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読み返したい詩をまとめています。
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記事一覧

詩  人生

詩 人生

人生が映画なら、と君は言うけど
私はやっぱり言葉を選ぶよ。
あの日の強くて優しい風を
花と一緒に揺れていた心のことを
昨日見上げた月の大きさを
それを君に教えたかったことを
朝になれば忘れるような
静かな静かな夜の音を
私だけが知っている君の横顔を
忘れてしまっても思い出せるように
どれだけ過去が増えていっても
何ひとつ取りこぼさないように
全部を言葉にしてしまいたい。
走馬灯にもならない
小さな

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光の詩学

光の詩学

科学と詩を織り交ぜた光の宇宙論。

かつて無があった。

無がゆらぎ、そこに光と闇が生まれた。

それは純粋な光のひとつだけ物質化したものと、まったくの闇のようなもの。

その光は光子気体と呼ばれ、
水素とヘリウムを含む空間にあったが、
陽子と電子が分離していたため
光は直進できず、「雲のような状態」と言われる。

この光子の雲、フォトンクラウドは光子の海と言ってもいい。

光子の雲は38万年の間

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詩|心

詩|心

簡単に変わってしまうものだったり

ずっと変わらないものだったり

不思議で素敵なもの

詩│鈍雨

雨が好きなんじゃない
森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
葉っぱの先へ
ごくごくごく
指の先まで
潤ってさ
あとは
もう
ぼ─

街の雨は疲れるね
ドレスコードはぺかぺかの服
たらい回しの光が眩しい
傘で乱反射してもうわけがわからないよ

やっぱり

森が好きなのだよ
洗濯板背負って
泥まみれの旅
枯れ葉の音と
木の葉の音と
指の先まで
喜んでさ
あとは
もう
ぼ──

[詩]朝ぼらけ

[詩]朝ぼらけ

朝起きたら
目を開けるよりも先に「君が好き」って思うんだ

ぼんやりと広がるいつもの風景
何度も頭に教え込ませた
「君が嫌い」の言葉がじんわり広がる

二度寝しようとするけれど
絶望に固まって閉じない瞼

外から聞こえる子供の泣き声
大切にしていたぬいぐるみを奪われたのかな
公園へ連れて行ってもらえなかったのかな

"自分をもがれた痛み"
"悲痛な叫びに変わる"
走り書くノートの隅

ゴトン
マグ

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全方位肯定

どうせ分かり合えないなら
もう傷つけ合わなくていい
そこには神はいないから
高い壺は買わなくていい
親が子を愛さないなら
子も親を愛さなくていい
世界があなたを愛さなくても
あなたはあなたを愛さない
理由にはならない
信じられない自分を怖がらなくていい
許せない事は許さなくていい
自分を見失ったら無理矢理自分を探さなくていい
探すのをやめた時に案外みつかるから
そんなに動揺しなくていい
哀しみだか

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氾濫/夏の薔薇

氾濫/夏の薔薇

氾濫/夏の薔薇
早月くら

紙の花 誰の所為にもしないまま生まれ変わりは千年の比喩

過去に戻りたいか
という話をしていた
あらゆる扉の向こうに春が降っているような日曜日
大気は桜色を帯びて
(それは心象として)
もうしばらくはあかるいはずの窓際に
わたしたちは傾ける
グラスを 或いはいのちを

いまが一番だ

あなたが言って
わたしは眩しそうな顔をしただろうか

窓から見える路地に
キャッチボ

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【詩】違う空

【詩】違う空

澄んだ空気が一段と
青空を高くする
小さな薄い雲だけが
そっと傍で浮いている

あなたの場所からも
見えますか

いつからか
見える空が異なって
いつからか
違う陽を浴びていた

それでもこんな晴れた日は
あなたと目が合いそうで
そっと見上げて探している

あなたの空も
晴れですか

あなたの空も
元気ですか

【詞】暁闇

【詞】暁闇

扉を閉めたら街は静謐
書く手から踊るよ
文字がとけるよ
何ごとも長く続いた方がいい
望郷。
星は空の水滴のよう

暁闇の通りを
今日も歩くけれど
まだ、あの日の答えを
分からないまま、立ち竦む
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくる
その手から込めるよ
夜の轍を

車の抜けるトンネルで
空気はゆれるけれど
まだ、この夜の空白を
どこか置いたまま眺めている
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくると

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詩133/   詩の繭

詩133/ 詩の繭

何も見えない
漆黒の夜道を

何も見えない
光の海の中を

前が見えない
土砂降りの中を

目を開けていられない
激しい嵐の中を

彼は
感覚だけを
道しるべにして
生きている

一番
敏感な粘膜を

闇に晒し

光に晒し

雨に晒し

風に晒し

体の奥深くで
激しい拒絶反応を起こしながら

絹の糸を
口から吐き出し

躰の周りに
純白の繭を張る

それは
自分を司り
自分の心を護るための

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sketch 「Teacher」

sketch 「Teacher」

お前は愛のない環境で育ったらしいな

それがお前の武器になるんだ

いいか、そういう人間はな、

一生愛を求め続けるんだ

で、いつかお前は愛を描ける人間になるんだ

ミケ【詩】

ミケ【詩】

僕がまだ十代の若い頃
実家ではミケという三毛猫を飼っていた

どこかから貰われてやってきた その猫は
暫くは なつかずに
箪笥やら本棚の上などに いたけれど

何日か経ってから 下りてきて餌を食べ
居間の床…母のそば…
僕の横…座布団で

気が付くと 丸くなり 目をつむり 眠ってた

それからは 昔からこの家にいたように
のんびりと穏やかな顔をして過ごしてた
いなくなる あの日まで

その後で 外

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【詩】美し

【詩】美し

きれいに手入れされた
白い手とネイルより

土にまみれた
岩のように黒く焼けた手

美しい

新しく煌びやかに磨かれた革靴
踵が擦れ形は崩れている
それでも靴墨で手入れされ
大切に使っている靴

ブランドの文字が大きく目立ち
来年は着ないかもしれないセーター
何十年もの間手を加えながら
ほつれは繕い毛玉はきれいに取り
愛されているセーター

高級な流行デザインは奇抜
今の空気にはピッタリ
胸に輝く

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詩作52 よだかの星のように美しくあるために

詩作52 よだかの星のように美しくあるために

詞は役にたたない
金にはならないし
医学のように命は救えない
詩人は法律で人を裁けない
それでも人は詩をうたう
人は不合理が好きなのだ
恋だの愛だのがたまらないのだ
もし人工知能が人類を支配しても
そのような人間の余白には辿れない
私はノストラダムスを信じる
それはロマンに生きているからだ
シンギュラリティとは宇宙の果てを語れり
狂った哲学こそニーチェを超えるのだ
美しい詞をこころの宝箱に入れよう

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