よつば

はじめまして。 255文字で本の感想を書いています。 選書の参考になれば嬉しいです。 …

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はじめまして。 255文字で本の感想を書いています。 選書の参考になれば嬉しいです。 https://bookmark-clover.com/ 〝Amazonアソシエイト・プログラムの参加者〟

最近の記事

『呪詛を受信しました』

第22回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉作品。 最初から最後までイヤミス感満載。 物語は一人の女子高生・美保の葬儀の場面から始まる。 その後「死ね」というメッセージが届いた同級生が次々と命を落としていく。 これは死者の呪いなのかそれとも…。 クラスメイトが参加しているトークアプリの内容が凄まじい。 匿名性を盾にした容赦ない言葉と同調圧力、行間から立ち上る悪意に胸やけしそうだった。 黒幕の正体は早い段階で予想が付いたが、リーダビリティ抜群で一気に読まされた。

    • 『ソロキャン!(3)』秋川 滝美

      「二泊三日キャンプ」 「ご褒美キャンプ」 「花恵の傷心」 「迷える少年」 「高圧的な管理人」 5話収録の連作短編集でシリーズ第三弾。 主人公は総合スーパー『ITSUKI』を軸とするグループ会社『五木ホールディングス』に勤めて七年目の榊原千晶。 31歳になり4月の人事異動で主任への昇進を果たした千晶のキャンプ好きは健在。 今回も美味しそうなキャンプ飯が満載。 本作ではソロキャンプを満喫と言うより人間関係がメインでヒリヒリする場面が多かった。 良く言えば親切、悪く言えばお

      • 『わたしの知る花』町田 そのこ

        心の襞を震わす愛おしい物語だった。 人が人を語る時、自分のフィルターを通した狭い世界で相手を判断してしまいがちだ。 勝手な思い込みや先入観が事実を歪めてしまう。 物語の主人公、77歳で孤独死した葛城平(へい)の生き様を追いながら、人が持つ無情さに憤り、やるせなさで胸が詰まった。 平と関わった人達も、皆それぞれに事情を抱えている。 彼らを見つめる作者の眼差しは時に辛辣でありながら本質を突いていて根底に愛を感じた。 誠実で在るが故、苦難の連続だった葛城平の人生。 けれど

        • 『リボーン』五十嵐 貴久

          リカファイナル。 五十嵐さんのデビュー作で代表作『リカ・クロニカル』ここに完結。 22年間で「リカ」「リターン」「リバース」「リハーサル」「リメンバー」「リフレイン」「リセット」「リベンジ」「リボーン」の全9巻。 最恐で最狂のリカにもう逢えないと思うと一抹の寂しさを覚える。 最後にリカのターゲットとなったのは、娘・里佳を車で撥ねた小野萌香とその祖母。 過去200人以上殺害した前代未聞の殺人鬼、雨宮リカにとって赤子の手を捻るほど容易いはず。 この闘いを見届けるべくラス

        『呪詛を受信しました』

          『夜しか泳げなかった』古矢永 塔子

          『七度笑えば、恋の味』 『今夜、ぬか漬けスナックで』 『ずっとそこにいるつもり?』 と連続して面白い作品を生み続けている古矢永さんの最新作は、過去作とは趣が異なるミステリー要素を含んだ作品。 高校教師・卯之原朔也が、ふとしたきっかけで手にした中高生に人気のベストセラー小説「君と、青宙遊泳」。 そこには自分が経験し封印していた物語が綴られていた。 卯之原の元に転校生として現れた覆面作家ルリツグミの正体は? 不穏な幕開けだが、物語は予想だにしない方向に転がり始めた。 作中

