三田主水

小説から漫画、映像作品からゲームその他諸々、時代伝奇について何でも語る伝奇時代劇アジテ…

三田主水

小説から漫画、映像作品からゲームその他諸々、時代伝奇について何でも語る伝奇時代劇アジテーターです。文庫解説などお仕事もします。 主な文庫解説: 『一鬼夜行 鬼が笑う』(小松エメル)『暗夜鬼譚 春宵白梅花』(瀬川貴次)『渦中 辻番奮闘記』(上田秀人)『震雷の人』(千葉ともこ)

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  • よりぬき伝奇さん

    これまでこのnoteに掲載した記事のうち、特におすすめの作品に関するものについて、よりぬいています。

記事一覧

固定された記事

自己紹介です

 三田主水(みた もんど)と申します。noteは少し前から触っていましたが、ちょっと本腰を入れてみたいと思い、振り返りも兼ねて自己紹介させていただきます。 プロフィ…

三田主水
3か月前
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梶川卓郎『信長のシェフ』第37巻 未来の料理が伝える無限の可能性の世界へ

 連載開始から13年、37巻にして、ついに物語が終幕を迎えます。ケンの奮闘虚しく、ついに起きてしまった本能寺の変。その一方で生まれた大きな歴史の変化は、この先どのよ…

三田主水
17時間前
3

霜島けい『うろうろ舟~瓢仙ゆめがたり~』 稼業と酔狂と 二人が追う怪談の真実

 実話怪談がブームとなって久しいですが、いつの世も、人は人が語る怪談に強く惹かれるものなのでしょう。本作はそんな江戸の怪談師・お伽屋の銀次と、この世ならざるモノ…

三田主水
3日前
5

ゾンビ時代小説まとめ

はじめに 『歴屍物語集成 畏怖』が発売されたこともあり、ここで自分のとこのブログでこれまでに取り上げたゾンビ時代小説を振り返ってみるのもそれなりに有益(?)か…

三田主水
11日前
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『歴屍物語集成 畏怖』 歴史の中でのゾンビと人間を描く気鋭のアンソロジー

はじめに 様々な作家と作品に巡り会えるアンソロジーという形式は胸がときめくものですが、それが現在の、そしてこれからの歴史小説を背負う面々の作品集とくれば見逃せ…

三田主水
11日前
3

6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール

 もう今年も半分近くが過ぎてしまう――そんな事実に愕然としつつ、月に一度の楽しみである新刊情報に目を向ければ、6月は特に小説が大変な充実ぶり。5月の寂しさが嘘のよ…

三田主水
13日前
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『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第2話「トドカヌオモイ」

第1話の紹介はこちら  何だかミュージカルの一場面を思わせるダンスシーンが入るOP(前回はEDに流れましたが)を経て始まった今回、第一話がプロローグだとすれば、物語…

三田主水
3週間前
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安田剛士『青のミブロ』第13巻 芹沢鴨が託した願いと呪い

 秋からアニメの放送を控え、そして連載の方では第二部「新選組編」スタートと、乗りに乗っている『青のミブロ』、この単行本第13巻では、芹沢暗殺編がクライマックスに突…

三田主水
3週間前
5

『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第1話「運命の出会い」

 テレビ朝日の「シン・時代劇」なる枠で、手塚治虫の『新選組』を原作とした作品が放送されると知ったのは今年の一月だったかと思いますが、ついにこの四月末から放送がス…

三田主水
1か月前
3

夢枕獏『月神祭』 豪傑王子の冒険譚 夢枕流ヒロイックファンタジー

 現在映画『陰陽師0』が公開されている夢枕獏の『陰陽師』シリーズ――その遠い遠い源流といえるかもしれない初期作品群を一冊に収録したのが、この『月神祭』です。古代…

三田主水
1か月前
5

『妖雲里見快挙伝』完結篇

 新東宝版・南総里見八犬伝である『妖雲里見快挙伝』、前篇に続いて完結篇が公開されました。馬加大記と網乾左母二郎の奸計によって一度は滅ぼされた里見家。はたして伏姫…

三田主水
1か月前
2

白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?

