M.eri

私の、半径1mの世界。

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記事一覧

山旅レポート

「大自然において、人間は浅はかな生き物だということを、つくづく感じる。山にとって、人間は、ただのゴミに過ぎないんだ。死体を担いで下山することもある。死んでいるか…

M.eri
9時間前
15

真夜中をあるく

待ち合わせは横浜駅北口の韓国料理屋。 JRの改札を抜け、はて、北口なんてあっただろうかと疑問に思いながら人混みの流れを邪魔しないように歩き出す。 おもむろに、黒の…

M.eri
3日前
31

エナジーバンパイヤ。  ただのエナジーに変わる。

「eriさん!!大変です」 エナジーパンパイヤのその後である。 彼は急変に遭遇する。 泡をふく患者。 吐物が溢れている。 オロオロとする彼。 状況を聞いて処置にとりか…

M.eri
7日前
29

エナジーバンパイヤ

「はぁー」 「はーぁ」 「はーーーぁぁあ」 ”はい、吸ってくださーい” 私は、ため息回収係だ。 「ちょ、違うよ、腰たいして、の”はぁー”よ」 ”審議ですね” ”…

M.eri
7日前
28

あなたは、誰ですか。

生きていて、不便だなぁと思うことがある。 「初めまして」 と自己紹介されても100%顔と名前が 覚えられないこと。 車を運転していて、 助手席の人に「そこ右」と 言われ…

M.eri
8日前
39

プロローグ

「物語は、いつからでも、始められる。 それが、人生でしょ?」 私が大好きな患者様の言葉だ。 私は、夜が朝に変わる、 曖昧な時間の空が大好きだ。 5時半。 夜勤明けの…

M.eri
11日前
55

モスキートの夜

世界中の雨を凝縮したような台風の影響は、 各地に広がっていた。 カーテンを開けながら、 個室で入院されている吉井さんに話しかける。 「今夜はひどい雨ですね」 ベッ…

M.eri
2週間前
28

歯医者が怖い

無知であることは、 恐怖を掻き立て、想像力を膨らませる。 無造作に置かれた、 目元のタオルは、ちょっと臭い。 この数秒後に何が起きるのか、この先生は、信用できるの…

M.eri
2週間前
29

トトノウを体験したい。 《克服編》私は悟空。

空前のサウナブームが、 我が社に旋風を巻き起こしている。 口を開けばサウナ。 夜勤明けはサウナ。連休も、サウナ。 ”どこのサウナ行きました報告会” が各所定例化し…

M.eri
2週間前
28

花びらに願いを込めて

秋が手招きしている。 夕暮れを歩く、肌に伝う風は、寂しさをつれてきたし、空はいつもより、高い。 薄くすじを描いた雲は 桃色を手のひらでなぞって、 季節の交代を教えて…

M.eri
2週間前
26

爆弾持ってるから無理

モスキートeriは時々テロリストになる。 度々お話しているが、 M.eriはすこぶる、 うんこに弱い。 今から私がお話するのは、 職員用トイレに向かうという、 至ってシンプ…

M.eri
2週間前
30

オブラート

小児科で働いていた時、 抗生剤が飲めない子供に対して、 アイスクリームに混ぜて服用する方法を付添入院する保護者に指導していた。 クラリスロマイシンという、 顆粒の…

M.eri
2週間前
30

おしっこ係

前回職員健康診断の話をしたが、 その続編である。 数ヶ月後、 再びまた健康診断の季節はやってきた 当時、私は地域の中枢を担う二次救急の総合病院の看護師として勤めて…

M.eri
3週間前
24

夏樹

夕暮れは、後ろ姿。 空っぽのロッカー。 広い教室。 お母さんを待つ時間。 こりす組のeriと夏樹は、 おばあちゃんの、ヒロミ先生に手を繋がれて、 ゾウさん組にとぼとぼと…

M.eri
3週間前
28

むしろ裸でいい。

うっかりと、 職員健康診断の日を 忘れてすっぽかしたことがある。 夜勤に従事する医療職は、 年2回の健康診断を義務付ける法律がある。 悪意はない。忘れていたのだ。 …

M.eri
3週間前
28

真水を炭酸に変える。

私は、窓の向こう側の空を眺める。 雲が一つにつながったり、離れたり。 掌で掬ってなだらかにして、飛び込んでみたい。 頬杖をつく顎もじりじりと痛くなってきた。 毎日…

