マガジンのカバー画像

したたかに生き愛を生むガイドブック

28
茶々から学ぶ、したたかな生き方
運営しているクリエイター

#母

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十七話 私が引き寄せた運命

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十七話 私が引き寄せた運命

私が引き寄せた運命

千姫が城外に連れ出された後、城の中でいくつも火の手が上がった。
それは、のろしのように見えた。
城の中にも内通者がいたのだろう。
彼らは火を放ち、私と秀頼の逃げ場をなくしどんどん追い詰める。
城に残っていた者達は慌てふためき、右往左往していた。

私は立ちあがって叫んだ。

「城の外に逃げ出したいものは、すぐ逃げだしなさい!
命を粗末にしてはいけません。
我らに追随する必要は

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十六話 心だけは、自分に正直に生きること

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十六話 心だけは、自分に正直に生きること

心だけは、自分に正直に生きること

自分の本当の気持ちが明らかになった私は、するべきことがあった。
背筋を伸ばし顔を上げ、秀頼と千姫のいる場所に行った。
徳川との最後の戦が始まってから徳川のルーツを持つ千姫は、周りから白い目で見られながらも気丈にふるまっていた。けれどこの日二人は、死を覚悟したように青ざめていた。彼女は自分が何を言われるのか、もう知っていただろう。うつむいてブルブル震える千姫の手を

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十五話 私を抱きなさい

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十五話 私を抱きなさい

私を抱きなさい

大阪城の外堀を埋める工事が始まった。
ところが工事が始まると外堀だけでなく三の丸、二の丸と、どんどん城に向かって、堀を埋めていくではないか!
これで大阪城は、丸裸だ。
その知らせを聞いた私は怒りのあまり、わなわなと震えた。すぐに抗議の使者を送り、家康に不服を申し立てたがみごとにスルーされた。
そして工事が終わると、難攻不落と言われた大阪城は攻められても何の手立ても打てない哀れな城

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十四話 そこに愛がある

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十四話 そこに愛がある

そこに愛がある

11月、徳川との戦いが始まった。
初めは徳川が有利だったが、真田丸でみなはよくがんばってくれた。
だが内部にいくつもの亀裂が入っていた。
スパイ、裏切り・・・・・・
仲間だと信じていた家来達の仕業に、秀頼の心は切り裂かれ日ごとに消耗していく。

秀頼は戦に負けることが怖いのではなく、状況で人の心が変わる様を目の当たりにするのを恐れた。私は秀頼に言った。
「秀頼それが当たり前です。

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

すべて自分が望み、引き寄せた現実

慶長19年8月、秀頼は秀吉の17回忌に京都の方広寺で大仏の開眼供養の準備をしていた。
5年の月日をかけ、大仏殿を再建した。
そして4月に出来上がった梵鐘に「国家安康」と記した。それを知った家康が吠えた。「これは家康の名前を分割したもので、豊臣は徳川家康の死を願っている」そう言いがかりをつけた。
家康は秀頼が成長するにつれ、彼に人望が集まるのを怖れていた。
何らか

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

子どもは、いつも親の期待に添って生きようとする

関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は、我が物顔で大阪城に入ってきた。
私達の君臨する城に堂々と入城する家康に腹が立ったが、秀頼のために怒りを押し隠し、丁重に接待した。
他の大名達の前で
「このたびの戦の勝利は、家康殿のおかげです」
と花を持たせた。

そして家康に杯を持たせ、酒を注いだ。
「ささ、家康殿、どうぞ、その杯を秀頼にお渡し下さい。」
家康は一

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

愛しすぎると人は・・・

秀吉という後ろ盾を失った私は、秀吉の遺言に従い秀頼と共に大阪城に移った。私は息子の生母、豊臣の母として誇り高い女王のように胸を張って入城した。秀吉亡き後のこの城こそ、私の城だ、という感覚があった。ようやく私は自分の根城を見つけた。だが女王はもう一人いた。一見穏やかな顔で私達を出迎えた寧々だ。秀吉は私に、自分の亡き後は寧々と手を取り合い秀頼を補佐するよう命じていた。あの女と

