乃木ひかり

毎日の読書と料理に楽しみを見つけたい。 エッセイ・奇祭・小説きままに記事を書き続けたい

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固定された記事

【ショートショート】鶏

 ある日曜の朝早くに南北に延びる家の前の道を歩いていると、何メートルか先に一羽の鶏が見えた。コッコッコッという鶏の鳴声が、わずかながら耳に届いた。  私の家は決…

乃木ひかり
1か月前
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【ショートショート】彼女の王国

「やっぱりこの家が一番落ち着く」  と彼女はよく言っていた。この家には彼女の好きな椅子やテーブル、絨緞、ベッドがある。本棚には彼女の好きな作家の本がぎっしりと詰…

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挫折した男の大仕事!佐々木喜善『聴耳草子』

遠い昔の話のようだが、どこか身近に感じるのが昔話の魅力の一つだろう。 今でも多くの昔話が絵本になっているので、誰しもお気に入りの一つ二つあるのではないだろうか? …

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佐渡に金山を見にいかない。その③

今回の記事は佐渡「つぶろさし」編の関連記事となっております。 羽茂まつりでは神社行事の他にも、地区内イベントとして小学生みこしや幼児みこし、中学生のおけさ流しや…

乃木ひかり
10日前
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【ショートショート】行先

 どこまで続くか分からない、暗く淋しい夜道を私は歩いていた。  道、と言えるだろうか。私の前に何人も、何人もの人が道でない道を歩いて踏み固め、それが次第に道の形…

乃木ひかり
2週間前
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【ショートショート】夕焼け

 コンクリート製の階段を勢いよく上って行く。階段の踊り場に出ると、私は後ろをちらりと見た。誰も来ていない。先生にも見られていない。私は溜息をつくと、また一歩屋上…

乃木ひかり
3週間前
80

雪のまち

 雪の匂いが好きだ。どこまでも透明で、それでいて少し刺激のあるあの涼やかな匂い。関西にいた頃、雪の匂いがわかるなんてすごいね、と驚かれたことがある。誰でもわかる…

乃木ひかり
3週間前
80

佐渡に金山を見にいかない。その②

前回の記事はこちらです。  その土地に伝わる伝統芸能。同じ名前でも地区によって舞い方・衣装が変わってくることが本当に面白い。今回はさらに二つの「つぶろさし」を紹…

乃木ひかり
4週間前
73

窓際入口ゴミ箱近く

 一人で外食に行くときはなるべく窓際入口ゴミ箱近くに座るようにしている。マクドナルドやチェーン店なんかでその位置に座れれば大変良い。それもお昼、一番忙しいであろ…

乃木ひかり
1か月前
64

佐渡に金山を見に行かない。その①

 日本各地のお祭りを見てみようと思い、その第一回となったのが佐渡「つぶろさし」だ。数年前に行ったのだが、忘れないうちに当時の記録と記憶を掘り起し書き進めようと思…

乃木ひかり
1か月前
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好き嫌いしてはいけません、と彼女は言った

 新生活が始まったということで昔々の話、保育所に通っていた頃のことを思い出して書こうと思う。いろいろなことが断片的に思い出せるが、その中でもどうしても忘れられな…

乃木ひかり
1か月前
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虫の声を聴く女性! 川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』

「法医昆虫学」と聞いてどんなことを想像するだろうか?  普段、何事にも巻き込まれずに生活していればまず聞くことはない言葉だろう。日本国内では特にそうだ。  今日…

乃木ひかり
1か月前
56

【ショートショート】祖母の家

 私の祖母の家は田舎にある。何車線もあるような道路が通っているわけでもなく、周りはただ山と田んぼが広がるばかりだ。自然に囲まれた祖母の家は日当たりも良く、遊びに…

乃木ひかり
1か月前
65
【ショートショート】鶏

【ショートショート】鶏

 ある日曜の朝早くに南北に延びる家の前の道を歩いていると、何メートルか先に一羽の鶏が見えた。コッコッコッという鶏の鳴声が、わずかながら耳に届いた。

 私の家は決して田舎にあるわけではない。家の前はバスも通る二車線道路で、交通量も決して少なくはない。そんな道を、どういうわけか鶏が歩いているのだ。

 目に見えない誰かに首を上げたり下げたりしながら歩く礼儀正しい彼は、しっかり歩道を歩いているようだっ

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【ショートショート】彼女の王国

【ショートショート】彼女の王国

「やっぱりこの家が一番落ち着く」
 と彼女はよく言っていた。この家には彼女の好きな椅子やテーブル、絨緞、ベッドがある。本棚には彼女の好きな作家の本がぎっしりと詰まっている。ベッドの枕元にはいつも、オオハシのぬいぐるみが彼女の帰りを待ち切れないというように、目をキラキラと光らせてちょこんと座っている。

 好きな物に囲まれた彼女の王国。そこに彼女は死んで帰って来た。何度も何度も私や看護師に、家へかえ

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挫折した男の大仕事!佐々木喜善『聴耳草子』

挫折した男の大仕事!佐々木喜善『聴耳草子』

遠い昔の話のようだが、どこか身近に感じるのが昔話の魅力の一つだろう。
今でも多くの昔話が絵本になっているので、誰しもお気に入りの一つ二つあるのではないだろうか?

