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Beyond The Reading

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本を読む先にあるものって、なんだろう。
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#読書記録

思考の整理学、を読んだ。

思考の整理学、を読んだ。

40年にわたり我々の知の開発の一助となり続けた名作。

アウトプットする、まずは手を動かし書き出してみる、あえて忘却する、アイデアを一晩寝かす、読書の方法などなど...嬉しいことに自分自身の行動や考え方を肯定してくれるような話題が多く、なぜか一安心。東大京大で多く読まれたという喧伝コピーが今回だけは微笑ましく思えた(権威主義ではないので念のため申し添えます)。

ハイライトは第一次現実と第二次現実

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ヘッドハンター、を読んだ。

ヘッドハンター、を読んだ。

巻末解説を我らの角幡唯介さんが担当。雪男探しの際にザックに持ち込んだ文庫本が、このヘッドハンターだったそう。空白の五マイルで停滞時に読んだ月と六ペンスと同じく、角幡作品に登場する作品はもれなく読むようにしている。

元傭兵の男が、世界の荒野や山岳地帯でハードなハンティングに勤しむ姿がひたすら続くのだが、特筆すべきは異常ともいえる精緻な状況描写である。ハンティングに用いる武器や装備類の材質やサイズな

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真説・長州力、を読んだ。

真説・長州力、を読んだ。

\長州力ここにあり/

長州力というプロレスラーを知ったのは、芸人の長州小力のモノマネを見た時。それから神奈月のモノマネで妙に滑舌が悪い人という印象を植え付けられ、興味を強くもつ決定的な契機は、武藤敬司とのオンライン飲み会のyouyube動画。

絶妙な間合いとユーモラスな話術と、二人の歴史をそれとなく示唆する業界の裏話。長州力というキャラクターと、プロレスがどのような世界であるのか、深く知りたい

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月と六ペンス、を読んだ。

月と六ペンス、を読んだ。

我らの角幡唯介さんが、ツアンポー峡谷の探検中に停滞したときに読み、そして焚き火にくべたということで、数年前から気になっており、ようやく読み終えることができた。

抱いた既視感は2つあって、構成が夏目漱石の「こころ」に似ていること、そして登場人物のストリックランドが神々の山嶺の羽生丈二に似ていること。

家庭や妻など、平凡だが誰しもが望む幸せの象徴を、いとも容易く放棄していくさまは、芸術家を形容する

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半径50メートルのセカイ、を読んだ。

半径50メートルのセカイ、を読んだ。

実際に佐藤さん(nendo)が手がけたプロダクトや案件を紹介しながら、その着想から着地までのプロセスを織り交ぜるコラム。

ハイライトは「嫌い」と「嫌いじゃない」をきちんと認識するということ。うーむ、確かに好き・嫌いのあいだには「嫌いじゃない」という、良い意味でのどっちずかずな状態があるのかもしれない。

それって、つまり中庸ってこと?違うかw

独立した頃に提案段階で何度もミラノに出かけた話をサ

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ゆるい職場、を読んだ。

ゆるい職場、を読んだ。

若者が職場で抱えている問題は、不満よりも不安が多い。ブラック(企業)という概念からはじまり、過度な自己防衛意識で、部下や後輩を質すことが難しくなった..否、できなくなった今、結果的に多くの職場が「ゆるく」なってしまった。

履き違えた優しさは、若者に不満ではなく不安を抱かせることになる。彼らは、はたしてこのままで良いのか?という将来に対する漠然とした不安を日々募らせてゆく。あらゆる情報を取得しやす

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日本辺境論、を読んだ。

日本辺境論、を読んだ。

人様にご紹介いただいた本は、できるだけ読むようにしている。毎回購入はできないので、まずは図書館の蔵書を確認。お借りしてグッとくれば改めて購入し再読を繰り返す...。そんな読書ライフを満喫。

とはいえ、今回ご紹介する内田樹先生のような「超名著・超量産機」みたいな人は、内容がどれほど素晴らしくても経済的に破綻するリスクがあるので慎重になる。私が高野秀行さんの作品を所有しないのはこの理由から。

