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したたかに生き愛を生むガイドブック

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茶々から学ぶ、したたかな生き方
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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」最終話 後悔しないよう、生きて生きて生き抜いて

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」最終話 後悔しないよう、生きて生きて生き抜いて

後悔しないよう、生きて生きて生き抜いて

私があなたに伝えたいのは、自分を赦す、ということ。

思いが、運命を引き寄せる。
宿命と運命はちがうことを、あなたは知っている?

宿命は、私が浅井家の長女として父上と母上の娘に生まれてきたこと。
女性であること。
戦国時代に生まれてきたこと。
日本に生まれたこと。
変えられないものが、宿命。

運命は、自分の命を運ぶ流れ。
自分が決めた選択により、命が流

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十七話 私が引き寄せた運命

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十七話 私が引き寄せた運命

私が引き寄せた運命

千姫が城外に連れ出された後、城の中でいくつも火の手が上がった。
それは、のろしのように見えた。
城の中にも内通者がいたのだろう。
彼らは火を放ち、私と秀頼の逃げ場をなくしどんどん追い詰める。
城に残っていた者達は慌てふためき、右往左往していた。

私は立ちあがって叫んだ。

「城の外に逃げ出したいものは、すぐ逃げだしなさい!
命を粗末にしてはいけません。
我らに追随する必要は

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十六話 心だけは、自分に正直に生きること

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十六話 心だけは、自分に正直に生きること

心だけは、自分に正直に生きること

自分の本当の気持ちが明らかになった私は、するべきことがあった。
背筋を伸ばし顔を上げ、秀頼と千姫のいる場所に行った。
徳川との最後の戦が始まってから徳川のルーツを持つ千姫は、周りから白い目で見られながらも気丈にふるまっていた。けれどこの日二人は、死を覚悟したように青ざめていた。彼女は自分が何を言われるのか、もう知っていただろう。うつむいてブルブル震える千姫の手を

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十五話 私を抱きなさい

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十五話 私を抱きなさい

私を抱きなさい

大阪城の外堀を埋める工事が始まった。
ところが工事が始まると外堀だけでなく三の丸、二の丸と、どんどん城に向かって、堀を埋めていくではないか!
これで大阪城は、丸裸だ。
その知らせを聞いた私は怒りのあまり、わなわなと震えた。すぐに抗議の使者を送り、家康に不服を申し立てたがみごとにスルーされた。
そして工事が終わると、難攻不落と言われた大阪城は攻められても何の手立ても打てない哀れな城

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十四話 そこに愛がある

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十四話 そこに愛がある

そこに愛がある

11月、徳川との戦いが始まった。
初めは徳川が有利だったが、真田丸でみなはよくがんばってくれた。
だが内部にいくつもの亀裂が入っていた。
スパイ、裏切り・・・・・・
仲間だと信じていた家来達の仕業に、秀頼の心は切り裂かれ日ごとに消耗していく。

秀頼は戦に負けることが怖いのではなく、状況で人の心が変わる様を目の当たりにするのを恐れた。私は秀頼に言った。
「秀頼それが当たり前です。

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十三話 すべて自分が望み、引き寄せた現実

すべて自分が望み、引き寄せた現実

慶長19年8月、秀頼は秀吉の17回忌に京都の方広寺で大仏の開眼供養の準備をしていた。
5年の月日をかけ、大仏殿を再建した。
そして4月に出来上がった梵鐘に「国家安康」と記した。それを知った家康が吠えた。「これは家康の名前を分割したもので、豊臣は徳川家康の死を願っている」そう言いがかりをつけた。
家康は秀頼が成長するにつれ、彼に人望が集まるのを怖れていた。
何らか

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十二話 自分を束縛しているのは、自分

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十二話 自分を束縛しているのは、自分

自分を束縛しているのは、自分

妹の江の長女で、家康の孫娘でもある千姫。豊臣に嫁に入った千姫は秀頼にひかれ、私にあいさつに来た。

「お母様、どうぞよろしくお願いいたします」と頭を下げた七歳の千姫の愛らしさにみなは、ほぉ、とため息をもらした。私は秀頼の母として威厳を保ち

「千姫、これから豊臣のために尽くして下さい」と言った。千姫は神妙な顔でこっくりうなずいた。私と千姫のやりとりを、秀頼が少し心配

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十一話 子どもはいつも親の期待に添って生きようとする

子どもは、いつも親の期待に添って生きようとする

関ヶ原の戦いで勝利した徳川家康は、我が物顔で大阪城に入ってきた。
私達の君臨する城に堂々と入城する家康に腹が立ったが、秀頼のために怒りを押し隠し、丁重に接待した。
他の大名達の前で
「このたびの戦の勝利は、家康殿のおかげです」
と花を持たせた。

