君をずっと追いかけていた。 優しい霞をまといながら、宙色の背景に飾り付けられていくみたいだった。頬を刺すような冷たい光となった君は、僕とは似ても似つかないくらい、とてもとても、綺麗だった。
『情』と『心』は似て非なる。若松英輔さんのコラムによれば、「『情』は自分自身のありようを意味する。心は広がるが、情はどんどん深まっていく。探しているものは今いる場所を掘ったところにある。」 アーティストが身近な事象に興味をもち本質を見出す創造力の源は、この『情』にあるのかも!
深い「情」の世界を魅せる能楽『井筒』を鑑賞しました。在原寺を訪れた旅の僧に、在原業平・紀有常の娘夫婦の物語を語る女性。僧の夢に紀有常の娘が業平の形見の衣と冠を身に着けて現れ、静かに舞います。舞の美しさに加え、その深みある表現が「情」の世界を感じさせます。