松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/douj…

松尾模糊/BlurMatsuo

私的に物書き始めました。破滅派同人→https://hametuha.com/doujin/detail/blur-matsuo/ 初の短編集『月に鳴く』(破滅派)が電子書籍で発売になりました。→https://amzn.to/4175oUq

マガジン

最近の記事

20240918

 保坂和志がXで「小説を書くことより大切なことは〈日々書くこと〉。日々書いている先に、小説や何かが生まれる。」と呟いていて、至言だなと思った。掌編や短篇までなら小説を書こうと思って、形になる文字数だと思うが、中長篇となるとどうしても途中で書けない状態が出てくる。自分の場合だと、むしろ書きながら考えることの方が多くなる。日記やエッセイなどを書き始めたのはここ二年ほどだが、明らかにそこで書いたことが小説の種になっている。保坂も「ただし、それはメモや備忘録でなく、広い意味の文体(或

    • 20240917

       大根仁監督のNETFLLEXドラマ『地面師たち』を観た。実際に起こった二〇一七年の「積水ハウス地面師詐欺事件」を題材とした新庄耕による同名小説を原作にしたクライムもの。被害総額は五十五億円に上り、報道等で話題になったみたいだが、全く記憶になくて新鮮な気持ちで観た。原作がそうなのか、今作では百十億円を超えるヤマ、ハリソン山中という人を殺しまくる地面師のボスなどかなりエンタメ寄りにカリカチュアされた感があるが、疾走感のあるストーリー展開の要素にはなっている。  それにしても。大

      • 20240916

         マルカム・ラウリ―『火山の下』(斎藤兆史監訳、渡辺暁・山崎暁子共訳、白水社)を読んだ。アルコール中毒のメキシコの英国領事ジェフリー・ファーミンがクワウナワクで突然、彼を再訪離婚した元妻イヴォンヌと弟のヒューと共に過ごす死者の日一日の出来事をそれぞれの視点を通して語る。  なんと言っても、白眉なのはジェフリーの酩酊した思想が白昼夢のように語られるその文体だろう。もちろん、筆者のラウリ―自身がアル中であった経験がここに反映されていることは分かる。それでも一体どうやって書いたのか

        • 20240915

           トランプ元大統領への銃撃が再び起こったとの米報道。事件は未遂で終わったものの、これから年末にかけて大統領選が佳境に入り、さらに両陣営とも舌戦が加熱していくことが予測され、この手の犯罪をどう防いでいくのか心配である。わたしの出身地である長崎でも本島県知事が銃撃されたり、伊藤市長が銃殺されたりする事件が起きたが、二つの事件とも右翼団体や暴力団が関係していたということで事件は解決を見たが、ホワイトハウス襲撃事件やトランプ現象と言われる昨今の米国での政治的な事件は、民主主義システム

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        • 曖昧日記
          700本
        • 小説
          2本
        • 完全なる消え方の練習
          2本

        記事

          20240914

           T.S.エリオット『荒地』(岩崎宗治訳、岩波文庫)を読んだ。「四月は残酷な月……」という有名なフレーズで知られるエリオットの代表作だが、彼の師でもあるエズラ・パウンドによって大きく手を加えられていると解説で知った。難解と言われる彼の詩、確かに引用や隠喩などを知ろうとすると膨大な知識を有することは間違いない。それでも、詩というのは情感に訴えるものが大きい魅力がある。「荒地」には、わたしがロンドンに滞在していたこともあってか、ロンドン――〝Unreal City〟として描かれる

          20240913

           十月中旬まで残暑が残るとの月刊予報。去年もすぐに寒くなった記憶があるが、今年も秋らしさを感じることなく寒さがやって来るのだろうか。こういう風に四季が失われていくのかと思うと、温暖化ももう一段階深刻化したということだろう。亜熱帯というか熱帯になるのだろうか。  所用で新宿の紀伊国屋本店に行った。前川國男の設計したビルの外観は相変わらず独自の存在感を放っている。近刊情報の時から気になっていたステファン・テメルソン『缶詰サーディンの謎』(大久保譲訳、国書刊行会)を購った。読むのが

          20240912

           イングマール・ベイルマン監督の映画『第七の封印』を観た。十字軍の遠征から帰国した騎士アントニウスがその途中で死神と出会い、自身の命をかけてチェスの勝負をしながら屋敷へと付き人や道中で出会った村人たちと連れたって行く。村には黒死病が蔓延り、人々の暮らしも荒廃していた。そんな中で出会った旅芸人夫妻と生まれたばかりの彼らの赤ん坊にアントニウスは心洗われるが、心霊現象の見える旅芸人はアントニウスと死神のチェスを見てしまい、家族を連れて彼らから離れる。最後は全員がアントニウスの屋敷で

          20240911

           9.11事件から早二十三年が過ぎた。奇しくも、アメリカでは移民に対し硬派な姿勢を見せるトランプとイスラエルを全面的に支持するハリスという二人の大統領選が始まっているが、二十年前から世界情勢もアメリカ自身も全く変わっていないかのような状況を見せている。  当時、わたしは大学生であれは日本時間の早朝だったと思うが、生活リズムが逆転していて起きており、テレビで二機の飛行機がエンパイアステイトビルに突っ込む映像をぼんやりと見ていた記憶がある。すぐに大変なことだとは思っていないくらい

