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#言葉

樹木の影 《詩》

樹木の影 《詩》

「樹木の影」

垂直な壁に映る樹木の影

其処にはあるのは 

自分では無い誰かの影か 幻想か

言葉は投げかけられ消えてゆく

並列的に並んだ美質と欠落が
境界線を超え存在する

其の延長線にあるものは

樹木では無く私自身だった

解析不能な特質は決して
開かれる事は無い

定規で線を引く様に綺麗な均整

其れと同種の物を身体に纏う

血肉にもならない言葉の羅列に
埋もれてゆく

私は存在の狂

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君に贈る詩 《詩》

君に贈る詩 《詩》

「君に贈る詩」

君は詩なんか読まない

僕の書いた文字は透き通っていて

君の瞳には映らない

窓からは低くたれこめた
暗い雲が見えた

そうかもしれない 

僕は口に出してそう言った

僕がペンを持った瞬間に
言葉は消えて無くなってしまう

詩を読む様に独り言を呟く

君は詩なんか読まない

静かに雨が降りはじめた

Photo : Seiji Arita

詩人の末路 《詩》

詩人の末路 《詩》

仰ぎ見た杭の滝 

凪潮の息吹が斧音に変わり

乱脈を打つ
無言の太陽に突き刺さる黒き羽根

別れを告げた螺旋雲は
戻れない刻の様

乱立した黙礼が我に似る

一律に同じ形の雨が降り続く

其の類型を
突き崩す力を有した風を待つ

少なくとも

雨粒の形など覚えてはいない

其の極めて凡庸な
色彩と形式を持つ輪郭は

記憶に留めるに値しない

ひび割れた月に触れる指先

夜空に綴る言葉は黙り続け

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透明な風 《詩》

透明な風 《詩》

「透明な風」

必要な言葉は何故だかいつも

遅れて後からやって来る

あの日 あの時

僕等に
欠けているものなんて何ひとつ無い

そう君に伝えたかった

きっと君は微笑んでくれただろう

深い緑と青い空を持つ

夏だけが其処にあった

僕等はもう二度と

この場所に来る事は無い

そして君に逢う事も

定められた場所に
向かうそれぞれの道を歩み続ける

僕は一度だけ振り返る

其処には形を持た

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夜を忘れた花 《詩》

夜を忘れた花 《詩》

「夜を忘れた花」

儚い程の細い血脈にも

生きた赤い血が流れている

何処までも繊細で美しい
君の最後の声が空に消える

熟考は深い沈黙を必要とし

夜を忘れた花の傍には

眠りと覚醒 

現実と非現実の夢が横たわる

風や水が流れる様な陰影が

僅かに不揃いな図形に映り込む

君は居なくなったけど 
君はいつでも僕の傍に居る

其処にある無言の想いが

言葉にならない声になる

喪失と喪失 

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共犯者 春を呼べ 《詩》

共犯者 春を呼べ 《詩》

深い混乱の中に
均等なふたつの光の存在を探した

失われて行く時間の感覚 

ある種の衝動が

頭上からずれ堕ちて来る

僕は夢と想像の中に言葉を探す

其れは誰か特定の人に
向けられた言葉では無い

其処に見える憂鬱な風に包まれた

名前を持たない
消えかかった田園風景

其の僕の中にある

無名の場所を埋める為の言葉だ

疵痕も残さず切り裂いた刃 

大量の現実の血が
流されたはずだった

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黄色い月 《詩》

黄色い月 《詩》

「黄色い月」

春が終わりに近づいた夜 

空気は漠然とした湿り気を帯び

薄靄に包まれた
黄色い月がふたりを見ていた

僕の隣りで不規則に美しく揺れる
君のスカートの裾 

僕は自分を失ってしまうほど

激しく君を求めていた

はぐらかす様に微笑む君の唇に

静かに指先で触れた

少しの間の沈黙 

其れは彼女の同意を意味している

全てが再び現実の位相に服すまで

彼女の長い睫毛が

僕の心の

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車椅子のロージー 《詩》

車椅子のロージー 《詩》

「車椅子のロージー」

少しの乱れも無く調和した共同体 

そんな夢の中にだけ花は咲く

誰かが誇らしい気にそう言った

無音の雷鳴と目に見えぬ雷光 

其れが脳裏に焼き付いている

僕と言う固有のただひとつの人格が

名前を持たぬ混沌 

未明の暗闇の中で
かろうじて息をしている

抽象的な命題を空に描き 

頭は現実とは別の場所にある

恵まれてるとか 恵まれて無いとか 

魅力的な微笑みを浮

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水平線 《詩》

水平線 《詩》

「水平線」

果てしない偶然性が積み重なり
今が形成される

理論や整合的な説明は出来ない

全ては其の偶然性に支配されている

其れを必然と呼ぶのかもしれない

其処には
言葉に出来る何かは存在しない

言葉に出来ないものの中に
潜む自己規定

幾つかの街が通り過ぎ 

鏡の中にお前を見る

深い夜と静けさが永遠に続き

時を刻み命と死が交差する

誰にも
解き明かせない唯一が此処にある

俺と

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小さな炎 《詩》

小さな炎 《詩》

「小さな炎」

僕の足元に

寡黙な陽だまりを作り出す太陽

時間は更に緩やかに流れる

君は猫の様に

暗い穴を覗き込んでいる

其の先にあるものは

君の瞳にしか映らない

その暗い穴には

深い暗示が隠されていた

「今日死んでしまえば 明日は死なずにすむ」

君はそう言葉にして囁く

其処はいつまでも

君が居る場所じゃない

何度も君にそう呼び掛ける

僕等はきっと

何処かに行く事が出

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不動の月 《詩》

不動の月 《詩》

「不動の月」

花一輪 

在りし日の君 

香る春

静かに添えた手のひら

暗黒の雲に覆われた夜空にさえ

音も無く浮かぶ不動の月

あやかしの時は遠去かり

あの日 夢見たふたりの旅

其処に咲いていた小さな花は

眠る事無く咲き続ける

夜更けに恋をし
君の名を呼ぶ

いつからか 

君の言葉の中に愛を探してる

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

月下の詩人と盲目の犬 《詩》

「月下の詩人と盲目の犬」

大きな美質と

大きな欠陥が背中合わせに存在する

其処には見え透いた理論は無い

疑問を背負ったまま

僕等は今を歩き続けている

一匹の盲目の犬

何かに損なわれる事が無い様に

僕は其の犬を抱きしめていた

その失われた瞳を通して
彼はこの世界に現れる

そして彼の言葉が

僕の意識の領域に着地する

時間の歩みすら止まる気がした

ソメイヨシノが香る時

嘘しか

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春の風 《詩》

春の風 《詩》

「春の風」

行き場を失くした

憧憬と忘れられない約束

夢の中に見た言葉にならない気持ち

時間は記憶の中で絡まり合う

僕等の心に刻印された時は

決して消える事は無い

泣きたいのに無理して微笑む君の顔

愛とか希望とかそんな言葉より 
君に逢いたい

心の空にある虹の欠片に触れた

春の風 

君の匂いがした

愛の言葉 《詩》

愛の言葉 《詩》

「愛の言葉」

何処まで行っても現実は付いてくる

自分の影と同じ様に

風が闇を斬る音

其の風は

僕の知らない所からやって来て

僕の知らない所に向かい
吹き過ぎてゆく

忘れかけた愛の言葉 

海の様に広いベッド

其処には用途を失った

言葉が雑然と散らばる