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「みんなのフォトギャラリー」

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2022年10月以降に「みんなのフォトギャラリー」で私の写真を使って下さったみなさまのnoteをまとめています。 使っていただいたみなさま、ありがとうございます!とっても嬉しいで…
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#短編小説

【短編小説】アンモナイト

【短編小説】アンモナイト

後輩の伊藤が昇進した。
俺と同じ本部長という立場だったのに、先を越された。

俺はこの先、出世出来ないのかもしれない。
今朝も部下に対する俺の言動について、人事からやんわりと注意された。
俺よりも年下の人事部長が、俺に凄く気を遣い、「沢木本部長にこんな事を申し上げるのは、大変心苦しいのですが…。」と言葉を選びながら話す姿を見て、笑いそうになってしまった。

人事部長からは、俺が部下を厳しく叱ってい

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【短編小説】三日の月

【短編小説】三日の月

赤銅色を帯びた三日月

異様な雰囲気を感じる

「はあはあ」

私は思わず駆け出していた

神秘的な光景に吸い込まれるようだ

私はひたすら追いかけた

追いかけて

追いかけて

たどり着いた

そこには

大きな建物があった

「何をしているんですか」

私は目の前の人物に尋ねた

「遠くに青い光があるだろう。私たちはあの色に心惹かれるんだ」

「いかにして行きつくか研究をしている」

そう話

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YA【その船をこいでいけ】(9月号)

YA【その船をこいでいけ】(9月号)

 夏休みが終わってから、もう二週間が過ぎた。

 九月も半ばだというのに、ばかみたいに暑い。月ノ島中学校の三年生、折田ノブは、照り付ける太陽光線から逃れられない。校庭のハンドボールコートのゴールの中にいる。同じく三年の近藤タツヒコの練習に突き合わされて、キーパーをしているのだ。

 三年生は夏休み前に部を引退した。
 今、二年生を中心としたハンドボール部は体育館のコートで練習をしている。ノブとタツ

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『新しい扉』/オラオラするTシャツ手触り【#毎週ショートショートnote】

『新しい扉』/オラオラするTシャツ手触り【#毎週ショートショートnote】

※『軽いジャブ』/お題「イライラする挨拶代わり」で創作した
  ショートショートの【続編】としてもお楽しみいただけます

(もちろん、単体のショートショートとしてお読みいただいても可)

◆お題「イライラする挨拶代わり」で創作した410字のショートショート
 の記事はこちらです。↓ お時間があったら、ぜひ先にご一読ください。

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タワマン文学#11青山

タワマン文学#11青山

 煙草を吸い始めたのはいつからだっただろうか。6Fのこの部屋のベランダから青く光るスカイツリーは小指の先っぽくらいの大きさで見える。最後の一吸い、切れかけた蛍光灯のような音。くしゃくしゃのアルミホイルに短くなった煙草をおしつけた。

 7月になったばかりなのにひどく暑い。6月は梅雨、7月から徐々に暑くなってきて、8月上旬がピーク、それ以降は残暑で徐々に下がって行くという幼少期の記憶とは異なる天候に

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月光の隣で

月光の隣で

真夜中に目が覚めた。

カーテンの隙間から光が差し込んでいた。

よろよろ立ち上がり、カーテンを開ける。
眩しくて少し目を細めた。

大きな丸い月が煌々と照らす。

寝ぼけ眼に突き刺す明かりに、ついしかめっ面になる。

ああ、そうだ。
確か今日だったな。
スーパームーンて。

朝からテレビや周りでそんなこと言っていたこと思い出した。
特にあの子の笑顔と言ったら。
なぜにそんなに嬉しそうなのか。

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【短編小説】フォロワー

【短編小説】フォロワー

「見ーつけた♡」

私が住むマンションは単身世帯だけで、静かだった。
最上階の角部屋に騒音主が引っ越ししてくるまでは。

騒音主は私の上階に住んでいる。
引っ越しして来たと思われる日の夜中から、ドタンバタンと煩かった。
その後も子供が飛び回る様な音、ドアを閉める音、床に何かを落とした音、夜中に歩き回る音に度々悩まされ、遂に管理会社へ連絡した。
前の住人の時は何の音も聞こえなかったのにな。