 毎回ユニークな作品が登場する『このミステリーがすごい!』大賞、第22回の受賞作は、何と紀元前1300年代後半の古代エジプトが舞台。それも探偵にして被害者は、自分が死…

三田主水
1か月前
3

夕木春央『サロメの断頭台』 作者一流のホワイダニットの先に待つ罪と罰

 『方舟』『十戒』で知名度を大きく上げた作者の大正ミステリ、蓮野&井口シリーズの第三弾であります。思わぬところから発見された井口の未発表の贋作。その犯人を探す二…

三田主水
1か月前
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木下昌輝『剣、花に殉ず』 剣と友情に生きた男が最後に辿り着いた場所

 これまで宮本武蔵を題材とした長編を二篇発表してきた作者が、その武蔵が最後に立ち会ったという剣豪・雲林院弥四郎を主人公として描く剣と友情の物語であります。剣の名…

三田主水
1か月前
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田中文雄『髑髏皇帝』 後醍醐帝の魔に挑む少年二人、足利直冬と北条時行!

 足利尊氏の庶子・直冬、そして北条高時の遺児・時行が、後醍醐天皇に憑いた奇怪な魔物と対峙する時代ホラー長編です。尊氏に都を追われ、吉野に逼塞する後醍醐天皇の前に…

三田主水
1か月前
5

滝沢志郎『エクアドール』 海を越える同胞愛と、明日に踏み出す人々の物語

 中世の琉球王国に始まり、東南アジアへと展開していく、希有壮大にして爽快な海洋冒険ロマン――琉球を外敵から守るため、ポルトガル人から新型兵器を手に入れんとする琉…

三田主水
1か月前
2
自己紹介です

自己紹介です

 三田主水(みた もんど)と申します。noteは少し前から触っていましたが、ちょっと本腰を入れてみたいと思い、振り返りも兼ねて自己紹介させていただきます。

プロフィール伝奇時代劇アジテーター、書評家

 小説・漫画は言うに及ばず、ゲームからアニメ、古典芸能や演劇等々、時代伝奇に関することなら何でも語ります。これまで18年以上、書評を中心にしたブログ「時代伝奇夢中道 主水血笑録」を毎日更新してきま

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梶川卓郎『信長のシェフ』第37巻 未来の料理が伝える無限の可能性の世界へ

 連載開始から13年、37巻にして、ついに物語が終幕を迎えます。ケンの奮闘虚しく、ついに起きてしまった本能寺の変。その一方で生まれた大きな歴史の変化は、この先どのような結末をもたらすのか――?
(この先、できるだけネタばらしはしないように努力します――できる範囲で)

 光秀の挙兵の理由を理解し、本能寺の変を未然に防ぐべく奔走するケンと、その動きを察知した光秀――挙兵を目前に、二人の間で繰り広げら

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霜島けい『うろうろ舟~瓢仙ゆめがたり~』 稼業と酔狂と 二人が追う怪談の真実

 実話怪談がブームとなって久しいですが、いつの世も、人は人が語る怪談に強く惹かれるものなのでしょう。本作はそんな江戸の怪談師・お伽屋の銀次と、この世ならざるモノを視る力を持つ医者・瓢仙が、様々な怪談の背後の真実を追う連作集です。

 「お伽屋」を自称し、この世の不思議や奇怪な事件を集めては物語に仕立て上げ、好事家に売りつける青年・銀次。そんな彼がお得意先の一人である商人の嘉兵衛から依頼されたのは、

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ゾンビ時代小説まとめ


はじめに 『歴屍物語集成 畏怖』が発売されたこともあり、ここで自分のとこのブログでこれまでに取り上げたゾンビ時代小説を振り返ってみるのもそれなりに有益(?)かな、ということで、ゾンビ時代小説に関する過去記事まとめです。

