はやくまともになりたい
わたしは わたしの言葉は 真夏の太陽みたいに 君を輝かせたりはできないし 真冬の海みたいに 君を泣かせてあげられないし ちっぽけで ありふれている でもね 君の瞼の真っ暗闇に ほんのひとさじ 星を零して 夜が明ける前の夢の中を 君がまっすぐ歩けるように そう祈っては ぽつり ぽつり
きみに贈るように 言葉を選びたいと思った。 わたしが綴る全てを きみが知るわけではないけれど、 わたしが選ぶ愛の言葉は いつでもきみの匂いがすること、 きっといつか気付くでしょう。 きみが、わたしのこころに ひょっこり顔を出す度に、 渡せない手紙が増えていきます。 ひとつ、ひとつ、 言葉を拾って息をしては きみに愛されたいと願ってしまう。 わたしの選んだ全てが きみの夜を照らすための 一本のマッチのようであれたら 灯火でなくたっていいよ。 なんてのはうそで 本当はね、 山積み
幼い頃の記憶は いつもつま先とアスファルト 本の世界への旅がえり ぼやけた頭が心地いい 大切なものが あまりなかった 今も、ないけれど 私は嘘をつくのが下手らしい なんでも顔に出るらしい でも、私はわたしを 嘘つきと呼びました 楽しみだけを抱えて生きたら それは楽しいかしら 楽しさは、いつも 寂しさと手を繋いでいて 仲間はずれなんかには 決してさせない 最近の私は いつも空ばかりを見つめて この世界がまだ美しいと 必死に唱えている 言葉さえも 戦争をするようになった世界
空が好きだから、土になりたいと思った。 決してあなたに染まることなく、 ただあなたが 泣いたり笑ったりしているのを 見ていたかった。 そうして咲いた心の花を、 あなたに見せてあげたかった。
人生が映画なら、と君は言うけど 私はやっぱり言葉を選ぶよ。 あの日の強くて優しい風を 花と一緒に揺れていた心のことを 昨日見上げた月の大きさを それを君に教えたかったことを 朝になれば忘れるような 静かな静かな夜の音を 私だけが知っている君の横顔を 忘れてしまっても思い出せるように どれだけ過去が増えていっても 何ひとつ取りこぼさないように 全部を言葉にしてしまいたい。 走馬灯にもならない 小さな小さな今日のことを 失いたくなくて必死なんだ。 だから君の今日のことも 私に言え
まだ柔らかな 生まれたての青空 今日は洗濯物を干そう 明日からはまた雨が降る 頬を赤らめた初夏の実は 次の夏まで旅に出る 一人ひとり、丁寧に身支度をして きっと素敵になるんだよ 今日のわたしの晴れたこころが 季節と一緒に過ぎていっても 君たちがずっと覚えているなら わたしはね、また次の夏も怖くない
光になりたかった あなたみたいに 悲しみを湛えたこころが 今日の朝日できらきらしては あなたの指先を通って 或いは あなたの喉先を通って わたしを照らすみたいに たんと悲しんで たんと苦しんで 流した涙をしまっておいて とびきり綺麗な宝石を こころのなかに飼ってしまう あなたみたいに わたしの涙はいつも まばたき一つで 嘘になってしまいます 他人なのです 悲しみも 苦しみも わたしではないのです 傷一つ、痛み一つも背負わずに ただ在るだけの そんないのちがあって あな
一日、一日、 生きていくほどに この世界を 少しずつ嫌いになっていく 居場所だったインターネットは 悪意と金が渦巻いて 神様だったあのバンドは 今のわたしを救えない 親友だったあの本は 埃を被って背を向けたまま 思えばわたしは昔から 性にこころを殺されてきたなぁ この世界から 遠く離れたところに行きたいと ずっと思っているけれど この世界が時折みせる 美しさが 優しさが 愛しさが またわたしを引き止める 母のようです たしかに、この苦しみの根源でありながら あなたの愛ば
あなたが好きだと言った わたしの言葉は あの人の輝きでしかないのよ。 あの人の美しさに照らされて ほんの少し光って見えただけで わたしひとりでは あなたの瞳には映れないことを わたしだけが 本当に分かっているのです。
いつも、あなたになりたい。 確かにあなたに救われて 同じくらい殺されていること。 何かを愛するとか 愛だと口にするとか 愛さないと言うこととか、 顔も知らない 名前も知らない あなたの美しさだけを知っていて、 決してあなたになれない 自分のことも知っていて、 だから、全ての言葉が ただあなたにだけ微笑む世界を 少し憎んでいたりします。 いつも美しいのは あなたの言葉だけで あなたの思想だけで あなたの世界だけだと 思い込んでしまうけれど、 きっとそんなこともない。 わたしは知
きみがあの子の夢を見た 夜は三度寝 いつかはひとりだ ぼくもきみも そうだといい つめたい布団で目を閉じたい ぬくもりは朝日だけでいいよ いつかぼくが終わるとき きみがまだ寝ていたらいい
幽霊になりたかったんだ。 誰にも知られずに 息をしていたかった。 わたしの 髪の匂いも 瞳の色も 手の冷たさも 誰にも教えずに 閉じ込めておけたらよかった。 わたしを愛するには それしかなかったのに。 わたしのこころは きみにはわかんないよ。 言葉に預けて 仮初のこころで満足して わたしをまるで全部 知り尽くしてしまったみたいな きみの表情がすきだ。 わたしはもう あとは消えてしまうだけ、 きみに夢だと思わせるだけで ひとつの季節が終わります。 幽霊になろう。 美しくて曖昧な
ぼくがいなくなった部屋は 暑いままだったかな 今がいつか消えること きみもきっと気づくよ あの道も、 あの歌も、 あの味も、 あの花も、 失うのはきみで 忘れるのはぼくだ 空が明けなければいい
大切なきみが わたしにとっては 姉で 友達で 子供で 神様だった きみが きっと泣いていることを 知っている 知っているだけだ、いつも もう空気の中に溶け込んで 私たちを汚していく 闇に きみが、傷つけられていて わたしは ゆるせないなと思うしかできなくて なにもできなくて わたしもまたその闇のなかで きみを傷つけたなにかを 切りつけてやりたいと思ってしまう ねえ せかいで いちばんにしあわせでいてほしい きみが大切だよ きみが きみがせかいなのに どうか どうか どうか き
もうすぐ誕生日だね きみはいつもかわいい もうきみのことをあまり知らない わたしたち、違ってしまったね 旅に出た夕焼けと コンクリートの冷たさを まだ覚えているよ あの本はいま何してるかな 誰かに愛されていますように きみみたいに