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#ほんの一瞬の物語

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この街のどこかで、ほんの一瞬で終わってしまう物語の破片を集めました。
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先生との思い出

先生との思い出

ある日、隣のクラスの担任のY先生は私の書く詩が好きだと言った。

何故、隣のクラスの先生が私の書いた詩を読んだのかはわからないが、そう言ってくれた。

雪が降った日、なんとなく休みたくて仮病を装い体育を見学した。

そしたら、何故か居合わせたY先生が「こんな日に外で見学は寒いだろう」と言った。

そして、連れてってくれたのは校庭が見渡せる校長室。

「ここで、詩でも書くといいよ。」

とY先生は笑

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お腹のマーク

お腹のマーク

「ママ、この形はなに?なんであるの?」

お風呂上がりに我が子が問うた。

我が子には生まれつきお腹と胸の間に大きめの薄茶のシミがある。

当初、成長と共になくなるのかなと楽観視していたが、あるときふと調べたらそんなことはないことがわかった。

女の子だから水着を着たときとかに見えてしまうので、気にする時が来るかなと思っていたが、ついにその時が来た。

6歳。もう少しで小学生。

ちょっと予想より

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足踏み

足踏み

足踏みをした

いちに いちに

そろわない

「どうして出来ないの?」

不思議そうに 君は聞く

だって 君のように簡単には

僕は 僕の足を動かせないんだ

いちに いちに

そろわぬ足踏みを

僕らはずっと 繰り返す

個体差とか価値観の違いとか、そんなものを考える。自分の中の当たり前は、当たり前ではないことに気づく。それにしてもこのイラストの色使いがとっても好きだ。

地図

地図

地図を見ながら目的地に行く。

簡単なことなのに

示された所要時間の倍
僕には時間がかかってしまう。

「この時間はおかしいよ。」

僕がそうつぶやくと

「すぐ寄り道するからよ。」

ぴしゃりと君に言われてしまった。

明けましておめでとうございます。本年もまたnoteでよろしくお願いいたします。素敵画像をお借りしております🙏✨最近はgoogle Mapがあればどこでもいける気がしますが、方

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≪エッセイ受賞作≫最後に一言

≪エッセイ受賞作≫最後に一言

grape『心に響く』エッセイコンテストの受賞作品が公開されました。私の作品は優秀賞をいただきました「最後に一言」になります。どの受賞作も本当に本当に素晴らしすぎるのでご興味のある方は是非ご覧いただければと存じます。

また、12/30 16:30〜 ニッポン放送の年末特別ラジオ番組の中でアナウンサーの方が朗読下さるようですので、ご興味のある方はそちらも併せてお聞きいただければと存じます。(rad

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冬の日の電車の中で

冬の日の電車の中で

あれはちょうど今くらいの寒い時期のことだった。

都心から1人家路へと電車に乗っていた。

なんだか落ち着くスポットであるドア際の手すりと座席の間の狭い空間に収まり、流れていく景色を眺めていた。

駅について、乗客がおり、また乗る。

少し混んできた。目の前に男の人が立っていた。

ぱっと見たところ結構年輩だが、お洒落な服装をしていた。

その人はドアに寄りかかり、向かい合うような形になっていた。

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パパの絵本

パパの絵本

「パパ、どうして⁉︎
今日は遊園地に行くって約束したのに。」

「ほんとうにごめんな。
仕事のトラブルの電話かかってきてしまって。」

そう言ってパパは急いで会社に行ってしまった。

「ひどいよ!休みの日には電話かけてこないでくださいって今度社長さんにお手紙書かなきゃ。」

ぶつぶつ文句を言ってたらママが言った。

「パパも最近忙しいからね。
洗濯が終わったら公園に行こうか。
それまでちょっと遊ん

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別個体

別個体

友情愛情それ以上?

ぼくには境目がわからない
だって皆大好きだから
人間として大好きだから
ずっとそばに居たいと思うんだ

だから友達と恋人の境目は
やっぱり未だにわからない

こんな僕の態度が
君を傷つけているのも知ってるよ

けど、僕は所詮誰の所有物でもないし
まして君と二人だけの世界なんで
有り得ないよ

「私と友達どっちが大事?」
どっちも大事だから選べない僕に
君は腹を立てるんだよね

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hiderina

hiderina

拘束されるの嫌いなんだ

君は不思議な女の子だった。

時間を共有するし、体も共有するけど、
君は僕の彼女じゃなかった。

「私は誰の所有物にもなりたくないの。」

そう言って微笑む君。

「だから心はいらないから温もりをちょうだい。」

何度も君を独占するけど、心だけはくれないんだ。

だから僕は未だに君がつかめない。

それでも僕たちは"別れる"ことはない。
別に付き合っているわけでもないから

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WalKing

WalKing

僕はどうやらまっすぐ歩けないようで
真っ直ぐに歩いているつもりなのに歩けていないようで

人ごみを歩くとすぐに誰かにぶつかってしまう

「ごめんなさい」

そういう僕に、自分の道を乱されたことに 少しむっとした人たちは
すぐに軌道修正して真っ直ぐ歩いていく

そんな人を見送りながら僕はまた歩き始める

「なんで僕はまっすぐ歩けないんだろう」

そんな事をぼんやりと考えながら歩いていく

するとまた

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ないものねだり

ないものねだり

思い描いているものがある

こうありたい自分と
そうでない自分

色んな人に囲まれて
笑っている君を見て

そうなりたいと願って望んで
ないものねだり

今の自分で十分じゃないか

そう思えたら楽なのに

どうしてこうも
君の中に見出してしまうのだろうか

ないものねだり

人はみんな
ないものねだり
完璧じゃないから

きっと理想としている君にも
ないものねだり

きっとあるとはわかっているけど

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生き様

生き様

僕は大切な命が失われるのを真近で見た

足元がぐらついたような感覚に襲われ
頭の中が真っ白になって耳鳴りがしてた

今自分が置かれている状況を把握するのを拒絶してた

ひたすらにひたすらに拒絶してた

誰かがそっと手を握ってくれた
その手がとても温かくて、痛いほど温かくて

ああこれは夢じゃないんだとぼんやり思った

現実に引き戻されて
ただひたすらに涙が出てきた

言葉は何一つでなかったけど

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不変

不変

じっと僕を見つめる君
そしてふと口を開く

「ねぇ、知ってる?」

半分眠っていた僕は、無言で君を見た

「人間の視覚って不変なものは
見えなくなっちゃうんだって」

「・・・ふーん」
眠気に勝てずにおざなりな返事をした僕

そんな僕を見て、
君は怒っていたのか、悲しんでいたのか、
今となってはわからない

ただ、眠りに落ちる前の
君の言葉だけははっきり覚えてる

「ずっと見てるから、あなたも見え

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