次の日

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「夏です」と一回言った(たま)考

「夏です」と一回言った(たま)考

 冷たい麦茶を注ぐと、すぐさまコップの表面にいくつもの水滴が現れた。男はそれを部屋の中央にあるテーブルへ置く。テーブルにはひとりの少年が向かっていて、男のほうを見ることもなく「ありがとう」と言った。
 窓から差し込む陽光が室内の空気を熱していく中にあって、フローリングの床ばかりが低温を保っている。男は、伸びるままにしている髪、その一部にそろそろ白髪も混じるようになってきた頭をちょっと掻いて、少年の

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半笑いのポッキーゲーム

半笑いのポッキーゲーム

本文「ポッキーゲームしようか?」

彼が突然しゃべりかけてきた。
何それ。いきなりキスしようっての?
魂胆は見え見えなんだよ。

まあ。乗ってやろうじゃん。

面白いことになりそうだし。

「何味でやんの?」
「イチゴ味。それしかないからな」
「何それ」

中途半端に笑ってしまった。

「行くよ」
「おっけ~」

両端からポッキーを食べ進める。
ポッキーのチョコってこんな甘ったるかったっけ。

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『その災いの夜、ある主婦の感想』  |#シロクマ文芸部 短編小説

『その災いの夜、ある主婦の感想』  |#シロクマ文芸部 短編小説

(本文約2000字)

街クジラのからだで醗酵とかはじまったのだろうか、光りはじめていていた、一頭だけだった。地面に墜落している。夜。

その子はうちからたぶん2kmくらい先で死んでいる。

そのとても巨大な体ぜんぶを、ふんわり白いかすかな光に覆われてしまっていて、テレビで見る、ビルの狭間を泳いでけっきょく衝突したりしてるときのあの元の肌色はわからなかった。

じき責任ある誰かたちが解体しに行くの

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掌編『活性化エネルギー』

掌編『活性化エネルギー』

 その手をもう、私は知りすぎた。

 彼は私の身体をゆっくり撫でながら、首筋を舐める。唾液が乾いたら臭うなと思いながら、私は声を漏らした。
 彼の手が胸からお腹を経由して徐々に下っていく。ごつごつした人差し指を咥えた私の身体がちゃんと湿っているのを確認して、彼は避妊具をつける。身体が覆い被さるにつれて、ミシミシと軋めく音がした。
照明を付けていない真っ暗闇の中でも、私たちの行為に障りはない。まるで

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離れないよ

離れないよ

入学式が終わり、クラスで簡単なガイダンスを受けて、十二時少し前に学校を出た。
ガイダンスは三十分くらいで終わったから、親と一緒に写真を撮っている子がパラパラと何人かいた。
写真を撮っている人達を横目に校門へ向かう。満開の桜から落ちてくる花びらを浴びながら校門を潜り抜けた。
友達もできて、一緒に写真を撮ったが、イヤホンを落としたせいで、先に帰ってもらうことにした。どっちにしても電車に乗るみたいだし、

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ゆめが教えてくれたこと その1

ゆめが教えてくれたこと その1

息が詰まりそうな寝室にダブルベッドが寂しげに1つおかれている。
私はそのベッドの上で窮屈さを感じながら外を眺めてうとうとしていた。
今夜は新月なので、星がきれいに見える。

あぁ、瞼がおちて現実と夢の境目がわからなくなってきた。
眠りについたのだろうか。遠くの方で声がしている。

“私たちの声をきいて”

ふと、草花の声が聞こえていたことを思い出した。
小学校低学年頃だっただろうか。
草花に話しか

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告白は桜の花びらに囲まれて

告白は桜の花びらに囲まれて

「あ……桜の花が落ちてきた……」

歩莉(あゆり)は嬉しそうにレジャーシートに落ちてきた桜の花を優しく拾った。

薄いピンクに染まった桜の花を自分の髪につけ、皆んなに見せる。

歩莉の栗色のセミロングヘアーが風に揺れ、桜の花と髪の色が似合う。はにかむ顔はとても可愛らしく目に映る。

今日はサークルの仲良し5人でお花見に来ていた。

それぞれが、大きくせりだった桜の花をチラチラ見ながら、この青く澄ん

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