そして家康に杯を持たせ、酒を注いだ。
「ささ、家康殿、どうぞ、その杯を秀頼にお渡し下さい。」
家康は一

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第二十話 愛しすぎると人は・・・

愛しすぎると人は・・・

秀吉という後ろ盾を失った私は、秀吉の遺言に従い秀頼と共に大阪城に移った。私は息子の生母、豊臣の母として誇り高い女王のように胸を張って入城した。秀吉亡き後のこの城こそ、私の城だ、という感覚があった。ようやく私は自分の根城を見つけた。だが女王はもう一人いた。一見穏やかな顔で私達を出迎えた寧々だ。秀吉は私に、自分の亡き後は寧々と手を取り合い秀頼を補佐するよう命じていた。あの女と

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十九話 自分の存在価値を認める

自分の存在価値を認める

三歳の秀頼と私は伏見城に移り、秀吉と暮らし始めた。この年、秀吉は自分が亡くなった後でも豊臣政権が盤石であるよう、秀頼に継承するためのバックアップ体制を整えた。
秀吉はいつも幼い秀頼を抱きかかえ、家来達との会議や彼らに命令を下した。秀吉なりの帝王学を、秀頼に肌身で学ばせていた。
秀頼は自然と上に立つものの器に育っていった。私はそれが何よりもうれしく、誇らしかった。

慶長3

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十八話 運は強気なものに味方する

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十八話 運は強気なものに味方する

運は強気なものに味方する

日に日に、秀吉の拾への溺愛ぶりが増していった。鶴丸の時と同じように、いやそれ以上に秀吉は拾いを可愛がっている。

私も拾が、可愛くて愛おしくたまらない。
毎日我が子を抱いて自分の乳を与えるなど、鶴丸の時にはなかった。
乳を飲ます内、これが我が子、という愛着がますます深くなる。
乳はいくらでも湧いて出た。

私が拾に乳を飲ませている姿を、秀吉は目を細めうれしそうに見ていた

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十七話 これからも私についてきて

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十七話 これからも私についてきて

これからも私についてきて

私は生まれたばかりの赤子を抱きしめた。お湯で洗われピカピカになった、ふわふわしたあたたかい塊。この子は私の愛で命だ。それをもう一度手に入れた喜びと安堵で、泣きそうになった。その日から私は秀吉に言われた通り、乳母ではなく自分の乳を口に含ませた。赤子は、顔を真っ赤にし無心にゴクゴクと乳を吸う。その様子が、愛おしくてたまらない。そばで乳母の大蔵卿局も目を細め、うれしそうに見て

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十六話 欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十六話 欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

欲しいものを欲しいと望み手を伸ばすからこそ、与えられる

この時期、元号が天正から文禄に改元された。

もともと元号が変わるのは、天皇が譲位したり、災いを改めるためだった。だがこのたびの改元は、そうではない。
秀吉から秀次に関白の世襲をしたためだ。それはこれから天皇に変わり、武家が天下を支配する、と世間に知らしめるためだった。
まだ妊娠していない私はその現実に唇を噛み、辛い思いでただ眺めるしかなか

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リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十五話 子種をよこせ!

リーディング小説「生む女~茶々ってば~」第十五話 子種をよこせ!

子種をよこせ!

鶴丸を失った秀吉は、姉の息子秀次を養子に迎えることを私に告げた。私は「必ずまた子を産みますから、それは止めて下さい!」と嘆願したが、秀吉は耳を貸さなかった。早く妊娠して、豊臣の後継者の座を取り戻さなければ、と私は焦った。だが肝心の秀吉は鶴丸を失ったショックで男としての自信も失い、私の元に通うことも少なくなった。このままではいけない、と私は策を練った。

 翌日、私は秀吉と秀次、豊

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