あんのこと
Amazonプライムビデオで映画「あんのこと」を観た。
今年、2024年公開の映画なのに、会費500円少々払っていれば無料で観られる。
ちょっと得した気分だ。
この文章は「以下」に「ネタバレ」があります。
「あんのこと」、「あん」という女の子を演じる主演の河合優実が相変わらず素晴らしい。
この役は他の誰にも演じられないだろう。
「売春」や「覚醒剤」に明け暮れ、家では「実の母親」から「DV」を受けている女の子を河合優実が、あたかもこともなげにどこかドライでちょっぴり明るく演じる。
佐藤二朗と稲垣吾郎、二人とも癖の強い役。
入江悠監督の演出が凄すぎる。
この映画に出会って良かった。
「音楽」では無く、「音」の「演出」がすごくて、「生活感」「日常性」が「映画の画面」から吹き出して来る。
さりげない、「電車の通過音」や「飛行機の通り過ぎる音」、河合優実が「ゴミ屋敷となった自宅」で歩き回る時に、「プラスティック」を踏みつける「どこにでもある様で、なかなか聞くことが出来ない音」。
そんな素敵な「音」が詰まった映画だ。
でもでも、映画は悲しい結末を迎える。
僕は「微笑む様な天使の残像」がまぶたの裏に焼き付いてしまった、それが河合優実の存在。
ドラマ「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」で、様々な「障害」を抱えた「家族」を「軽やかなコンダクター」の如く、真ん中で踊る様に演じ切る主演の河合優実がそうな様に、この映画でも何故か「重い悲しみ」は残らない。
目黒蓮主演の「海のはじまり」も「新宿野戦病院」も実は「ホームドラマ」。
「ドラマ」や「映画」は「ホームドラマ」に回帰している。
9/21(土)にテレビ朝日系全国ネットで放送されるスペシャルドラマ「終りのない街」(山田太一原作、宮藤官九郎脚本、大泉洋主演)。
今回、山田太一が書いた小説の3回目の「ドラマ化」である。
前の2回は山田太一自身が「脚色」を担当している。
このドラマも異色の「ホームドラマ」。
山田太一さんが亡くなった時に、「終りのない街」の1回目の「ドラマ化」の「シナリオ」を読んだが、ものすごく面白く、ものすごく衝撃的なドラマだった。
「戦争」の「怖ろしさ」「悲惨さ」「虚しさ」「愚かさ」をちゃんと教えてくれるドラマ。
山田太一一家を思わせる「シナリオライター」の家族が一夜にして、「現代」から「昭和19年の太平洋戦争中」に「タイムスリップ」する話。
これ以上は「ネタバレ」になるので書けないが、絶対観て欲しいドラマである。
宮藤官九郎は山田太一を尊敬し、山田太一は木下惠介を尊敬している。
木下惠介や山田太一が働いていた「松竹大船撮影所」で作られていた「松竹映画」は「松竹大船調」「松竹家庭劇」と言われた「ホームドラマ」のメッカ。
「男はつらいよ」シリーズの山田洋次監督は「松竹大船撮影所」、山田太一さんの4期上だそうだ。
もちろん、「寅さん」も「ホームドラマ」。
さらに「渡る世間は鬼ばかり」など、「ホームドラマ」をたくさん書き続けた脚本家・橋田壽賀子も「松竹大船撮影所」の出身だ。
「韓国ドラマ」の様に「ハリウッド」を真似て、「派手なエンタテインメント」を作り、「世界市場」を目指すのはもう止めよう。
これだけ「インバウンド」で「日本の魅力」に惹かれて、たくさんの外国人が「日本」を訪れるのだから、「ドラマ」も「映画」も「日本的な要素をたっぷり取り入れた様々な形のホームドラマ」を目指せば良いと思う。
そう、今は「ホームドラマ」の時代なのだ、間違いなく。
「肝っ玉かあさん」「ありがとう」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」というドラマの諸先輩が作ったものを「換骨奪胎」して、新しい「ホームドラマ」を作って欲しい。