 正直なところ、自分のブログの過去記事のまとめというのは気が引けるものがありますが、そこそこ長期間運営しているからにはそれなりの蓄積があるもの。少なくとも長編についてはこれまで

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『歴屍物語集成 畏怖』 歴史の中でのゾンビと人間を描く気鋭のアンソロジー

『歴屍物語集成 畏怖』 歴史の中でのゾンビと人間を描く気鋭のアンソロジー


はじめに 様々な作家と作品に巡り会えるアンソロジーという形式は胸がときめくものですが、それが現在の、そしてこれからの歴史小説を背負う面々の作品集とくれば見逃せません。それもテーマがゾンビ、つまり生ける屍者の物語とくればなおさら!

 そんな本書に参加しているのは、矢野隆・天野純希・西條奈加・蝉谷めぐ美・澤田瞳子――いずれもデビュー十数年、蝉谷めぐ実に至ってはわずか四年という気鋭のメンバー。それぞ

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6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール

6月の時代伝奇アイテム発売スケジュール

 もう今年も半分近くが過ぎてしまう――そんな事実に愕然としつつ、月に一度の楽しみである新刊情報に目を向ければ、6月は特に小説が大変な充実ぶり。5月の寂しさが嘘のような、6月の時代伝奇アイテム発売スケジュールです。

小説新刊

 というわけで先月との差にちょっと驚いてしまうのが6月の文庫小説のラインナップですが、まず新作ではシリーズ第三弾にして完結編の『剣樹抄 インヘルノの章』(冲方丁 文春文庫)

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『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第2話「トドカヌオモイ」

第1話の紹介はこちら

 何だかミュージカルの一場面を思わせるダンスシーンが入るOP(前回はEDに流れましたが)を経て始まった今回、第一話がプロローグだとすれば、物語が本格的に動き出した感があります。といっても前半はキャラクター紹介編といった趣きで、南無之介が丘十郎に教える形で、先輩隊士たちの説明をするのがメインとなります。
 前回も触れましたが、実在の隊士たちは、その典型的なイメージを踏まえてビ

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安田剛士『青のミブロ』第13巻 芹沢鴨が託した願いと呪い

 秋からアニメの放送を控え、そして連載の方では第二部「新選組編」スタートと、乗りに乗っている『青のミブロ』、この単行本第13巻では、芹沢暗殺編がクライマックスに突入します。ついに寝所に踏み込んだ土方たちを、今や遅しと待ち構えていた芹沢。いま、芹沢を中心に様々な想いが交錯します。

 新見錦の切腹をきっかけに、芹沢暗殺へと突き進んでいく近藤一派。しかし宴席の帰りを襲撃すべく準備された土方らの策は失敗

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『君とゆきて咲く~新選組青春録~』 第1話「運命の出会い」

 テレビ朝日の「シン・時代劇」なる枠で、手塚治虫の『新選組』を原作とした作品が放送されると知ったのは今年の一月だったかと思いますが、ついにこの四月末から放送がスタートしました。

 本作の特徴は、やはり二人の主人公である丘十郎と大作を『仮面ライダーリバイス』に出演した二人が演じる(ちなみに丘十郎の父親もリバイス出演者から特別出演)ほか、キャストを『仮面ライダーギーツ』『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』『

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夢枕獏『月神祭』 豪傑王子の冒険譚 夢枕流ヒロイックファンタジー

夢枕獏『月神祭』 豪傑王子の冒険譚 夢枕流ヒロイックファンタジー

 現在映画『陰陽師0』が公開されている夢枕獏の『陰陽師』シリーズ――その遠い遠い源流といえるかもしれない初期作品群を一冊に収録したのが、この『月神祭』です。古代インドを舞台に、豪傑アーモン王子とおいぼれ仙人ヴァシタが、各地で様々な怪異と出会うシリーズ、最初の刊行時には「印度怪鬼譚」と冠されていた、ヒロイックファンタジーの名品です。

 古代インドのとある王国の王子にして、人並み優れた巨躯を持つアー

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『妖雲里見快挙伝』完結篇

 新東宝版・南総里見八犬伝である『妖雲里見快挙伝』、前篇に続いて完結篇が公開されました。馬加大記と網乾左母二郎の奸計によって一度は滅ぼされた里見家。はたして伏姫の予言した八犬士は現れるのか、そして逆襲の機会はいつ訪れるのか――あまりに意外な最後の犬士の正体に注目です。

前篇の記事はこちら

(以降、ラストまでの詳細に触れますのでご注意下さい)

 というわけで、二部構成の後篇である本作は、前篇の

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白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?

