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【2022〜23年版】なぞりのつぼ −140字の小説集−

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読めば読むほど、どんどんツボにハマってく!? 大体コメディ、その他もろもろのオールジャンル140字小説・全480作品を収録! 笑い、足りてる? ※無断転載は原則禁止です。台本等… もっと読む
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記事一覧

140字小説【食べたことのないもの】

140字小説【食べたことのないもの】

「お待たせしました。こちら、お客様が《まだ食べたことのないもの》になります」
「なるほど、確かにこのような料理は初めてです。じゃあ一口……うんまっ!?」
「ではお下げします」
「えっ、ちょっ……何で!?」
「たった今、お客様が《食べたことのあるもの》になりましたので」
「そんな殺生な……」

140字小説【恐竜の朝ごはん】

140字小説【恐竜の朝ごはん】

「それで、最後は主人公が命がけで恐竜の卵を救うっていう話なんですけど……」
「なるほど……うん、斬新で面白いんじゃないの? とくにこの『卵がけで命を救う』ってところとかさ」
「えっ? ……あっ!? いや、それはただの誤字――」

 ――こうして僕の初連載作品は《恐竜の朝ごはん》になった。

140字小説【不景気】

140字小説【不景気】

「パンがない? ならばケーキを食べればよいではないか!」
「お言葉ですがマリー様、それはいくらなんでも無茶が過ぎるというものではございませんか? なんせ世の中は今、大変不景気ですから……」
「不ケーキ? 無茶? ケーキがなければ紅茶もないと申すのか?」
「あながち間違いではないですね」

140字小説【一人前】

140字小説【一人前】

「これであとは、ひと煮立ちさせて……っと」
「へぇ〜、私より料理上手くなったんじゃない?」
「いやいや、まだまだ母さんほどじゃないよ。だけどいつかは母さんを楽にさせてあげたいとは思ってるからさ」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ。できれば『ひと煮立ち』より『ひとり立ち』してほしいけどねぇ」

140字小説【掴みどころ】

140字小説【掴みどころ】

「お待たせしました」
「来た来た……あれ、スプーンは?」
「こちら本場仕様となっておりますので、素手でお楽しみいただきます」
「『郷に入っては郷に従え』ってヤツか。仕方ない、それじゃあ……って、熱っ!? これじゃ熱くて掴めないよ!!」
「そりゃ《掴みどころのないカレー》でございますから」

140字小説【ナビゲーション】

140字小説【ナビゲーション】

《この先、右折です》

「わっ、喋った!?」
「ああ、カーナビね。私たちを道案内してくれてるんだよ」
「カーナビ! カーナビ!」

 後部座席にて、初めて見る物に興奮気味の我が子。
 と、その様子に微笑みながら運転する我が夫……

「あらアナタ、ハーナゲ出てない?」
「鼻毛?」
「ごめん、何でもない」

140字小説【負けられない戦いがある】

140字小説【負けられない戦いがある】

 余った給食のプリンを賭けたジャンケン。何としても勝ち取りたい俺は、グーでもありチョキでもありパーでもある、いわゆる《最強の型》というヤツを繰り出してやった。

 すると相手もまた中指を突き立てるという、これまた斬新な型を繰り出してきた。

 ……勝敗はさておき、とりあえず心が傷ついた。

140字小説【不特定多数】

140字小説【不特定多数】

「君、いつもポテト頼むよね」
「うん。だってここのポテト、他の店と違って《不特定多数》なんだもん」

 ……ん? 不特定多数?

 確かにここのポテトは他の店より多めかもしれない。でも、そもそもポテトは何本も入っているものだし、それは他の店とて同じ――

 ――あっ、そうか。《太くて多数》ね。

140字小説【おかみおかきおかぴ】

140字小説【おかみおかきおかぴ】

「あらためまして私が当旅館の女将です。で、こちらがご当地キャラクターのオカピで、あとこちらが名物のおかきです」
「ああ、はい。あの……おかきさん」
「私は女将です」
「あっ、すいません女将さん」
「ヤダもう、そちらはオカピですよ」
「すいません、似てるもので……」
「顔が?」
「いや、名前が」

140字小説【鬼リピ】

140字小説【鬼リピ】

 最近寝不足気味なので、ヒーリングミュージックを取り入れてみた。

 寝る前に早速流してみる。すると心地よい音色を聴いているうちに、だんだんウトウトしてきた。

 よし、これなら眠れそうだ……おっと、その前に音楽切っておこう。

 その動作のために眠気が吹き飛び、再びイントロから流れ始めた。

140字小説【業界用語】

140字小説【業界用語】

「ちっ、即死か……」
「窒息死?」
「違ェよ! どう見ても車に轢かれてるだろうが!! それよりお前、ホシは?」
「ほし?」
「ホシっつったら『犯人』に決まってるだろ!!」
「ああ、ホシ……えっ? 轢き逃げ犯の名前、『保志』っていうんですか? 先輩スゲぇ! そんなのいつ分かったんですか!?」

140字小説【ツマミ出された夫】

140字小説【ツマミ出された夫】

 小腹が空いたので、冷蔵庫のあり合わせでツマミを作った。とりあえず倹約家な妻にはバレぬようにせねば。

 しかしその十数分後、風呂から上がった妻が小腹を空かせ、ツマミを作った。なぜか俺と同じ材料で、俺の分まで。

「あれ? 何で……」
「良い残り香がしたから」

 こうして俺はツマミ出された。

140字小説【転職】

140字小説【転職】

「こんにちは! こちらではアナタの経験値と引き換えに、レベルアップやジョブチェンジを行うことができます。本日はどういったご用件でしょうか?」
「あの〜、勇者に転向したいんですけど」
「すみません、現在のアナタの経験値では遊び人くらいしか……」

 ……こうして俺は、めでたく遊者になった。

140字小説【愛のムチ】

140字小説【愛のムチ】

「授業中に早弁とは何事ですか!? 廊下に立ってなさい!!」
「無理です」
「無理じゃありません!」
「いや無理ですね、もう全部食べ終わったし。大体オカズもなしに勃たせるとか勘弁してくださいよ」
「つべこべ言わないの! どうしても立たないというのなら、先生が立たせてあげる」
「……えっ!?」