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ぶっ放す、をやめられない。

日本語について考える。
業務過多の時、疲労の強い時、酷く落ち込んでしまう時、敬語や、その場に合った言葉が使えなくなることはないだろうか。

先日若い男の子が、敬語について指導を受けていた場面に遭遇した。

どうした?と聞くと、

彼はどうやら、
患者様に、「おいで」と、遠くから、呼んだそうだ。上司からは、「おいで」 ではなく、敬語を使えと。

彼の言い分を聞く。
「”おいで”は、”来る”の、尊敬語です。
相手を敬う気持ちを捨てた覚えはありません。
ただ、口馴染みがあるので、なかなか治りそうにありません」

「おいでー!」と言ったあと、周囲が、ピリつき、時が止まったことを、彼も理解したと言う。

きっと、ニュアンスの問題なのだろう。
相手が聞いた時に、どんな感情が芽生えるか。
彼の言い方は、とても優しさと親しみがあり、息子のような可愛らしさがある。
そして、口について出ちゃう言葉は、誰にしても必ずあるだろう。

私も、どうも言ってしまうキーフレーズがある。

手術を控える患者さんの前処置で、浣腸をかけた時の話だ。
60mℓほどのグリセリンという溶液を肛門から注入する。溶液が充満するまで、しばらく排便を堪えて欲しい、それから、トイレに向かいましょうと説明し、部屋を退室する。

その日は、とても忙しい日だった。

あちこちで声がかかる。

「緊急入院きたよー。
レントゲン撮ったら上がってくるから準備してー。」

「満床のベッド開けて!患者一人出すよ、もう一件、アッペの人くるよー!」

「心停止起きてるよー!」
「ドクターどこ行ったー?!?」
「DC持ってこーい」
「ボスミンないぞー!薬局走れーー!」

そんな中、

「うんこしてもいいでしょうか…?」

とナースコールが鳴る。
忘れてた、浣腸かけてた…


「はい、ぶっ放してください!」
私はナースコールを、切った。


手術介助の、機械出しナースをやってた時の話だ。オペは長時間で、既に6時間を超えていた。私の便意は、すでに最高点に達していた。

オペ中は、手を下ろすことは許されない。
不潔だからだ。

ドクターから指示が飛ぶ。

「メッツェン」
「視野広げて、みえないよ」
現場は、緊迫していた。


BGMはB'zが流れていた。

サビが聞こえる。
私の視界は、既に真っ白な景色変わっていた。


私は言った。

「便意限界です。ぶっ放します」


周囲の時が止まる。


音楽は流れる。


「♩〜そして〜羽ばたく〜

ウルトラソウル!!!〜♩」


「hei!!」

を待たずして、私は手を下ろす。
自身の緊急事態。

私も、”ぶっ放す”をやめられそうにない。


この後、私は手術室ナースをクビになる話は、また後日お話ししよう。


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