白川尚史『ファラオの密室』 前代未聞、探偵で被害者は甦ったミイラ!?

 毎回ユニークな作品が登場する『このミステリーがすごい!』大賞、第22回の受賞作は、何と紀元前1300年代後半の古代エジプトが舞台。それも探偵にして被害者は、自分が死んでミイラとなりながらも、冥界から再び甦った男という、異色中の異色作です。



 ある出来事で命を落とし、ミイラにされて葬られた上級神官書記のセティ。しかし冥界に赴き、真実を司る神・マアトによって審判を受ける直前になって、彼は心臓

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夕木春央『サロメの断頭台』 作者一流のホワイダニットの先に待つ罪と罰

 『方舟』『十戒』で知名度を大きく上げた作者の大正ミステリ、蓮野&井口シリーズの第三弾であります。思わぬところから発見された井口の未発表の贋作。その犯人を探す二人は、やがて『サロメ』に見立てた連続殺人に巻き込まれることになります。

 かつて祖父が購入した置時計の件で、通訳役の蓮野と共に、来日した富豪・ロデウィック氏を訪ねた井口。井口の作品に興味を持ってアトリエを訪れた氏は、ある作品を見て、そっく

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木下昌輝『剣、花に殉ず』 剣と友情に生きた男が最後に辿り着いた場所

 これまで宮本武蔵を題材とした長編を二篇発表してきた作者が、その武蔵が最後に立ち会ったという剣豪・雲林院弥四郎を主人公として描く剣と友情の物語であります。剣の名門に生まれ、己の剣に悩みつつも、終生の友である細川忠利のために死地に赴く弥四郎。彼が最後に辿り着いた場所とは……

 鹿島新当流兵法の奥義「一の太刀」の伝承者である父とともに、修行の旅を続けてきた雲林院弥四郎。しかし関ヶ原の戦の際、父と石垣

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田中文雄『髑髏皇帝』 後醍醐帝の魔に挑む少年二人、足利直冬と北条時行!

田中文雄『髑髏皇帝』 後醍醐帝の魔に挑む少年二人、足利直冬と北条時行!

 足利尊氏の庶子・直冬、そして北条高時の遺児・時行が、後醍醐天皇に憑いた奇怪な魔物と対峙する時代ホラー長編です。尊氏に都を追われ、吉野に逼塞する後醍醐天皇の前に現れた異国の魔――吉野で相次ぐ奇怪な事件の謎を追う若き武士たちが、魔に挑みます。

 本作の舞台となるのは、鎌倉幕府の滅亡、建武の新政の失敗、南北朝の動乱と、うち続く動乱の時代。その渦中でそれぞれに父母と早くに引き離され、肉親の温かみをほと

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滝沢志郎『エクアドール』 海を越える同胞愛と、明日に踏み出す人々の物語

滝沢志郎『エクアドール』 海を越える同胞愛と、明日に踏み出す人々の物語

 中世の琉球王国に始まり、東南アジアへと展開していく、希有壮大にして爽快な海洋冒険ロマン――琉球を外敵から守るため、ポルトガル人から新型兵器を手に入れんとする琉球王府の人々の旅路を描く快作です。

 時は種子島に鉄砲が伝来する二年前――倭寇だった過去を持つ琉球王府の下級役人・眞五羅は、湾に迷い込んできた倭寇船との交渉に当たる中、倭寇時代の友・弥次郎と再会することになります。
 弥次郎と共にかつて所

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