松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/douj…

松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/doujin/detail/blur-matsuo/ 初の短編集『月に鳴く』(破滅派)が電子書籍で発売になりました。→https://amzn.to/4175oUq

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最近の記事

20240717

 折坂悠太『呪文』を聴いている。二〇二一の傑作『心理』から実に三年ぶりとなるスタジオアルバム。折坂はコロナ禍でのフジロック出演をキャンセルしたことで一時ファンや当時の業界内でも賛否の別れる渦中の人になった記憶がある。わたしはその前、くるりの主宰する「京都音楽博覧会2019」で彼のライブを遠巻きに観たことがある。フジテレビ系月9ドラマ『監察医 朝顔』の主題歌「朝顔」を歌うなど、ミュージシャンとして広く知られるようになっていた頃で飄々とした面持ちと独特の高めのトーンと揺らぎのある

    • 20240716

       山本政志監督の映画『ロビンソンの庭』を観た。若き町屋町蔵や横山SAKEVI、江戸アケミなど日本の音楽シーンで活躍していたミュージシャンたちが出演している。廃墟になった学校にスクワッド(不法占拠)してキャベツ畑を作って自給自足の生活をする中で奔放に生きる若者の日常を幻想的に描いている。筋らしい筋はなく、アート系と言っていいだろう。タイトルのロビンソンはロビンソン・クルーソーから来ているが、スピッツの「ロビンソン」という有名な曲のタイトルはこの映画から来ているということを聞いた

      • 20240715

         ベンハミン・ラバトゥッツ『恐るべき緑』(松本健二訳、白水社)を読んだ。2022年ブッカー賞国際部門で最終候補になったオランダ生まれのチリ作家による話題作。実在した科学者、物理学者、数学者を題材に事実を基にフィクションをない交ぜにした、少しわたしたちが想像する小説とは趣きの違う短編集。中でも白眉なのは、第二次大戦末期にナチス高官らが所持した青酸カリと、西欧近代の青色顔料の歴史、第一次大戦の塹壕戦で用いられた毒ガス兵器の開発者フリッツ・ハーバーの史実が交錯する「プルシアン・ブル

        • 20240714

           トランプ元米大統領が銃撃を受けたという知らせ。加害者は射殺されたが、トランプの演説会場にいた一人が撃たれ死亡するという痛ましく、衝撃的な事件になってしまった。トランプは右耳を銃弾がかすったものの命に別状はなく、事件の瞬間を捉えた映像ではSPに取り囲まれながらも自分が無事であることをアピールするために右拳を突き上げているトランプとそれに拍手を送り「U.S.A.!」と歓声を上げる聴衆とが映っており、映画のような光景だった。詳しいことは分からないが、今回の事件を自作自演などと訝し

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        • 曖昧日記
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        記事

          20240713

           黄色い天道虫がリュックの肩掛けにひっついているのを発見した。なんとなく、吉兆の知らせというイメージを持っているのでそのままにしてしばらく公園を歩いてた。公園を抜ける頃には天道虫はどこかに行ってしまった。まあ、しかし一日を振り返っても特に幸運と思われることはなかった。無事でいられただけで感謝すべきなのだろう。

          20240712

           川上未映子『夏物語』(文春文庫)を読了。突然、豊胸手術をすると言い出した姉・巻子と姪の緑子との思い出を綴った一部と、AID(人工授精)を受けようかと葛藤する中で母になること、子どもを産むということはどういうことなのかAIDで生まれた善百合子ら当事者と向き合いつつ決意に至るまでを描く二部。まさに『乳と卵』の問題意識を長篇化した作品。夏の暑い時に感じる身体の嫌悪感や酒のつまみに食べるジャッキーカルパスなど細やかな描写が自分の感覚ととても共感できるところがあった。一部はそうした夏

          20240711

           映画『aftersun/アフターサン』を観た。11歳のときに31歳だった父親と二人で過ごしたトルコでの休暇を当時の父と同じ歳を迎えたソフィが微睡ながら思い返すという構造。ハンディカムのカメラ映像や、従来のカメラワークではなく、鏡像や陰影、空、海など独自のカットを多用したカットも斬新な気がした。現在において父がどうしているのか、ソフィはどう成長したのか、全く不明のまま作品は終わるがところどころに散りばめられた父の精神状態の不安さや、父自身の過去と思われる断片的記憶などが差し挟

          20240710

           『推しの子』のアニメを観ている。かなり面白くなってきた。シーズン1ではアイドル・演劇論、そしてリアリティショーやSNSに対する問題提議を含む内容で地下アイドルと運営の問題などかなり実情に突っ込んでいたところもさることながら、YOASOBIの主題歌に全て持っていかれた感があった。  今回も中島健人とキタニタツヤのユニットGEMNと羊文学によるOP曲、ED曲は豪華と言えるが、やはり内容に注目したい。2.5次元舞台から幕を開けるシーズン2では(シーズン1でも漫画のドラマ化で原作者

