上水春信

生きて、詩を描きます。(2024.7現在)

上水春信

生きて、詩を描きます。(2024.7現在)

最近の記事

詩151/ 食べ残しのコーン

皿に残っていた 食べ残しのコーンが一粒 台所のシンクに 洗剤混じりの水と一緒に 流れ落ちていった さっきのさっきまで 清潔で 美味しく 喜ばれる食べ物だったのに 人間の都合で 食べ残されたというだけで 一瞬でゴミになり 網に集められていく なんて 俺達人間は エゴに満ちた 自分勝手な生き物なのだろう と 重い気持ちになっていたら コーンは 顔色一つ変えずに こう言った 何 僕のこと見てんの ゴミってなんだい ああ そうか 君たちは 自分たちが要らなくなっ

    • 詩150/ 希望

      希望は未来への目標ではない 希望は未来への路程ではない 希望は現在の燃料である それは どんな燃料でもいい 燃料なんて呼べる代物でなくても可燃性のものをとにかく 何でもかんでもかき集めて 燃やして暖を取りながら 世界の片隅で 寒さをしのいで 生きていればいいのだ その熱で いつの日か体が温もれば 貴方は自然に そのとき歩きたいと思う方角へ 自分で歩き出すだろう

      • 詩149/ 命数

        僕は 赤子を背負って 野山を分け入り 人知れぬ茂みに ひっそりたたずむ 古い井戸の元に向かう 紐を握り 滑車を走らせて 60を載せた釣瓶を落とす どこまでも どこまでも 60を載せた釣瓶は落ちていく ようやく 水面に 着水する感覚があっても 60を載せた釣瓶は それでもなお 水の中をどこまでも沈んでいく やがてついに 井戸の底を打ったとき 60はその衝撃で 釣瓶からこぼれ落ちる そうしたら今度は 間髪入れず すぐに釣瓶を引き上げる 紐を引き続け 一番深いとこ

        • 詩148/ 色素

          君は 黄色い絵の具を 水道で流して洗う 黄色い水が 排水口を流れていく 溝に流れ落ちて 他の排水と混ざって 訳の分からない色に変わっていく それがまた どぶ川に流れ落ちて 黄色なんて無かったことのように 只のどぶ川の色に同化していく でも そこから 黄色の色素がなくなったわけではなく 散り散りばらばらに 水の中で放射して 果てしなく長い旅を始めるのだ そしていつの日か 草原の土に還り たんぽぽの花の 色に生まれ変わる そのたんぽぽの花を見て どこかの子供が 黄色い

        詩151/ 食べ残しのコーン

          詩147/ 月

          誰の上の空にも月は在る 誰にとっても当たり前の存在 でも今 君が見上げて その網膜で切り取る月は 見ている時間 見ている場所 見上げている角度 周りの景色 周りの湿度 雲との重なり 絶え間なき満ち欠け 見ている君の心 君の眼の滲み すべてが人とは違うものだ 君は今見上げた月を描けばいい どこにでもあるのに 君にしか見えていない月を 月に照らされながら描けばいい

          詩146/ 濃霧

          何もなくても 何もないからこそ うねる波に紛れていたい そんなときもある 前に進みたいのに 一歩前の未来さえ 見えなくて見えなくて苛立つ そんなときもある 鈍い刀で切られた 歪で塞がらない傷を 朧にして隠してしまいたい そんなときもある そんなこと どうでもいい どうでもいい どうでもいいと かき消したくなるときもある かき消そうとする その腕さえも見えなくなる 深く白い海 きみも ぼくも どこにいるのかわからない もしかしたら お互いすぐそばに 立っているのか

          詩146/ 濃霧

          詩145/ 時間と距離の詩

          世界の終わりまで あと10年だとしたら それは長いか短いか 人間からしたら そりゃ あっという間の時間でしょう でも カゲロウからしたら 途方もなく永い時間だね 世界の果てまで あと10kmだとしたら それは遠いか近いのか 人間からしたら そりゃ あっという間の距離でしょう でも カタツムリからしたら 途方もなく永い距離だね だから 世界の終わりが怖いなら 世界の果てが怖いなら カゲロウやカタツムリになって 短く ゆっくり 生きれば良いんだよ でも 人間か

          詩145/ 時間と距離の詩

          詩144/ 医学と傘

          不老不死の術を 遂に発見した医学者の 医学賞授与式が テレビで流れている 会場には 雨が降っていて 車から降りた医学者は 傘を差し出され その下に入って歩いていた 僕は こんな人でも 雨のときは 僕らや子供が差すような 原始的な道具を使うのだなと思った その日 医学はゴールを迎えたのだ もしくはゴールではなく 絶滅の日なのかもしれない これから医療は 我々が不老不死を 買うか買わないかだけになる 授賞式のテレビを見ている 君と僕 君が手首に巻いた包帯と 僕が手首に