          『夜しか泳げなかった』古矢永 塔子

          『戸惑いの捜査線』アンソロジー

          「弁解すれば/佐々木譲」 「青い背広で/乃南アサ」 「刑事ヤギノメ/松嶋智左」 「三十年目の自首/大山誠一郎」 「嚙みついた沼/長岡弘樹」 「ルームシェア警視の事件簿/櫛木理宇」 「ケースオフィサー/今野敏」 7話収録の警察小説アンソロジーで文庫オリジナル作品。 一番面白かったのは長岡さんの「嚙みついた沼」 警察官の夫が特定外来生物のカミツキガメを発見した事から事態は思わぬ方向へ。 僻地の駐在所に異動になった夫の魂胆とは…。 行間から沼の悪臭が漂って来る様だった。 乃南作

          『戸惑いの捜査線』アンソロジー

          『あなたを待ついくつもの部屋』角田 光代

          本のサイズ感とメルヘンな装丁が可愛い。 楽しみにしていた角田さんの新作は3つの帝国ホテルを舞台に織りなす掌編小説。 一話が5~6頁ほどで42編が収録されている。 ホテルにはドラマが一杯。 ノスタルジーを感じるものから家族の秘密まで盛りだくさんな内容。 掌編だが景色や人物の表情まで浮かんで来るのは、角田さんの洗練された筆致ならでは。 特に印象に残った作品は 「母と柿ピー」「月明かりの下」 「父の秘密」「私のはじまり」 「もうじき会える」。 余韻に浸る間もなく場面が切り

          『あなたを待ついくつもの部屋』角田 光代

          『人生は苺ショート 美女入門22』林 真理子

          『anan』連載「美女入門」のPart22。 2023年5月31日号から2024年5月22号までが収録。 読めば読むほど別世界の住人に思えて来る。 著名な方々との華やかな交流、なかなか予約が取れない高級店でのお食事、海外旅行に、プラダ、エルメスと…自分とは無縁の世界が広がっていた。 シミが出来れば有名な女医に施術して貰い、破けたコートの修理代は9万円。 間違いなくセレブ。 同じ24時間を送っているとは思えない充実ぶり。 共通点は大の栗好きだった事くらい。 今回はいつ

          『人生は苺ショート 美女入門22』林 真理子

          『薔薇村へようこそ (4)』柴門 ふみ

          柴門さんが描く令和の家族の形もついに完結。 4巻では多加木ファミリーのその後と、36歳の大川内はるのケースが描かれる。 紆余曲折あった多加木ファミリーだったが納得の結末に安堵した。 大川内はるのケースでは女性が社会で働く事の難しさを痛感する。 一昔前と比べればマシになったかも知れないが、子育てと仕事の両立は容易くない。 どれだけ頑張ろうと、理解のない夫や、価値観の異なる義母に認めて貰えないはるの悲しみが切々と伝わった。 4巻では管理人の丸木倫太郎の過去が明らかになる

          『薔薇村へようこそ (4)』柴門 ふみ

          『薔薇村へようこそ (3)』柴門 ふみ

          柴門さんが描く令和の家族の形。 3巻は1冊丸ごと多加木ファミリーに起きた出来事が描かれる。 2巻の最後で元カノに心が動いた夫だったが、3巻では妻と元カノ、二人の女性の間で更に心が揺さぶられる。 長年隠していた妻の秘密が明らかになったり、息子の結婚相手・知佐恵が元AV女優だった事にショックを受けたりと、家庭内に次々と波風が立ち落ち着かない多加木家。 それでもなんとか前へ進もうと思った矢先に起きた悲劇。 184頁で思わず息を呑む。 その後、知佐恵の日記に記された赤裸々な

          『薔薇村へようこそ (3)』柴門 ふみ

          『薔薇村へようこそ (2)』柴門 ふみ

          柴門さんが描く令和の家族の形。 2巻では11歳の井出マイちゃんと多加木ファミリー、二つのケースが収録されている。 マイの母親・井出志保理は恋多き女性。 結婚と離婚を繰り返しながら4人の子どもを育てるシングルマザー。 薔薇村に移住して来ても彼女の恋愛依存は変わらない。 子どもへの愛情はある。 けれど恋愛を最優先するあまり、長女で小学生のマイがヤングケアラーの状況に陥ってしまう事に苛立ちを覚えた。 多加木ファミリーは一見上手く回っているのかと思いきや、元カノとの焼けぼっく

