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素敵なnote

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エッセイ:司書の仕事を続けていられる理由。

先日、仕事を早退してしまった。
職場でなぜか冷や汗が止まらなくなり、上司や同僚に甘え、家に帰って休むことにした。

思い返せば大学図書館勤務では、この3年間の間にコロナ禍・CAT2020・NACSIS-CATのリニューアル等の大きな変化が続いた。

大きな変化には、従来の共有事項を見直して再定義したり、新たな認識の共有を図る事が付きものだ。自分が思う以上にこの3年間は当たり前にこなしている業務につ

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谷崎 秋の変態祭り

谷崎 秋の変態祭り

谷崎潤一郎の『鍵』は当時大ベストセラーだったそうで、センセーショナルな内容も相まって刷りまくったそうだが、これと同じようにカタカナだけを使用した文体の『瘋癲老人日記』は不人気なのかあまり感想を書く人がいない。

新潮文庫では確か同じ単行本に収められているので、合わせて読むべき作品なのかもしれない。『瘋癲老人日記』は晩年の谷崎の私小説的な内容で、老いてなお性欲、それも『足』に対しての異常なフェティッ

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戒めの言葉集 『悪魔の辞典』

戒めの言葉集 『悪魔の辞典』

古本屋さんで美術本を探しているとき、その題名に惹かれて手にした『悪魔の辞典』。
ちょっと茶色くなったケースに入った 怪しげで魅力的な薄い本は、昭和39年に翻訳・発行されています。シンプルな装丁がたまらなく魅力的!
58年前に300円で販売していた辞典を、私も300円で購入しました。

アメリカのジャーナリストであり短編小説家のアンブローズ・ビアス(1842年-消息不明)が1881年サンフランシスコ

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日本にこれからやってくる最悪の筋書き。

日本にこれからやってくる最悪の筋書き。

さてさて、物価高がものすごいことになってきましたね。
この傾向はこれからどんどん酷くなっていくようです。
「値上げの夏」などという言葉まで飛び出しています。

そんな中、先日、通常国会が閉会しましたが、
政府が決めた補正予算案の中に、
我々の暮らしを直撃する食料等の物価高に対応するための予算は、
1円たりとも計上されていないとのこと。(ガソリン代だけです)

・・・本当に驚きました。

自民党の生

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本好きの人生を描いた海外小説3冊

本好きの人生を描いた海外小説3冊

 最近、偶然にも「本好き」の人生を描いた海外小説を連続して読みました。どれも面白かったので、ご紹介させていただきます。

ガブリエル・ゼヴィン『書店主フィクリーのものがたり』(小尾芙佐:訳/早川書房)

 主人公のフィクリーは、島に1軒だけある書店の店主。無類の読書好きで、こだわりの品ぞろえをしている偏屈な男。最愛の妻を亡くし、酒に溺れていたある日、店にぽつんと小さな女の子が置き去りにされていた。

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哲学してて、いいことあった?

哲学してて、いいことあった?
と、たまに聞かれる。
誰に聞かれるかと言えば、私と私の周りの人と宇宙とに、である。
それぞれに対して答えは異なる。

私にはこう答える。
「なぜそんなことを問うのだ。」と。
私の周りの人にはこう答える。
「そもそも哲学はするものではなくあるものである。」と。
宇宙にはこう答える。
「それが私の輝きだからである。」と。

どれも間違っていない。
けれど、私以外の人に通じ

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聖夜

聖夜

青い雨が地面に散らばる様に、夜を思い出した。
私には、夜天こそが本当である。
ソファで眠たい目を軽く擦ると、きらきらと、息子が笑いながら握りしめて見せてきたのは、妻に贈ったラピスラズリのネックレスだった。
どこから持ってきたものか。
ラピスラズリの鉱石は、金を散りばめた夜天そのもので、私はそれを持つ息子に御仏を見た。
ガンジス川の真砂(まさご)よりあまたおわする仏たち。
九条武子の『聖夜』を諳んじ

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私を作り上げた3人の作家さん

私を作り上げた3人の作家さん

好きな作家や小説家を3人挙げるだけで、その人の人柄が分かるそうだ。
私は好きな作家さんが無数にいるので3人に絞り込むのは難しい。
そこで、高校生の時に私の「土台」を作り上げてくれた作家さんというお題で3人紹介してみます。

