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アクセスの多い記事

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全体ビュー(全期間)でアクセスの多い記事を集めました。アクセスの多い順に並べてあります。
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2024年4月の記事一覧

何も言わないでおく

何も言わないでおく

 今回は「簡単に引用できる短い言葉やフレーズほど輝いて見える」という話をします。内容的には、「有名は無数、無名は有数」という記事の続編です。

 前回の「名づける」の補足記事でもあります。

*「「神」という言葉を使わないで、神を書いてみないか?」

 学生時代の話ですが、純文学をやるんだと意気込んでいる同じ学科の人から、純文学の定義を聞かされたことがありました。

 ずいぶん硬直した考えの持ち主

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人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

人間椅子、「人間椅子」、『人間椅子』

 今回は「立体人間と平面人間」の続きです。それぞれが別の方向をむいた言いたいこと(断片)がたくさんあり、まとまりのない文章になっています。申し訳ありません。

 お急ぎの方は最後にある「まとめ」だけをお読みください。

人間椅子から「人間椅子」へ
 江戸川乱歩の『人間椅子』の文章は朗読に適していると思います。音読してすらすらと頭に入ってくる文体で書かれているのです。特に難しい漢語が使われているわけ

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「ここには何もない」という「しるし」

「ここには何もない」という「しるし」

space・空間・空白、sense・方向・意味、order・順序・序列
*「空白・区切り・余白」の捏造

 蓮實重彥『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』所収の「Ⅰ肖像画家の黒い欲望――ミシェル・フーコー『言葉と物』を読む」を読んでいて頭に浮ぶのは、英語の「space」と、その語義である「空間」と「空白」です。

 簡単に言うと、

・「空間」とは現実の立体に「ある」もの、または「感じられる」もの
で、

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名づける

名づける

 前回に引きつづき、今回も、蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』の読書感想文です。

 引用にさいしては、蓮實重彥著『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』(河出文庫)を使用していますが、この著作は講談社文芸文庫でも読めます。

*あとで名づける、とりあえず名づける

 蓮實重彥の『フーコー・ドゥルーズ・デリダ』を読んでいると、「名づける」、「命名する」、「名」という言葉が目につきます。目につく箇所

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読みやすさについて

読みやすさについて

 今回は、「読みにくさについて」に引き続き、執筆中の記事の一部を独立させて、先に投稿することにします。これは体調が良くないための措置で、全体を一気に書こうとして無理をしないようにとの配慮からです。

 現在執筆している記事のタイトル(仮題)は「sense・意味・方向、order・順序・序列、space・空間・空白」です。前回の「読みにくさについて」では「sense・意味・方向、order・秩序・序

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表、目、面

表、目、面

 今回の記事は、「立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)」と「「タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)」」の続きです。

 見出しのある文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。

表、表裏、裏表
 表。ひょう。おもて。あらわす。あらわれる――。

 表を分けてみると、このような言葉とイメージがあらわれてきます。

 いま私が興味を持ってい

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立体人間と平面人間

立体人間と平面人間

 今回の記事は、「立体、平面、空白(薄っぺらいもの・05)」と「「タブロー、テーブル、タブラ(『檸檬』を読む・02)」」の続きです。

◆立体と平面 自分には立体の時と平面の時があるような気がします。正確に言えば、自分を立体として意識している時と平面として意識している時があるのです。

 入浴中なんかは自分が立体だとつくづく感じます。なにしろ自分の体を自分の手を使って洗っているのです。自分の手の皮

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読みにくさについて

読みにくさについて

 ある記事を書こうとしていて、ある部分が長くなってきたので、そこだけを記事にすることにしました。以前なら多少長くなっても強引に記事にしたのですが、このところ体力が落ちているので、無理をせずに別の記事にします。

文章の特徴
 蓮實重彥の文章を読んでいて感じる特徴はいくつかありますが、なかでも私が目を惹かれるのは以下の四つです。

1)音声化できない文章の要素である約物の使用。

⇒「立体、平面、空

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音読不能文について

音読不能文について

「音読・黙読・速読」という連載(全三回)をしました。このシリーズをした理由の一つは「音読不能文」の存在を訴えたかったからです。

・「音読・黙読・速読(その1)」
・「音読・黙読・速読(その2)」
・「音読・黙読・速読(その3)」

音読不能文
 音読がしにくい文章から音読が不可能な文章までをひっくるめて、私は「音読不能文」と勝手に呼んでいるのですが、次のようなものをイメージしています。

・セン

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みんなでいっしょに見る(錯覚について・05)

みんなでいっしょに見る(錯覚について・05)

 江戸川乱歩の『押絵と旅する男』で私の目を惹くのは蜃気楼の描写です。この短編では本題に入る前の話として蜃気楼が出てきます。

 本題として出てくる幻の怪しさにも、まして怪しくも妖しくもあるのが蜃気楼なのですが、蜃気楼は環境と条件がそろえば誰もが見ることができる点が幻との大きな違いです。

 誰にも見える。その意味ではまことに平等で民主的な幻であり錯覚だと言えるでしょう。

 具体的に見てみます。

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見えないものを描く、見えないものが描く

見えないものを描く、見えないものが描く

 梶井基次郎の『交尾』は二部構成になっていますが、今回は「その一」について書きます。引用にさいして使用するのは、『梶井基次郎全集 全一巻』(ちくま文庫)です。

『交尾』は青空文庫でも読めます。

◆写実的な俯瞰の難しさ 上の引用文から、「その一」は物干し場を定点とした俯瞰だと分かります。

 語り手である「私」が物干し場から移動しない、しかも双眼鏡のたぐいを使うのでもないとすれば、「私」の目から

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とりあえず仮面を裏返してみる(断片集)

とりあえず仮面を裏返してみる(断片集)

 今回も断片集です。見出しのある各文章は連想でつないであります。緩やかなつながりはありますが、断章としてお読みください。今後の記事のメモとして書きました。

看板、サイン、しるし

 街を歩くと看板がやたら目に付きます。目に付くと言うよりも、こちらが無意識に探しているのかもしれません。無意識に物色しているとも言えそうです。

 たぶん、そのようにできているのでしょう。看板は人の目を惹いてなんぼだと

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音読・黙読・速読(その1)

音読・黙読・速読(その1)

 今回から三回に分けて「音読・黙読・速読」という連載をします。

黙読しやすい文章
 漢字が適度に使われている文章は黙読しやすい気がします。読むというよりも、見て瞬間的に意味を取るのに漢字が適しているのは、もともとが象形文字だったからでしょうか。

 形を音に変換してその意味を理解するのではなく、形で直接意味が理解される回路が頭の中にできているように思えます。

 フォトリーディングという言葉を聞

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あやしい動きをするもの

あやしい動きをするもの

 今回は小話っぽい文章を二つ投稿します。そのうちの「抽象を体感する、具象を体感する」は「【小話集】似ている、そっくり、同じ」に収録したものです。少しだけ加筆しました。

「【小話集】似ている、そっくり、同じ」は、かなり盛りだくさんな記事なのですが、これまでのアクセス数(全期間・全体ビュー)がいちばん多かったものです。よろしければお読みください。

 この記事は新顔の「人間椅子、「人間椅子」、『人間

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