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

自分の存在価値を認める

三歳の秀頼と私は伏見城に移り、秀吉と暮らし始めた。この年、秀吉は自分が亡くなった後でも豊臣政権が盤石であるよう、秀頼に継承するためのバックアップ体制を整えた。
秀吉はいつも幼い秀頼を抱きかかえ、家来達との会議や彼らに命令を下した。秀吉なりの帝王学を、秀頼に肌身で学ばせていた。
秀頼は自然と上に立つものの器に育っていった。私はそれが何よりもうれしく、誇らしかった。

慶長3

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十話 無条件で愛される

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十話 無条件で愛される

無条件で愛される

天正17年5月27日、私は男子を出産した。

初めての出産は、時間がかかった。
身を八つ裂きにされるような痛みに、私はうー、うー、と獣のような声でうなり続けた。
気が遠くなるような痛みの中で
「母上はこれを3度も体験した」
と思うと、改めて母の強さと母を一人の女とし身近に感じた。

もうこれ以上いきめない、無理だ・・・・・・と思った瞬間、股間からズルリと赤子が出てくるのがわかっ

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第九話 本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第九話 本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

本当に欲しいものを、どれだけ自分に与えられる?

それから私は病気を理由に、しばらく秀吉と距離を置いた。子宮が受け取った子種がしっかり根付くよう、毎日布団の上に横たわった。
治長はなに事もなかった顔で、私に仕えている。彼は私の部屋の外で番人のように私を守り、控えている。襖一枚隔てた場所に治長がいる。呼べばいつでもそばに来る。それを考えると子宮がキュン、とうずく。あの夜の深い大きな波に飲まれたエクス

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第八話 女は楽器、それを奏でる男で音色は変わる

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第八話 女は楽器、それを奏でる男で音色は変わる

女は楽器、それを奏でる男で音色は変わる

男と女が褥をともにすること。sexするのは誰としても同じだと思っていた。
秀吉は30歳も年上でたくさんの側室もいるし、経験も豊富だ。
だから私は彼から与えられる閨のことが、男と女のすべてだと思っていた。治長は最初から、秀吉と違った。
治長は高価な青磁の器を扱うように、大切に私に触れる。
触れながら、触れられながら、わたしは幼い頃を思いだした。

同じ乳を飲

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第五話 野心と快感の扉

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第五話 野心と快感の扉

野心と快感の扉

秀吉は妻寧々の顔色を気にしながら、ちょくちょく私に会いに来た。
私は彼に私以外の女、つまり側室が数多くいることを知っていた。
その内の一人従姉の京極龍子は、初の夫の姉だ。
龍子は浅井の父の姉の娘だ。秀吉の寵愛を受けているが、彼女に嫉妬はない。だが浅井の血をひく女を二人もそばに置いているのは、彼が母を抱けなかった恨みから来ていると感じた。

その夜、布団の上で私はわざと無邪気なふり

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二話 愛されている自信がない

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二話 愛されている自信がない

愛されている自信がない

私は自分の名前が、すきではなかった。
「茶々」この名によい思い出など、ほとんどない。

私は父浅井長政と母お市の長女として生まれた。
初と江という妹達も生まれた。
妹の初と江は「浅井」も「織田」も背負わされることなく、自由だった。
でも母は長女の私だけに
「あなたの中に、浅井と織田の血が入っている。
なんとしても、その命を守りなさい」
と言い聞かせ育てた。あの頃はどうして

もっとみる
リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第一話生きて生きて、生き延びてきたのは、彼のためだけ

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第一話生きて生きて、生き延びてきたのは、彼のためだけ

生きて生きて、生き延びてきたのは、彼のためだけ

「淀様!もう火の手がすぐそこまで迫っています!」城は赤い火に包まれ、灰色の煙がどんどんこちらに近づいてくる。大野治長がすがるような目つきで私に言った。今、ここにいるのはほんの数人だけだが、誰も声を出さない。異様な静けさが私達を覆っている。
「そうか・・・もう、ここまでね」
私は息子、秀頼の顔を見上げた。
私に似て秀頼は背が高い。
そして私が母上から

もっとみる