          詩144/ 医学と傘

          詩143/ 待つ

          何もしていないのではなくて 時を流しています それは 流れに身を委ねているのではなくて 私自身が 時を流しています 川べりに座り その流れが 砂の塊を 少しずつ崩していくのを 萱に引っかかった木の枝が 少しずつ押されて 最後には流れに戻るのを じっと待っています その結果が 望むものである確証はありません 後悔する可能性もあるでしょう それでも 待つべきという 心の声を聞いたから 信じて待ちます それは 流れに刃向かうのと同じくらい つらく 勇気がいります

          詩143/ 待つ

          詩142/ コンロの火

          薬缶に水を張り コンロのスイッチをいれる 青白い炎が 薬缶の底に向かって ガスの排出音を伴って エネルギーを静かにぶつける それは湯が沸くまで とても安定したベクトルで 加熱が続けられる 湯が沸いたら コンロのスイッチは切られ 役割を終えた炎は 一瞬でこの世から消える そしてまた 卵焼きを焼くとき ラーメンを茹でるとき 鍋物を煮るとき 必要なときに コンロのスイッチをいれる 青白い炎は 必ずそこに現れ 完璧な仕事をこなして スイッチを切られて 消えていく

          詩142/ コンロの火

          詩141/ のど

          食事が のどを下っていく 水も のどを下っていく あおった酒も のどを下っていく 飲んだ薬が のどを下っていく 吸った息が のどを下っていく かたや 吐く息は のどを上っていく 咳も 嘔吐も 嗚咽も のどを上っていく 助けを呼ぶ叫び声も 憎い人を罵る声も 愛する人に送る歌も のどを上っていく みんな みんな のどを行き交っていく 生きていくために 欠かせないものたち 生きていくために 外に放つべきものたち 生きていくために 吐き出しては吸い込むもの

          詩141/ のど

          詩140/ 雷

          空に 稲妻が走ってから 雷鳴までの間隔が 長ければ長い程 雷雲は 遠くにいて 短ければ短い程 雷雲は 近くにいる 音の速さは 一秒で三百メートルくらいだから ほら さっき光ってから いま雷が鳴るまで 七秒だっただろう だから雷雲は ニ一〇〇メートルむこうにあるんだ それを 教えてくれたのは父だった そのとき ごく近くに雷が落ちた 稲妻と雷鳴が ほぼ同時だったから すぐそこなのだと分かった 僕は 怖くて 布団を被り 震えて泣いた 轟音が 地面も 建物のガラスも

          詩139/ 回帰

          世を儚んでいる訳でもない 人生が軽すぎる訳でもない 何にも絶望などしていない 断じて言う 決して 早く  死にたいのではない 俺はただ 素早く 死にたいだけなのだ

          詩139/ 回帰

          詩138/ めし

          昼飯を食いながら ふと思った 俺達の人生って奴らは そもそも味付けされていない 白米や食パンなんだと 中にはたまたま 素材がよくて そのまま何の味付けもしなくても 食えるような米やパンもあるけれど 全部が全部そうではないし まあそういう いいものってのは 庶民にはちょっとお高い訳だ うちなんかいつも家計がアレなんで ディスカウントスーパーの特売の米や 賞味期限間近で安くなった食パンだぜ でも 物足りないなら カレー掛けりゃいいじゃん バターや蜂蜜塗ればいいじゃん パサパサなら

          詩138/ めし

          詩137/ 揺れ

          生まれる前は 子宮の中で 羊水のうねりに従って揺れ 生まれたら 揺り籠の中で 眠らされる為に揺れ 大きくなれば 電車や車に乗っては ガタコトと揺れ エレベーターや エスカレーターで 上っては揺れ 下っては揺れ 殴られては 頭蓋骨と歯茎が揺れ 勢いだけで鳴らした ギターアンプの爆音に 鼓膜の芯が揺れ 社会に出ては 人の言葉に揺れ 自分の振る舞いの 結果に揺れ 責任を背負い 進む道のぬかるみに揺れ 突然訪れる運命に揺れ その運命を共にした 愛する人との別れに揺

          詩137/ 揺れ

          詩136/ おわり と はじまり

          世界の終わりが 来るのは怖い でも いきなり 世界の始まりが 来る方が怖い だって 終わりも無いまま 始まりが来るってことは 今現在 終わらせられるものが 何も無くて 僕の今も まったくの幻で 世界には 何の価値も質量も 無いってことになるからだ 在るものにしか 終わりは来ない だから 終わりには意味があるのだ そこに在ったことを 証明するという意味が 僕らの旅は 乗りたくも無かった列車に 一斉に無理やり押し込められた 長い片道の旅かもしれない でも 着

          詩136/ おわり と はじまり