かつて「日本のグリム」と称された男がいた。
佐々木喜善である。
今日は彼の集大成とも言える本「聴耳草紙」を見てみようと思う。

佐々木喜善~日本のグリムと呼ばれた男~

 その土地の風習や風俗、習慣や伝説、民話、民謡、家具家屋など古くか

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佐渡に金山を見にいかない。その③

佐渡に金山を見にいかない。その③

今回の記事は佐渡「つぶろさし」編の関連記事となっております。

羽茂まつりでは神社行事の他にも、地区内イベントとして小学生みこしや幼児みこし、中学生のおけさ流しや総おどりが行われている。この日は学校も休みになるようで、相当な力の入れようだ。

そんな中、商工会前広場や陶芸センターの駐車場では大道芸が行われていた!全ての方を見ることは時間の都合で出来なかったのだが間近で見るとやはり面白い。普段大道芸

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【ショートショート】行先

【ショートショート】行先

 どこまで続くか分からない、暗く淋しい夜道を私は歩いていた。

 道、と言えるだろうか。私の前に何人も、何人もの人が道でない道を歩いて踏み固め、それが次第に道の形を成していった、そう言った方が適当だろう。地面は砂利と土でデコボコしている。長く歩いた私は、次第に足の痛みを感じ始めていた。

 辺りには建物らしきものは何もない。あるものといったら葉を落とし、細い枝先を毛細血管のように無駄に辺りに伸ばし

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【ショートショート】夕焼け

【ショートショート】夕焼け

 コンクリート製の階段を勢いよく上って行く。階段の踊り場に出ると、私は後ろをちらりと見た。誰も来ていない。先生にも見られていない。私は溜息をつくと、また一歩屋上へ向かって歩き始めた。心臓の音がいつもよりよく聞こえる。階段を急いで駆けあがったことも手伝っていつもより鼓動が早い。それだけじゃない。私は今、きっと緊張している。さっきから溜息だか、深呼吸だか、息を大きく吐き出しては吸うことの繰り返しだ。そ

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雪のまち

雪のまち

 雪の匂いが好きだ。どこまでも透明で、それでいて少し刺激のあるあの涼やかな匂い。関西にいた頃、雪の匂いがわかるなんてすごいね、と驚かれたことがある。誰でもわかると思っていた雪の匂い。それを分からない人がいるということに驚き、そして少し寂しくもあった。

 新潟の冬期で晴れ間を見ることはとてもめずらしい。とにかく曇天。毎日のように曇り空が続き、晴れたと思い窓から外を眺めると数分後には吹雪になっている

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佐渡に金山を見にいかない。その②

佐渡に金山を見にいかない。その②

前回の記事はこちらです。

 その土地に伝わる伝統芸能。同じ名前でも地区によって舞い方・衣装が変わってくることが本当に面白い。今回はさらに二つの「つぶろさし」を紹介していきたい。

二人の鬼が舞う! 鬼舞つぶろさし・草刈神社

 13時50分からは村山地区に伝わる「鬼舞つぶろさし」の登場だ。
こちらは文禄のころ村山の藤七という人物が京都へ赴き祇園祭で習得して来たという。こちらは「草刈神社」に奉納さ

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窓際入口ゴミ箱近く

窓際入口ゴミ箱近く

 一人で外食に行くときはなるべく窓際入口ゴミ箱近くに座るようにしている。マクドナルドやチェーン店なんかでその位置に座れれば大変良い。それもお昼、一番忙しいであろう時間帯だ。

 入口からは人がひっきりなしに出入りするしその度にジッと見られている気がする。ガラス窓越しの向こうからもなんだか見られている気がする。食べ方を見て笑われている気がするし、私が注文したものを見て「ひとりでそんなに食べるのかよ!

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佐渡に金山を見に行かない。その①

佐渡に金山を見に行かない。その①

 日本各地のお祭りを見てみようと思い、その第一回となったのが佐渡「つぶろさし」だ。数年前に行ったのだが、忘れないうちに当時の記録と記憶を掘り起し書き進めようと思う。

 私は佐渡島の近くに住んでいながら、佐渡のことをほとんど知らない。佐渡のことについて訊かれてもパッと思いつくのは「金山・トキ・たらい舟」程度のことで、日本地図をみながら「案外大きいなぁ」とかそんな間の抜けたことしか口から出てこない。

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好き嫌いしてはいけません、と彼女は言った

好き嫌いしてはいけません、と彼女は言った

 新生活が始まったということで昔々の話、保育所に通っていた頃のことを思い出して書こうと思う。いろいろなことが断片的に思い出せるが、その中でもどうしても忘れられないことがある。それは給食だ。

 私の座っているテーブルから一人、また一人と席を離れていく。私はその日のごはん、とりわけそのうちの一つと睨み合っていた。

 レバーのケチャップ炒めだ。

 私はどうしても肉や魚が好きになれなかった。野菜の好

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虫の声を聴く女性! 川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』

虫の声を聴く女性! 川瀬七緒『法医昆虫学捜査官』

「法医昆虫学」と聞いてどんなことを想像するだろうか?

 普段、何事にも巻き込まれずに生活していればまず聞くことはない言葉だろう。日本国内では特にそうだ。

 今日紹介する本はそんな「法医昆虫学者」が主人公の本だ。今私の手元にある文庫の帯には「『聴こえざる声』を聴く女」と書いてある。なんだか危険な香りがプンプンするではないか。いったいどんな小説なのだろうか?

「川瀬七緒」ってどんな人?

 川瀬

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【ショートショート】祖母の家

【ショートショート】祖母の家

 私の祖母の家は田舎にある。何車線もあるような道路が通っているわけでもなく、周りはただ山と田んぼが広がるばかりだ。自然に囲まれた祖母の家は日当たりも良く、遊びに出かけては庭が見渡せる縁側で昼寝をしたものだった。

 祖母はいつもひじ掛け椅子に座りにこにこと笑っていた。私が祖母の商売道具である白粉で床を汚して悪戯をしたり、金髪が美しい西洋人形の髪の毛をおかっぱ頭にして遊んだりしても笑って許してくれる

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