          20240709

           ドキュメンタリー映画『三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実』を観た。先日の石丸氏のメディア対応や、小池百合子都知事の討論拒否などを報道で見てきただけに、三島の真っ当さが際立っていた。三島だけでなく、まだ大学生だった全共闘の聴衆も三島の話を最後まで聞き、堂々と意見をぶつけているところも好感を抱いた。それだけに、その後のあさま山荘事件や三島の割腹自決など人間というものの不可解さを改めて思う。分断が叫ばれて久しいが、この映画を観て思ったことは、政治に必要なことは討論の場を設け

          20240708

           選挙速報番組での石丸伸二氏のメディア対応が話題になり、〝石丸構文〟としてトレンドに上がっている。主に質問者の質問に対し疑義を挟み、自身の正しさを強調して〝論破〟したように見せる対応のようだ。わたしも彼の出演番組をいくつか見たが、かなり威圧的で、攻撃性の強い口調も相まって不快極まりないが、これを揶揄するように一気に拡散している。一方で、わたし世代ではホリエモンやひろゆきなど〇〇年代、いわゆるITバブル期に現れた起業家たちに同じような傾向を見ている既視感がある。それ自体は小泉政

          20240707

           七夕。近所の公園では入り口付近に短冊をぶら下げた竹が二本あって、何が書いているのか見てはいないが、こういうものに願いを書き込んでいたのも小学生くらいまでだったと思い返している。何を願いごとに書いたのか、全く覚えていない。  東京都知事選挙投票日。蓋を開けてみれば、小池現職の強さ、石丸伸二候補の意外な得票数、蓮舫候補が代表したリベラル的勢力の凋落が顕著な結果となった。やはり共産党との連携は機能しないことが今回で如実になったのではないか。衆議院総選挙を控える今、リベラルな野党の

          20240706

           期日前投票をしてきた。いろいろと考えることが多い選挙だが、こういう時こそ一人の有権者として未来を託せる人物に都のリーダーを任せたいと思った。そういう意味で自分が一番適任と思える候補者の名前を投票用紙に記した。  衆議院総選挙も控える前哨戦という位置づけもあるが、やはり東京一極集中している今の状況は健全ではないと思う。結局、都知事が政局の命運を握ってしまう現状では都政はそのまま国家の政局に飲まれることになる。思い返して欲しいが、八年前に小池百合子が都知事になった時はみどりの党

          20240705

           摂氏三十五度を超える真夏日。広場の噴水前で涼んでいると、一羽の鳩が噴水の周りを一周してから水浴びを始めた。その様子を見て、雀がさらにその横で水浴びをする。噴水は人工物ではあるが、よくテレビなどで観る水場に多様な動物たちが集まって来る光景はこのような感じなんだろうな、と少し微笑ましく感じた。それにしても暑い。この調子だと、八月は四〇度超えは避けられないのかもしれない。

          20240704

           テリー・ギリアム監督の英映画『ゼロの未来』を観た。『未来世紀ブラジル』というカルト的人気SF映画と同じく、ディストピア的近未来を描いたSF作品だ。話が進むにつれて彼がどのような価値観で生きているのかが徐々に分かっていくという展開で、観劇者に紳士な映画だと感じた。いつも通り、ラストはハッピーな感じではないが印象深い作品だった。

          20240703

           ながらく書き続けている小説でなかなか掴めないでいたモチーフに関するアイデアを思いついた気がする。まだ小さなぼんやりとした感覚だが、これからいろいろと資料を読み込んで具体化していきたいと思う。パッチワークのようにある一つの完成された物語ではなく、過去に生成したテキストの断片を繋ぎ合わせて再び命を吹き込む。それがわたしが小説を書くという行為なのではないか。ベンヤミンがパウル・クレーの《新しい天使》という絵についてこう語っている。  きっと、わたしが書きたいのもこの瓦礫の山であ

          20240702

           入江悠監督の映画『SRサイタマノラッパー』を観た。埼玉でSHO-GUNGという六人組HipHopグループを結成し、廃墟の工場で毎晩集まっているものの具体的な音楽活動は一向に始まっていない二〇代前半の鬱屈した生活の中でもがく若者たちの群像劇。  幼馴染の役でAV女優のみひろが出演しており、そのまま元AV女優として地元に戻ってきた役を演じていて彼女の演技が一番よく見えるくらいに拙さを感じた。それはわざとやっているのかもしれないが、物足りなかった。