M.eri

私の、半径1mの世界。

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トトノウを体験したい。

#創作大賞2024 #エッセイ部門 #サウナ #トトノウ   トトノウを、体験したい。 というのも、いわゆる「サウナ活動」が世に普及しだして、かなりの年月がたつが、テレビドラマをきっかけにまたここ5年ほどで一気広がった。特にトトノウ、とは、サウナーの間では当たり前に使われていて、サウナ→水風呂→外気浴の工程を繰り返すことで、収縮した血管から血液が体を駆け巡る極上の感、のことを指すらしい。  ある日の休憩室の光景である。 「最近の若い子って何が好きなわけ?」 と、新卒の20

    • ABCおじさん。

      「やっぱりさ、eriちゃんは、ホイホイだよね?」 カルテのiPadを眺めながら、 ママさんナースの三谷さんは話す。 「自覚はありませんでしたが、 ホイホイの可能性は否定できませんねぇ」 私も、iPadを片手に、 内服情報を確認していた。 「ホイホイだと思うな。だって私が聞いただけで、すごい数いるじゃない 知らない人からそんなに毎日話しかけられないと思うよ? 始発おじさんでしょ? 赤ダウンスピリチュアルおばさんでしょ? ツバメと雨予報おじさんに? バイク石兄さんにー、

      • 小さなボタン。

        「実写版碇ゲンドウがいる」 それは私のことですか? 後方から、同僚の声がする。  しかし、私はその言葉にすら、 反応ができない。  この世に生を受けてから、 幾つのボタンを押したことだろう。 電車の券売機、バスの降車ボタン、固定電話のナンバー、スーファミのコントローラー。 私達は、 何かのアクションを起こす際に、 ボタンを押す。 人生においても、たくさんの選択肢の中から過ったボタンを押した経験はないだろうか。 私にとって、それは結婚だった。 とても、長い15年間

        • 3.7さんにご紹介頂きました!

          いっぱい笑ってくれてありがと〜!!

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        トトノウを体験したい。

          ぶっ放す、をやめられない。

          日本語について考える。 業務過多の時、疲労の強い時、酷く落ち込んでしまう時、敬語や、その場に合った言葉が使えなくなることはないだろうか。 先日若い男の子が、敬語について指導を受けていた場面に遭遇した。 どうした?と聞くと、 彼はどうやら、 患者様に、「おいで」と、遠くから、呼んだそうだ。上司からは、「おいで」 ではなく、敬語を使えと。 彼の言い分を聞く。 「”おいで”は、”来る”の、尊敬語です。 相手を敬う気持ちを捨てた覚えはありません。 ただ、口馴染みがあるので、な

          ぶっ放す、をやめられない。

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          記事が紹介されました。 たよろよろ図書館サマありがとうございました!

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          肛門が嫌なんです。

          「肛門が嫌なんです」  お綺麗な先輩ナースは言った。  以前働いていた病院での話だ。 「どうしても、肛門が嫌なんです」 「元気なおしゃべり人間の肛門を見るのがどうしても嫌なんです」 「私は、弛緩している肛門は許せます、まだ締まりのある肛門は、嫌なんです。」  悲痛な叫びである。  ちなみに私は、これを毎回聞かされる。  彼女は必死だ。 「お元気な肛門は嫌なんです。」  話を順を追って聞いてみる。  ナースコールが鳴り、患者の部屋に向かうと、肛門の診察をして欲しい

          肛門が嫌なんです。

          隠す、正義。

           あのこが好き。  こんなところが好き。  もっと話したい。  一緒にいたい。  彼女が欲しい。  Z世代を生きる青年は、こんな気持ちをひた隠しにして生きてきたらしい。 「草食を通り越して、絶食ですね。  好きだって表現することが恥ずかしいんですよ。  私を見て、才能あるでしょう?  可愛いでしょう?  ってSNSを使って自己表現はできるんです。  でも、誰かを好きだって素直に伝える力が、圧倒的に俺らにはないんですよ。」  現実、彼の友人に、彼氏や、彼女がいる友人は