さて

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クオリティランド、を読んだ。

クオリティランド、を読んだ。

恋人や趣味までアルゴリズムで決定される究極の格付社会。役立たずの主人公が欠陥ロボットを従えて権力に立ち向かう大ベストセラー。

ネタバレになりそうなコメントは一切控えるが、ディストピア小説であれば夭逝が惜しまれた伊藤計劃氏のハーモニーが筆頭に挙がる。本書はシリアスな話題でありつつも、ユーモアが散りばめられ読む人を飽きさせない。

実社会で人々をスコア化するというシステムは、中国の芝麻信用で既に実装

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東京の生活史、を読んだ。

東京の生活史、を読んだ。

遂に読了、1216p。

150名にも及ぶ語りを、ただひたすら聴取し文字に起こし編まれたもの。読書から実益的な見返りを求める人には、全くオススメできない。特にタイトルから社会学的な何かを期待していると、自分のように肩透かしを喰らう。

出版社からのコメントが本書の説明ズバリなので引用する。

これだけの大作は「読んだことがある」という経験を得るだけでも十分だろう。それは登山になぞらえれば、最もメジ

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冬の旅、を読んだ。

冬の旅、を読んだ。

角幡唯介さんの極夜行前の後に読みたくなり手にしたのはこちら。

あらすじはこのような感じだ。

今回が2回目となるが、前回読後に自分が何を感じていたのか確認をしてみる。

なるほど、自分は著者が選択したアプローチ(手段)に反応していた。これは本多勝一が提唱し、角幡唯介さんが本多氏から被爆したというパイオニアワークの理論に著しく影響を受けてのことだろう。

***

今回自分が感じたのは、舞台となっ

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アルゴリズムの時代、を読んだ。

アルゴリズムの時代、を読んだ。

テクノロジーが大好きだが、手放しでは受け入れない。

影響力とアルゴリズム、データとアルゴリズム、正義とアルゴリズム、医療とアルゴリズム、車とアルゴリズム、犯罪とアルゴリズム、そして芸術とアルゴリズムの構成。具体事例も紹介され非常〜に読みやすい。

毎度、ウィキペディアで調べてみると、

アルゴリズム(英: algorithm)とは、「計算可能」なことを計算する、形式的な(formalな)手続きの

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諦めの価値、を読んだ。

諦めの価値、を読んだ。

とても見込みがない、しかたがないと思い切る。断念する。とある。

諦めると聞くと、何やらネガティヴなイメージを持たれるかもしれない。冒頭にある通りに、調べてみると「何かを途中でやめる(やめてしまう)」という意味合いを汲みとることができる。

いっぽうで、このような解釈もある。長くなるが大谷大学のHPから引用したい。

「諦観(たい(てい)かん)」、「諦聴(たい(てい)ちょう)」といった熟語の「つま

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本の読める場所を求めて、を読んだ。

本の読める場所を求めて、を読んだ。

読書という行為ではなく、本を読む場所について考察するユニークな内容。

読書とはなにか、これからの書店のありかたとは、などをテーマにした本は数多く手にしてきたが、「本を読む場所」について深く考えることはなかった。著者の阿久津さんは「fuzkue」というお店(場所)を運営している。

サイトのつくりも素晴らしく、機会があれば是非一度は出かけてみたいと思う。

***

自分が本を読む場所は自宅だ。昨

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狩りの思考法、を読んだ。

狩りの思考法、を読んだ。

我らの角幡唯介さんの待望の最新作である。

2018年に出会い熱心なフアンになってから、著作は全て拝読した。同じ作品を何度も何度も拝読し、角幡さんが読んだという本も精読。自称、日本一の角幡唯介ファンである(非公式なファンクラブの会長を拝命している)。

本作はこの数年、精力的に通っているグリーンランドでの活動をまとめたものだが、ただの活動報告記ではない。題名にある通りに「狩猟という行為」を通じて人

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