M.eri
4週間前
53
山旅レポート

山旅レポート

「大自然において、人間は浅はかな生き物だということを、つくづく感じる。山にとって、人間は、ただのゴミに過ぎないんだ。死体を担いで下山することもある。死んでいるかもしれない人間の跡を辿ったこともある。オレたちは、自然の一部を借りて、お邪魔しているに過ぎないし、自らの罪意識の贖罪に訪れていると思うのは、傲慢さの極みだ。でも、生きることを教えてくれる。物であるような、オレたちの肉体の行く末なんてものは、

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真夜中をあるく

真夜中をあるく

待ち合わせは横浜駅北口の韓国料理屋。
JRの改札を抜け、はて、北口なんてあっただろうかと疑問に思いながら人混みの流れを邪魔しないように歩き出す。

おもむろに、黒のパンプスのサイズが合わない気がして落ち着かない。歩きながらつま先をコンコンと冷たいタイルに打ち付けて、そうか、これで丁度いいのか。私はこれで間違っていなかったと言い聞かせる。ふっと息を吐き、
人混みに溶け込む。

そうして、ゆっくりと、

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エナジーバンパイヤ。  ただのエナジーに変わる。

エナジーバンパイヤ。  ただのエナジーに変わる。

「eriさん!!大変です」

エナジーパンパイヤのその後である。
彼は急変に遭遇する。
泡をふく患者。
吐物が溢れている。
オロオロとする彼。

状況を聞いて処置にとりかかる。
彼の発見で、ことなきを得た。
エナジーパンパイヤは、俯いている。
彼はいま、一回り、小さい。

「見つけてくださり、ありがとうございます
おかげでことなきを得ました。」

バンパイヤ田所は、震えている。
そんな今日の午前中

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エナジーバンパイヤ

エナジーバンパイヤ

「はぁー」

「はーぁ」

「はーーーぁぁあ」

”はい、吸ってくださーい”

私は、ため息回収係だ。

「ちょ、違うよ、腰たいして、の”はぁー”よ」

”審議ですね”

”んー、判定負けです”

”あなたは、今15年分のhappyを放出致しました、残念です”

毎日、こんなことを繰り返している。

「eriちゃん、最近厳しくない?」
そう、私は最近周りに厳しい。

ビシビシと、
ため息を取り締ま

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あなたは、誰ですか。

あなたは、誰ですか。

生きていて、不便だなぁと思うことがある。
「初めまして」
と自己紹介されても100%顔と名前が
覚えられないこと。

車を運転していて、
助手席の人に「そこ右」と
言われると左に行っちゃうこと。

じゃんけんの一発目は、
必ずチョキを出してしまうこと。

エスカレーターを降りる時にうまくタイミングが合わず、結構な序盤から前屈みになって、降りるタイミングを測っていること。

と言っても、この中で特に

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プロローグ

プロローグ

「物語は、いつからでも、始められる。
それが、人生でしょ?」

私が大好きな患者様の言葉だ。
私は、夜が朝に変わる、
曖昧な時間の空が大好きだ。

5時半。
夜勤明けの朝、
私は外のゴミ捨て場までゴミを捨てにいく。
看護師の仕事ではない。

だだ、私が外に空と外気に触れに行くことを
数人のスタッフは知っている。

そっと、廊下にある捨てやすいゴミ
を持って
私はゴミ捨てに行ってきまーすと声をかけ、

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モスキートの夜

モスキートの夜

世界中の雨を凝縮したような台風の影響は、
各地に広がっていた。

カーテンを開けながら、
個室で入院されている吉井さんに話しかける。

「今夜はひどい雨ですね」

ベッドの上で横になっている
吉井さんは、話さない。

吉井さんは、
話せない訳ではないし、
動けない訳でもない。

ただ、だんだんと病気も進行して、
体力も衰え、
一日中ほぼ、傾眠状態だ。

私は話しかけ続ける。
「録画の野球、つけてお

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歯医者が怖い

歯医者が怖い

無知であることは、
恐怖を掻き立て、想像力を膨らませる。
無造作に置かれた、
目元のタオルは、ちょっと臭い。

この数秒後に何が起きるのか、この先生は、信用できるのだろうか。

タオルの置き方を見る限り、信用できない。
すでに落ちかかっているからだ。

口を開けてください。と言われてから、
わたしは長いこと口を開けて待っている。
足音が遠のいていてから、
長いこと口を開いている。

私は昨日虫歯治

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トトノウを体験したい。 《克服編》私は悟空。

トトノウを体験したい。 《克服編》私は悟空。

空前のサウナブームが、
我が社に旋風を巻き起こしている。
口を開けばサウナ。
夜勤明けはサウナ。連休も、サウナ。

”どこのサウナ行きました報告会”

