き連ねその裏側にあるはずの明るい輝きを放つ太陽を心に描く何処でもいいから遠くの国に行きたい君はそう言ったその言葉は僕の中に眠る僕自身の代弁でもありふたりは胸の中にある それぞれの暗雲と光を抱
2024年6月21日 15:24
「道化師の告白」現実を何も語らない事により 何かが語られている色彩を失くした平板な世が血を流し 人格の一部を欠損した歪な夜空が消えそうな月を映し出す感覚を喪失した星は輝き方を忘れる僕の固定された視界には道化師の告白が終わり無く文章化されて行く彼は決して真実を語らないモノクロの街で薔薇を売る女暗室での祝祭 完結された愛純文学とは無関係な風が真夜中を彷
2024年6月19日 22:14
「樹木の影」垂直な壁に映る樹木の影其処にはあるのは 自分では無い誰かの影か 幻想か言葉は投げかけられ消えてゆく並列的に並んだ美質と欠落が境界線を超え存在する其の延長線にあるものは樹木では無く私自身だった解析不能な特質は決して開かれる事は無い定規で線を引く様に綺麗な均整其れと同種の物を身体に纏う血肉にもならない言葉の羅列に埋もれてゆく私は存在の狂
2024年6月9日 21:33
「君に贈る詩」君は詩なんか読まない僕の書いた文字は透き通っていて君の瞳には映らない窓からは低くたれこめた暗い雲が見えたそうかもしれない 僕は口に出してそう言った僕がペンを持った瞬間に言葉は消えて無くなってしまう詩を読む様に独り言を呟く君は詩なんか読まない静かに雨が降りはじめたPhoto : Seiji Arita
2024年5月20日 12:12
仰ぎ見た杭の滝 凪潮の息吹が斧音に変わり乱脈を打つ無言の太陽に突き刺さる黒き羽根別れを告げた螺旋雲は戻れない刻の様乱立した黙礼が我に似る一律に同じ形の雨が降り続く其の類型を突き崩す力を有した風を待つ少なくとも雨粒の形など覚えてはいない其の極めて凡庸な色彩と形式を持つ輪郭は記憶に留めるに値しないひび割れた月に触れる指先夜空に綴る言葉は黙り続け
2024年5月16日 15:56
「透明な風」必要な言葉は何故だかいつも遅れて後からやって来るあの日 あの時僕等に欠けているものなんて何ひとつ無いそう君に伝えたかったきっと君は微笑んでくれただろう深い緑と青い空を持つ夏だけが其処にあった僕等はもう二度とこの場所に来る事は無いそして君に逢う事も定められた場所に向かうそれぞれの道を歩み続ける僕は一度だけ振り返る其処には形を持た
2024年5月15日 21:40
「夜を忘れた花」儚い程の細い血脈にも生きた赤い血が流れている何処までも繊細で美しい君の最後の声が空に消える熟考は深い沈黙を必要とし夜を忘れた花の傍には眠りと覚醒 現実と非現実の夢が横たわる風や水が流れる様な陰影が僅かに不揃いな図形に映り込む君は居なくなったけど 君はいつでも僕の傍に居る其処にある無言の想いが言葉にならない声になる喪失と喪失
2024年5月12日 13:26
深い混乱の中に均等なふたつの光の存在を探した失われて行く時間の感覚 ある種の衝動が頭上からずれ堕ちて来る僕は夢と想像の中に言葉を探す其れは誰か特定の人に向けられた言葉では無い其処に見える憂鬱な風に包まれた名前を持たない消えかかった田園風景其の僕の中にある無名の場所を埋める為の言葉だ疵痕も残さず切り裂いた刃 大量の現実の血が流されたはずだった夜
2024年5月11日 17:47
「黄色い月」春が終わりに近づいた夜 空気は漠然とした湿り気を帯び薄靄に包まれた黄色い月がふたりを見ていた僕の隣りで不規則に美しく揺れる君のスカートの裾 僕は自分を失ってしまうほど激しく君を求めていたはぐらかす様に微笑む君の唇に静かに指先で触れた少しの間の沈黙 其れは彼女の同意を意味している全てが再び現実の位相に服すまで彼女の長い睫毛が僕の心の
2024年5月11日 10:41
「車椅子のロージー」少しの乱れも無く調和した共同体 そんな夢の中にだけ花は咲く誰かが誇らしい気にそう言った無音の雷鳴と目に見えぬ雷光 其れが脳裏に焼き付いている僕と言う固有のただひとつの人格が名前を持たぬ混沌 未明の暗闇の中でかろうじて息をしている抽象的な命題を空に描き 頭は現実とは別の場所にある恵まれてるとか 恵まれて無いとか 魅力的な微笑みを浮
2024年5月1日 10:05
「水平線」果てしない偶然性が積み重なり今が形成される理論や整合的な説明は出来ない全ては其の偶然性に支配されている其れを必然と呼ぶのかもしれない其処には言葉に出来る何かは存在しない言葉に出来ないものの中に潜む自己規定幾つかの街が通り過ぎ 鏡の中にお前を見る深い夜と静けさが永遠に続き時を刻み命と死が交差する誰にも解き明かせない唯一が此処にある俺と
2024年4月22日 22:21
「小さな炎」僕の足元に寡黙な陽だまりを作り出す太陽時間は更に緩やかに流れる君は猫の様に暗い穴を覗き込んでいる其の先にあるものは君の瞳にしか映らないその暗い穴には深い暗示が隠されていた「今日死んでしまえば 明日は死なずにすむ」君はそう言葉にして囁く其処はいつまでも君が居る場所じゃない何度も君にそう呼び掛ける僕等はきっと何処かに行く事が出
2024年4月1日 08:53
「不動の月」花一輪 在りし日の君 香る春静かに添えた手のひら暗黒の雲に覆われた夜空にさえ音も無く浮かぶ不動の月あやかしの時は遠去かりあの日 夢見たふたりの旅其処に咲いていた小さな花は眠る事無く咲き続ける夜更けに恋をし君の名を呼ぶいつからか 君の言葉の中に愛を探してる
2024年3月31日 04:21
「月下の詩人と盲目の犬」大きな美質と大きな欠陥が背中合わせに存在する其処には見え透いた理論は無い疑問を背負ったまま僕等は今を歩き続けている一匹の盲目の犬何かに損なわれる事が無い様に僕は其の犬を抱きしめていたその失われた瞳を通して彼はこの世界に現れるそして彼の言葉が僕の意識の領域に着地する時間の歩みすら止まる気がしたソメイヨシノが香る時嘘しか