          『薔薇村へようこそ (2)』柴門 ふみ

          『薔薇村へようこそ (1)』 柴門 ふみ

          全作品揃えている柴門ふみさんの最新作は、令和の家族の形を描いたもの。 1巻では50歳の西山慶一と、58歳の貴島英子、二つのケースが収録されている。 仕事を口実に家庭をないがしろにして来た西山。 離婚後、それまで尽くして来た会社にも見限られてしまう。 マッチングアプリで出逢った女性とも色々あり…。 実在していそうな人物の揺れ動く感情がリアル。 人生を逃げ出した人たちが集う場所・薔薇村をきっかけに、新たな居場所で歩み始める姿に勇気を貰える。 貴島英子のケースは意外な展開に

          『薔薇村へようこそ (1)』 柴門 ふみ

          『たったひとつの冴えない復讐』竹吉 優輔

          いじめをテーマにしたミステリー。 主人公は私立恵堂学園・二年A組特進クラスに編入して来た和泉七生。 七生自身も心に闇を抱えていたが、ある日、黒板に貼られたQRコードをきっかけにこのクラスで行われていたいじめ事件の真相を追っていく。 QRコードを読み込むとクラスメイト全員に向けた脅迫動画が。 復讐を企てた誾(ギン)と名乗る人物は誰なのか? そして黒幕の正体は? いじめの内容が明らかになるに連れ、その陰湿さとくだらなさに胸が悪くなった。 終盤の予想外な展開に救われはし

          『たったひとつの冴えない復讐』竹吉 優輔

          『鳥と港』佐原 ひかり

          とても素敵な物語だった。 国立の大学院を卒業し、新卒で入社した会社に馴染めず、9ヶ月で辞めてしまった春指みなと。 からっぽの心を持て余していたみなとが、公園の草むらで郵便箱を見つけ、中に入っていた一通の手紙をきっかけに新たな人生を歩み始める。 手紙の送り主・森本飛鳥との偶然の出逢いに心躍る。 それぞれに葛藤を抱えていた二人が、文通を仕事にする事を思いつき行動に移していく。 決して派手な物語ではないけれど、心の機微が丁寧に繊細に描かれていて感情移入出来た。 人と人が

          『鳥と港』佐原 ひかり

          『ブルーマリッジ』カツセ マサヒコ

          令和のリアルを感じた。 年上の彼女にプロポーズした青年・雨宮守と、長年連れ添った妻に離婚したいと告げられ娘にまで見限られた中年・土方剛。 世代も価値観も異なる二人の男性を軸に物語は展開していく。 土方に至っては老害そのもの。 妻を奴隷のように扱い、会社ではパワハラ・モラハラ三昧。 明らかに加害者であるのに己を被害者と言い張るさまに開いた口が塞がらない。 方や一見何の問題もなさそうな雨宮にしても過去に「無自覚の加害」をしていた。 加害者の忘却、まさにいじめの図式と重な

          『ブルーマリッジ』カツセ マサヒコ

          『死蝋の匣』櫛木 理宇

          2020年に発売された『虜囚の犬』に続くシリーズ第二弾。 元家裁調査官・白石洛と茨城県警捜査一課刑事・和井田が新たな事件を追う。 前作同様、登場人物の多さに混乱し何度も登場人物一覧を確認しながら読み進めた。 読み終えて真っ先に感じたのは親の責任の重さ。 近年では親ガチャなるスラングが蔓延しているが、それで言えば本作に出て来る子ども達は大ハズレを引いたとしか思えない。 愛情を知らず、親の金儲けの道具として使われる。 鬼畜な大人たちに怒りが込み上げ胸がキリキリ痛んだ。

          『死蝋の匣』櫛木 理宇