が各所定例化しており、
通りすがりのスタッフに、
「おつかれサウナ」
と自然に言ってしまうほどだ。

サウナサウナサウナ…
時々、よもぎ蒸し、またはサウナ。
会話は、ほぼ、サウナだ。

一瞬だけ、岩盤浴ブームも到来したが、
やはりサウナに流行は押し

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花びらに願いを込めて

花びらに願いを込めて

秋が手招きしている。
夕暮れを歩く、肌に伝う風は、寂しさをつれてきたし、空はいつもより、高い。
薄くすじを描いた雲は
桃色を手のひらでなぞって、
季節の交代を教えてくれる。

今日は心地が良い。
そう思った。

帰って映画の続きをもう一度見よう。
夕飯は何にしようか。

もう一度、空を眺める。
思い浮かべるひとがいる。

私には、会いたいひとがいる。
時々、胸が苦しい。
気持ちを心の隅っこに押し込

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爆弾持ってるから無理

爆弾持ってるから無理

モスキートeriは時々テロリストになる。

度々お話しているが、
M.eriはすこぶる、
うんこに弱い。

今から私がお話するのは、
職員用トイレに向かうという、
至ってシンプルな出来事である。

「く と う て ん」

私は、年に数回「くとうてん」と、
病院コメディカルにご指摘を受ける。

「あ、eri、リハビリ入りたいんだけど、酸素ボンベ空っぽだよ、入れ替えないとリハ室いけないよ!」理学療法

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オブラート

オブラート

小児科で働いていた時、
抗生剤が飲めない子供に対して、
アイスクリームに混ぜて服用する方法を付添入院する保護者に指導していた。

クラリスロマイシンという、
顆粒の抗生物質は、
表面はバナナのような甘さはあるものの、
口に含んで、溶け出すと、
強烈な苦味が口に広がってしまう。

点滴と、内服。

この2つの医療行為は、
体力のない子供たちにとって肝になる。

当時総合病院で勤めていた私は、
売店で

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おしっこ係

おしっこ係

前回職員健康診断の話をしたが、
その続編である。

数ヶ月後、
再びまた健康診断の季節はやってきた

当時、私は地域の中枢を担う二次救急の総合病院の看護師として勤めていた。
職員数もゆうに1000人を超える。

私は前回の反省から、
ゆとりを持ち、前もって健康診断を受けていた。
今年度より、健診車は廃止され、
院内での職員健康診断をすることに
取り決めは代わり、
職員は普段の仕事と、
健診業務に従

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夏樹

夏樹

夕暮れは、後ろ姿。
空っぽのロッカー。
広い教室。
お母さんを待つ時間。

こりす組のeriと夏樹は、
おばあちゃんの、ヒロミ先生に手を繋がれて、
ゾウさん組にとぼとぼと移動する。

お母さんは、今日もお迎えに来ない。
お父さんには、
いつ最後に会ったのか覚えていない。

仲の良いお友達は、
お昼寝が終わったらいなくなってるし、
おやつの途中に迎えにくるお母さんもいる。

「お迎えが早すぎるよー」

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むしろ裸でいい。

むしろ裸でいい。

うっかりと、
職員健康診断の日を
忘れてすっぽかしたことがある。

夜勤に従事する医療職は、
年2回の健康診断を義務付ける法律がある。

悪意はない。忘れていたのだ。
気づいた頃にはもう時は既に夕方で、
病院本部からくる、健診センター用の車両はとっくに帰路についている。
今更慌てた所で仕方がない。

あ、どうしよう!

と慌てたい気持ちも山々であるが、
そんな映像を見せる義理もない。
休みの日にわ

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真水を炭酸に変える。

真水を炭酸に変える。

私は、窓の向こう側の空を眺める。
雲が一つにつながったり、離れたり。
掌で掬ってなだらかにして、飛び込んでみたい。
頬杖をつく顎もじりじりと痛くなってきた。

毎日がつまらない。
45分の授業は、私の知りたくない情報をひたすらに垂れ流している。

理科室の水道は、蛇口が緩くて、時々ぴちゃんぴちゃんと、水滴が落ちていて

窓の淵には蜘蛛がゆっくり歩いていて
空はいつもより、やけに濃くて深くて

きっ

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