山田詠美一番最初に読んだ「ぼくは勉強ができない」は衝撃的だった。
当時進学校に通っていた私は、こんな生き方があるのか、と頭をぶん殴られたような思いで夢中になって読んだ。
名作に

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夜眠らなくてはならないのは朝起きなければならない人だけ

夜眠らなくてはならないのは朝起きなければならない人だけ

 

 寝れない寝れないと考える方が余計に眠れないのでもう眠れなくてもいいやと諦めてしまうと、案外入眠できる。そして朝もちゃんと目が覚める。睡眠不足だろうがそこはどうでもいいとする。一つ学んだ。考えすぎはよくない。

 朝は『未成年』を読んだ。

 フィオーナがいかに優しい裁判官であるか、そして、難病で正当な治療を受けられずに苦しむ子どもたちのためにどれだけ救いの手を差し伸べてきたかを読むと、ます

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専業ハンドメイド作家を始めて、やめるまで

専業ハンドメイド作家を始めて、やめるまで

クリスマスの夜に前日に半額で買ったチキンを食べていたら、猛烈に眠くなって、気づいたら眠っていた。何かの夢を見ていたようだが、うまく思い出せない。目が覚めたのは午前3時過ぎで、一時間ほど暗闇でぼうっとした挙句、私は猛烈に文章が書きたくなって、今パソコンに向かっている。クリスマスの翌日の、朝の4時半である。

私は、ハンドメイド作家をしていた。正確には、完全にやめたわけではないが、現在は実質休業中だ。

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短編小説『その前日』

短編小説『その前日』

(一)

退去通知書 ◯◯◯市
あなたは再三の催促にも関わらず、長期にわたり家賃を滞納し、また相談にも応じていただけませんでした。
市としては、支払いをされている方々との公平性の点から、市営住宅条例第二十八条第一項の規定により、下記の通り明渡しを請求します。つきましては、下記期限までに滞納家賃の納付又は当該市営住宅を退去するよう勧告いたします。あなたが明渡し期限までの滞納家賃の納付又は自主退去をし

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短編小説『広島 騎乗位』(1/2)

短編小説『広島 騎乗位』(1/2)

 発展場という言葉がある。
 ある種の人々にとってそれは集合場所を示す隠語であり、秘密の交渉をする場を意味する。今でこそインターネットで調べれば誰でも知ることができるが、特殊な嗜好のある人を除いて大半の人はその言葉の意味も実際にそれが何処にあるかも知らない。私もまた、それとは気づかず、単なる日常の風景の一部としてその前を通り過ぎてきた。ただ、ある一瞬、その内側に迷い込んだことがある。

 私は大学

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須賀敦子さんの訳が素晴らしいタブッキ2冊 ~ほか翻訳が素敵な海外文学を

須賀敦子さんの訳が素晴らしいタブッキ2冊 ~ほか翻訳が素敵な海外文学を

 アントニオ・タブッキの著書を2冊読んでいて、須賀敦子さんの翻訳にほれぼれしました。

『供述によるとペレイラは……』『島とクジラと女をめぐる断片』の2冊です。

 かなり個性の異なる2冊ですが、どちらも翻訳の日本語が素敵(私の好み)で、するする読めてしまいます。
 あらためて「須賀敦子さん、すごい!」と思いました。

 海外文学を読むときは翻訳との相性もあるので、こういう出合いはとてもうれしいで

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2021/07/11 ゆらゆら帝国 - 恋がしたい

2021/07/11 ゆらゆら帝国 - 恋がしたい

ぼへらーっと夕飯買いに出て、戻ってきた直後ぐらいに外から土砂降りの音が聞こえてきたりすると、へへ、かわしてやったぜ、と、全く自分の手柄ではないことに優越感を持つ山本です。いつ降られてもおかしくないんでねぇ。
ということで今日はこれを。バッキバキのゆら帝も好きなんですけど、後期のこういうテンションの曲も好きなんですよ。坂本慎太郎のソロワークだともう少しカロリー低めのソウル/R&Bというか、いわゆるシ

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