ホームドラマ

『アンドレーア』4. 大学生活

アンドレーアはサッカー引退後、猛勉強を重ねて、十八歳のうちに大学に合格を果たした。ブラジルは年末年始に大学受験が行われ、アンドレーアの誕生日直前となる二月初旬が新学期である。残念ながら長年サッカーに力を入れていたこともあり、学力では姉には及ばず違う大学になってしまった。それは致し方なかったと思う。
受験勉強によりさすがに毎日通うのは無理だったが、アンジェリカの空手もほぼ週一回のペースで続けてきた。

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『アンドレーア』3. アンジェリカ

第三章 アンジェリカ

「どうしたの?」
マリアは玄関で立ち尽くす、アンドレーアの変わり果てた姿を見て言葉を失った。大きな荷物自体は行きの時と同じだが、靴下や脛には血の痕まで付いていた。
「……私、サッカーやめる。あのクラブ、弱いなんて問題じゃない!
何から何まで、全てが最低すぎる!
あんな酷いクラブだと思わなかった……」
アンドレーアの悔し泣きを押し殺す顔を見て、マリアは
「とりあえずお風呂入り

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『アンドレーア』2. ブラジル女子サッカー

第二章 ブラジル女子サッカー

7月下旬、日本での一学期終了と夏休み開始をもって、ベルジ家はブラジルへ戻る引っ越し準備に入った。
アンドレーアが10歳、8月生まれのマリアが誕生日を迎えて15歳となった。
生活用品でいらなくなったものは、ベルジ家の厚意で加代の両親が引き取った。
加代は引っ越しの邪魔にならない日を選んで、残り少ない時間のうちなるべくマリアとアンドレーアに会う日を増やした。

アンドレ

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大甲子園メシ

ファンファーレが鳴ってご飯が炊けたが、誰も「いただきます」を口にすることはできなかった。杓文字がないことがすぐに発覚したからだ。

「冗談じゃない!」
「どうやって装うと言うの?」
 今にもちゃぶ台がひっくり返りそうだった。

チャカチャンチャンチャン♪

「甲子園に行ってしまったわ」
 おふくろが事情を打ち明けた。
 10年に1度の甲子園が開かれたのだ。

「杓文字でホームランが打てるか!」

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どうもありがとう!
9

映画「カラー・オブ・ハート」

1998年に製作されたトビー・マグワイア主演のファンタジー映画です。

《あらすじ》1950年代のホームドラマ「プレザントヴィル」にハマッている高校生のディビッドは、ある日双子の妹ジェニファーとリモコンでチャンネル争いをしていると、いつの間にか「プレザントヴィル」の世界に入ってしまいます。

当時のドラマはまだ白黒で暴力も性描写もなく平穏そのもの。だが、本能のままに行動するジェニファーによって、モ

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ありがとうございます❗私もスキです!
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【小説】カナちゃん(3)

相変わらず宇田川さんが放課後までずっとついてくる生活を続けた。金曜日まで、ずっと宇田川さんは飽きなかった。逆にすごいなと思いつつも、他のクラスメイトとろくに話すこともなく過ごしてしまったことだけは、ちょっと困ったな、と思う。
 宇田川さんと付き合ってるの? とか、そうやって仲良くもないのにニヤニヤ聞いてくる奴もいて、不快、ってやつだ。カナちゃんに相談したら、そう言ってた。その言葉の、やわらかい文字

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いつもありがとうございます!
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【小説】カナちゃん(2)

中学は十分くらい歩いたところにあった。大きい商店街も家も密集してるところだから、学校のグラウンドもそんなに大きくない。生徒もそんなにいないというので、なんというか『ちょうどいい』感じの広さ。
 校舎の壁はちょっと黄ばんでいたけど、廊下も教室もきれいだった。
 先生も、漫画に出てくるみたいなキャラの濃い先生というより、家でうさぎでも飼ってそうな、大声で怒鳴らなそうな人ばかりだった。静かってより、やさ

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20枚シナリオ「オカマ親父と捻くれ娘と」

人 物
川上大和(17)洛西高校二年生
川上宗次郎(45)大和の父。寡夫

○川上家・リビングキッチン(夕)
   川上宗次郎(45)、ボールで挽肉を捏ねる。
   川上、眉間に皺を寄せ、
川上「大和ちゃん、ゴロゴロゴロゴロして、宿題はどうしたのよ?」
   川上大和(17)、ソファーに寝転がり、テレビから目を離さない。
   ソファー前の机の上に、ポテチ袋とコーラのペットボトルが乱雑に置かれて

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【小説】カナちゃん(1)

カナちゃんはお世辞にも、子どもの手本になるような大人ではなかった。手本、というより、見本、と言うほうがちょうどいいな、と思うほど、カナちゃんは心が子どものまま、身体だけが大きくなったような人だった。

 実家に帰ってくると、すぐにその辺に靴下を脱ぎ散らかすし、だいたい昼まで寝ている。仕事は大丈夫なのかなと思うと、急にスイッチが入ったようにパソコンの前に座ってカチャカチャ朝までやって、僕がまた起きた

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オレのタナー一家を返してくれ!!

昔NHKでやってたアメリカのホームドラマ「フルハウス」。
あの手のドラマは吹き替えの声まで込みで作品だという認識でいる。
「フルハウス観よっと!」ってなった時に、頭の中ではすでに色々鳴ってるのだ。
オープニングの曲とともに登場人物たちのそれぞれの声が鳴っているのだ。
脳内再生されているそれらの音と、実際に始まったドラマの中の音を無意識のうちに照らし合わせながら「あー、コレコレ」と、安心するのだ。

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