          隠す、正義。

          出ているのか、出しているのか。

          夏休み。  いまは、昔、朝の6時に近所の神社に集合して、ラジオ体操なる行事ありけり。時々、竹取物語の一文が頭を掠めることがある。  新しいあさが来た、希望の朝だ〜♩  と、熱唱したのちに、ラジオ体操第一を全力でやり切る。昨今では、このラジオ体操は、「騒音」扱いを受け、多くの自治体は、撤廃か、縮小していると言う。  迷惑な話だ。私は、ラジオ体操が大嫌いだった。  理由は一つ。  裸族とのインファイト率が上がるからである。  私の実家から、近所の八幡様へ向かう途中、私は

          出ているのか、出しているのか。

          優しさを抱く。

           人が死ぬ直前、もしくは、死にそうになっている場面に私はよく居合わせる。 みかんを喉に詰まらせ、顔面蒼白で咳き込むおばちゃん。 ラーメン屋で、低血糖でぶっ倒れているおっさん。  田んぼの中で自転車ごと突っ込んでいて、顔面を水に浸す爺様。  私は、ピンポイントで居合わせる、 間が悪い人間だ。  このお三方は事なきを得ているのだが、回復した際には、ありがとーー!!っと、皆、爆笑していた。チャンチャン。  ただ、人間には、死がつきものだ。  職業柄、お亡くなりになられる方

          優しさを抱く。

          情が、湧くよね?

          「最近さぁ、ミンミンゼミがいないんだよねぇ」    ーーー へぇ。 「やっぱり、ミンミンゼミ減ったよねぇ?」  ある男は、首を傾げている。  月初、夏本番、セミが少ないという。  翌日、別の男は言う。  「ねぇ、最近、ミンミンゼミいないらしいよ。」  ーーーほぉ。確かに最近、ミンミンしてないかもしれない。 「ミンミンしてない自覚、あった?」  ミンミンしてない自覚は、ない。  ミンミンに思い入れが、ないからだ。 「ミンミンついでに聞きたいんだけど、 セミって食

          情が、湧くよね?

          エール。

           弓道とは、八つの動作から成り立つ、礼に始まり、礼で終わる古き武道である。  高校時代の弓道部での記憶である。  足踏み(あしぶみ):立つ位置を決める 胴造り(どうづくり):姿勢を整える  弓構え(ゆがまえ):弦に指をかける  打起し(うちおこし):弓を持ち上げる  引分け(ひきわけ):弓を引く  会(かい):狙いを定める  離れ(はなれ):矢を射る  残心(ざんしん):矢をた後の姿勢  これを、関連付けて、肩を大きく広げて、会、狙いを定め、左手の弓を抑える手

          エール。

          先週特にスキを集めました。

          先週特にスキを集めました。

          男とか、女とか、性とか。

          「eriはさぁ、男と、女どっちが好き?」  川縁の音が心地よい。私達は、カンパイ、と、缶をコツンとあてた。カラカラの喉に甘いお酒が流れていく。 「男でも、女でもどっちでもいいけど、その人の色気みたいなものには弱いかもしれない。実際は男としか付き合ってこなかったから、性の対象は男なんだと思う」  関谷は、私の二つ年下の言語聴覚士の資格を持つ男の子だった。仕事帰り、私達は、時々こうして缶チューハイを一本ずつあけて、飲み切った頃には、話をやめ、真っ直ぐと家に帰るという、淡白な

          男とか、女とか、性とか。

          Jin

          「じゃー、next.Jin 」 英語教師は、授業を淡々と進める。  readingの授業中、前の席のJinは、テキストブックを片手に持ち、英文を流暢に読んだ。発音も良く、慣れ親しんだ言語には何も迷いもなく、思わずうっとりとしてしまう。 「next eri」  私はベタベタな日本語英語で続きを読んだ。くるりとJinは振り返り、good!っと、微笑んだ。   *    *    *  私と、Jinの思い出である。  オーストラリアには、親日家が多いという。 当時、私は

          On Your Marks

          On Your Marks set… 世界で1番美しい瞬間だと思う。 どの競技においても、静けさと緊張感、空気の膨張が止まるこの一瞬は、何物にも変え難い。 いちについて、よーい。 子供の頃、私は陸上練習会に参加していた。 監督からは、 ゴールの先を見ろ。 足を止めるな、 足を止めるな、 スイングが大きい プッシュプッシュ と手を叩きながら、並走してもらっていた。 走ることは大好きだったが、 大ぶりに走る私は、無駄な力が外に分散していることから、リハビリ的な要素を取り

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