          20240910

           オルタナ旧市街+小山田浩子『踊る幽霊』『小さい午餐』W刊行記念トークを観覧に三軒茶屋の書店Twililightに行った。小山田さんとは昨年七月に刊行された文芸雑誌『代わりに読む人1』(代わりに読む人)で恐れ多くもご一緒させて頂いた。昨年の文フリでも友田さんの紹介でご挨拶させてもらっていて、サインをして貰った時に覚えてもらっていて嬉しかった。オルタナさんはその前に出た準備号『代わりに読む人0』掲載作「完璧な想像」を読んで、とても格好いい文を書く人だと思っていた。彼女にもサイン

          20240909

           九月も一週間が過ぎたが、残暑が厳しくまだまだ夏の気分が抜けない。相変わらず、夜の帰り道にアイスを食べて帰るのが日課になっている。とは言え、日が落ちるとずいぶんと涼しくなった。昼間には蝉が鳴く声が響くが、夜には鈴虫や蟋蟀の羽音が涼し気に響いている。去年は秋の間もなくすぐに寒くなったと記憶しているが、今年は秋の夜長を楽しめる十二分な期間が欲しいと思う。

          20240908

           ラテン語さん『世界はラテン語でできている』(SB新書)を読んだ。『オデュッセイア』に触発されて、なんだかラテン語が気になって、つい手に取った。もともとnoteで連載されていたものが新書として出版されたようだ。本書には『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家ヤマザキマリと著者の対談も併録されている。  ラテン語自体が欧州の言語のもとになっているので、日本で使われる外来語も当然ながらラテン語がもとになっているものも多いらしい。欧州ではラテン語を学校で学ぶこともあり、もっと身近に使わ

          20240907

           ホメロス『オデュッセイア』(松本千秋訳、岩波文庫)を読んだ。古典と呼ばれるものは何となく避けてきたが、もっと早く読んでいれば良かったと古典に対する考え方を改めさせられるくらいに面白かった。古典が古典と呼ばれる所以もよく分かった。どうしても、古典と言われると格調高い、教養的な敷居の高さを感じてしまうが、オデュッセイアの場合は、かなりエンターテインメント性の高い物語だと思う。前半はテレマコスの父オデュッセウスの巨人あり、魔術ありのファンタジー冒険譚であり、後半はオデュッセウスの

          20240906

           三宅唱監督の映画『夜明けのすべて』を観た。今年公開されて話題になっていた。三宅監督は前作の『瞳を澄ませて』が素晴らしかったので、ずっと気になっていた。瀬尾まいこによる同名小説が原作。今作の主演はパニック障害を持つ青年・山添にSnow Man松村北斗と重度のPMS(月経前症候群)に悩まされる藤沢に上白石萌音。中でも、上白石の自然体の演技には唸らされた。山添がPMSを学んで藤沢の病状を理解していき、自然と二人が同士のようになっていくその進展も自然な流れで良かった。

          20240905

           午前中に祖母の介護施設に出向いた、おそらく五、六年ぶりとなる再会はこれまでとは全く違う月日の流れを感じさせた。まだ歩けていた祖母は寝たきりで骨と皮の小さな剥製のような生命力の欠片もない印象を与えた。わたしを見ても、先週訪れていた弟と勘違いしているようで、ぼーっとした様子だった。それでも手を握って話しかけているうちに「はらへった」と言うまで活力を取り戻し、表情も豊かになった。そう言っても喉がものを通さず彼女が食べれたのはクーリッシュのバニラを匙で四口と、少量の甘酒だけだった。

          20240904

           昨日はまだ動けた父もコロナで高熱のため寝込んでしまった。母は熱は下がったらしく、まだ咳きこんでいたが朝食の準備をしていた。とは言え、引き続き両親が動けないので地元の友人に連絡して長崎の街に出かけることにした。空港からの道は繁華街を通らずそのまま実家へと向かうルートなので、長崎に新幹線が通って再開発された長崎駅近くへは初めて訪れた。  たしかに大きな立体道路が通って開放的になっていた。平日の昼間ということもあってか、交通量はそう多くなかった。しかし、リニューアルオープンしたア

          20240903

           祖母が危篤との知らせを受けて帰郷。何年かぶりに長崎の地を踏んだ。ところが、迎えに来るはずの母の姿は空港になく父一人がロビーに立っていた。父は「お母さん、コロナでダウンしとる」と咳きこむマスク姿で言った。どうやら、一足早く帰って来ていた弟がコロナに罹患していたらしく夫婦揃ってうつされたようだった。何というタイミングの悪さだろう、とわたしは口にせずに思った。ひとまずこの日は祖母のいる介護施設には寄れず実家に戻って、寝込む母と具合の悪そうな父とを後目に近くのスーパーで寿司と惣菜を