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全方位肯定

どうせ分かり合えないなら
もう傷つけ合わなくていい
そこには神はいないから
高い壺は買わなくていい
親が子を愛さないなら
子も親を愛さなくていい
世界があなたを愛さなくても
あなたはあなたを愛さない
理由にはならない
信じられない自分を怖がらなくていい
許せない事は許さなくていい
自分を見失ったら無理矢理自分を探さなくていい
探すのをやめた時に案外みつかるから
そんなに動揺しなくていい
哀しみだか

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氾濫/夏の薔薇

氾濫/夏の薔薇

氾濫/夏の薔薇
早月くら

紙の花 誰の所為にもしないまま生まれ変わりは千年の比喩

過去に戻りたいか
という話をしていた
あらゆる扉の向こうに春が降っているような日曜日
大気は桜色を帯びて
(それは心象として)
もうしばらくはあかるいはずの窓際に
わたしたちは傾ける
グラスを 或いはいのちを

いまが一番だ

あなたが言って
わたしは眩しそうな顔をしただろうか

窓から見える路地に
キャッチボ

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【詩】違う空

【詩】違う空

澄んだ空気が一段と
青空を高くする
小さな薄い雲だけが
そっと傍で浮いている

あなたの場所からも
見えますか

いつからか
見える空が異なって
いつからか
違う陽を浴びていた

それでもこんな晴れた日は
あなたと目が合いそうで
そっと見上げて探している

あなたの空も
晴れですか

あなたの空も
元気ですか

【詞】暁闇

【詞】暁闇

扉を閉めたら街は静謐
書く手から踊るよ
文字がとけるよ
何ごとも長く続いた方がいい
望郷。
星は空の水滴のよう

暁闇の通りを
今日も歩くけれど
まだ、あの日の答えを
分からないまま、立ち竦む
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくる
その手から込めるよ
夜の轍を

車の抜けるトンネルで
空気はゆれるけれど
まだ、この夜の空白を
どこか置いたまま眺めている
比喩の漣が
そのうちきっと聞こえてくると

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詩133/   詩の繭

詩133/ 詩の繭

何も見えない
漆黒の夜道を

何も見えない
光の海の中を

前が見えない
土砂降りの中を

目を開けていられない
激しい嵐の中を

彼は
感覚だけを
道しるべにして
生きている

一番
敏感な粘膜を

闇に晒し

光に晒し

雨に晒し

風に晒し

体の奥深くで
激しい拒絶反応を起こしながら

絹の糸を
口から吐き出し

躰の周りに
純白の繭を張る

それは
自分を司り
自分の心を護るための

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sketch 「Teacher」

sketch 「Teacher」

お前は愛のない環境で育ったらしいな

それがお前の武器になるんだ

いいか、そういう人間はな、

一生愛を求め続けるんだ

で、いつかお前は愛を描ける人間になるんだ

ミケ【詩】

ミケ【詩】

僕がまだ十代の若い頃
実家ではミケという三毛猫を飼っていた

どこかから貰われてやってきた その猫は
暫くは なつかずに
箪笥やら本棚の上などに いたけれど

何日か経ってから 下りてきて餌を食べ
居間の床…母のそば…
僕の横…座布団で

気が付くと 丸くなり 目をつむり 眠ってた

それからは 昔からこの家にいたように
のんびりと穏やかな顔をして過ごしてた
いなくなる あの日まで

その後で 外

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【詩】美し

【詩】美し

きれいに手入れされた
白い手とネイルより

土にまみれた
岩のように黒く焼けた手

美しい

新しく煌びやかに磨かれた革靴
踵が擦れ形は崩れている
それでも靴墨で手入れされ
大切に使っている靴

ブランドの文字が大きく目立ち
来年は着ないかもしれないセーター
何十年もの間手を加えながら
ほつれは繕い毛玉はきれいに取り
愛されているセーター

高級な流行デザインは奇抜
今の空気にはピッタリ
胸に輝く

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詩作52 よだかの星のように美しくあるために

詩作52 よだかの星のように美しくあるために

詞は役にたたない
金にはならないし
医学のように命は救えない
詩人は法律で人を裁けない
それでも人は詩をうたう
人は不合理が好きなのだ
恋だの愛だのがたまらないのだ
もし人工知能が人類を支配しても
そのような人間の余白には辿れない
私はノストラダムスを信じる
それはロマンに生きているからだ
シンギュラリティとは宇宙の果てを語れり
狂った哲学こそニーチェを超えるのだ
美しい詞をこころの宝箱に入れよう

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詩 「ルルヴェ」

詩 「ルルヴェ」

°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜°〜

砂埃の舞う荒廃した街並みに
初老の男が訪れる。

( この街もずいぶんさびれたな。)

もうかれこれ60年が経つ
まだ少年だった頃の
かつての学舎は
廃校となっていた

古びた校舎の片隅にある
相合傘の落書きを
そっと指先でなぞってみる

深く眼を閉じて
瞼の裏側に浮かぶ
遠い少年だった頃が蘇る__






un, deux, tro

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