sae@映画ソムリエ

年間120本映画館で最新映画見るのが趣味の会社員(ジャンル問わず。ただしホラー除く)。…

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年間120本映画館で最新映画見るのが趣味の会社員(ジャンル問わず。ただしホラー除く)。ネタバレなしでおすすめ映画をご紹介します。Amazonアソシエイトに参加中。

最近の記事

映画感想文「プリンセス・ダイアナ」人生は二項対立で成り立ってると痛感するドキュメンタリー映画

食い入るように、テレビに見入ったのを覚えてる。 生まれて初めてみた。あんなに長いベール。真っ白で何メートルも延々と続いてた。厳かな気持ちになった。 そして金髪で碧眼。まさにお姫様な完璧な容姿。 不幸が入り込む余地なんて全く見えなかった。おとぎ話のようなシンデレラストーリー。 そんなダイアナ元皇太子妃のドキュメンタリー。 彼女の人生は、皮肉だ。皇太子妃になったからこそ、彼女は力を持ち、多くの機会を得て、天職とも言える社会活動に勤しむことができた。 しかし、彼女には皇

    • 映画感想文「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」喪失が人を成す残酷さを思う

      人生で後悔していることは、子供を持てなかったこと。 そう語る、南米ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカのドキュメンタリー映画。 貧困家庭に生まれ、長じては社会主義に理想を抱き、左翼ゲリラとして活動。 銀行を襲い、その富を貧しい人々に分配するなど、主義主張のためとはいえ、数々の犯罪を重ねる。 4回逮捕され、うち2回脱獄。 30代から40代にかけ、十数年間を刑務所で過ごす。ゲリラ仲間の彼の妻も同様に20代から30代に長い刑務所生活を送った。離れ離れに暮らすことを余儀なくさ

      • 映画感想文「ランディ・ローズ」25歳で夭折した伝説のギタリストのドキュメンタリー。ひたすら切ない

        真実は小説よりも奇なり。 しみじみそう思った、あるギタリストのドキュメンタリー映画。 ロックには疎い。従って「25歳で夭折した伝説のギタリスト」ランディ・ローズのことは全く知らなかった。 才能に恵まれ、幼い頃から公園でギターを奏でればあっという間に沢山の人が集まったというカリスマ性。 オフにも、もっと上手くなりたいと練習を重ね、更にクラッシックも学んでいたという向上心。 70年代の米国において、大麻を楽しむ友人に早死にするよと忠告していたという親切さと真面目さ。グル

        • 「Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下」カフェ並みに美味のコーヒーとアップルパイ楽しめる映画好きの聖地

          えー、ありえないんだけど。と最初はドン引いた。 2023年6月、Bunkamuraシネマの移転の時だ。なにしろ、ビックカメラと居酒屋のひしめく駅前雑居ビルへの移転であったから驚いた。 いままでとイメージが180度違う。 渋谷駅から延々歩いた先にあった東急本店。その向かいにあった、Bunkamura。バブルまっただ中の平成元年にオープン。 以来ずっとあったそこは、ちょっと背伸びして訪れる、いいものが溢れてる静かで大人な場所だった。 特に地下にあったカフェレストラン「ド

        映画感想文「プリンセス・ダイアナ」人生は二項対立で成り立ってると痛感するドキュメンタリー映画

        • 映画感想文「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」喪失が人を成す残酷さを思う

        • 映画感想文「ランディ・ローズ」25歳で夭折した伝説のギタリストのドキュメンタリー。ひたすら切ない

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          映画感想文「プリシラ」良くも悪くもソフィア・コッポラ、プレスリーに翻弄された14歳の少女の物語

          ソフィア・コッポラらしい、あっさりテイスト。 過去作品と異なり主人公はまだ存命中。ということも起因しているのか、少し綺麗事すぎる感じでストーリーは流れる。愛憎のどろどろ感なし。それに、ちょっと肩透かしを喰らう。 しかし、よくよく考えてみれば、衣装や小道具のポップでカラフルな華やかさ、砂糖菓子のようなくどすぎる位の甘さ。それらが彼女の作風だが、その見た目のこってりさに比べ、情緒面の描き方は驚くくらいに淡白である、がそもそもソフィア・コッポラの持ち味であった。 なので、定石

          映画感想文「プリシラ」良くも悪くもソフィア・コッポラ、プレスリーに翻弄された14歳の少女の物語

          映画感想文「リンダはチキンがたべたい!」カラフルな絵と躍動感ある表現が素晴らしいフランスのアニメ

          シンプルな線、カラフルで大胆な色使い。 まるで晩年のマティスの切り絵のような、独特の躍動感に溢れた絵が特徴的なアニメ。 感情に合わせて絵が歪んだら広がったり縮んだり。その人のキャラクターに合わせて色が違ったり。そんなアレンジも可愛くて楽しい。かなり、好みであった。 父を亡くし母と2人暮らしのリンダ。不器用でいつも忙しくイライラしてる母から、あるものをなくしたことで、強く叱責を受ける。しかしそれは母の勘違いであった。 なんでもすると謝罪する母にリンダが頼んだのは、父がい

          映画感想文「リンダはチキンがたべたい!」カラフルな絵と躍動感ある表現が素晴らしいフランスのアニメ

          映画感想文「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」満席。軽めミステリーに要素てんこ盛りの27作目

          初めてみた「名探偵コナン」。 週末の映画予約をしようとググったら、どこも満席のコナン新作。 子供向け映画と思ってた。なのに、夜の会も売り切れ。 まじか?なぜ?と興味持ち、視聴。ちなみに、私のみた回も夕方には満席になってた。 初めてみる身には、お馴染みのキャラクター達の位置付けと互いの関係性が見えぬが、終わる頃には理解。 しかし、27作目だって。凄いわー。会場には平均年齢22歳といった感じの若者がぎっしり。男女半々で男性が多いのが印象に残った。 気軽に見れる軽めミス

          映画感想文「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」満席。軽めミステリーに要素てんこ盛りの27作目

          映画感想文「フォロウィング」天才クリストファー・ノーランのデビュー作。70分の密度の濃さが凄い

          70分とは思えぬ、内容の濃さ! 「オッペンハイマー」でアカデミー賞複数人受賞のクリストファー・ノーラン監督のデビュー作。 低予算だったのか、モノクロ、尺も短い。登場人物も少ない。しかも有名な俳優はいない。 にも関わらず、引き込む力が凄い。グッと引き込まれてるうちに終わった。ジェットコースターのような、あっという間さ。 26年前の作品だが、新鮮。 作家を夢見る20代無職。暇を持て余すビル。 いつの間にか、無作為に人を尾行して覗き見することに楽しみを見出すように。いつ

          映画感想文「フォロウィング」天才クリストファー・ノーランのデビュー作。70分の密度の濃さが凄い

          映画感想文「ラブリセット30日後に離婚します」韓国映画らしいドタバタラブコメディ。気分転換に最適

          恥ずかしいくらいの王道ラブコメ。 幼い頃にテレビで見ていた、志村けんとかのコントを思い起こした。予定調和。かつ、ツッコミどころ満載でも、構わず全力疾走で突っ込んでく感じ。 ここまで振り切れば、笑えるし許せる。 なかなか良かった。 ドラマみたいな劇的展開で結婚した、ノ・ジョンヨル(カン・ハヌル)と、ホン・ナラ(チョン永山瑛太ソミン)。 それなのに結婚した途端、互いの悪いところが目につき、いつのまにか憎み合い罵りあうように。結局あっという間に離婚を決める。 しかし、裁

          映画感想文「ラブリセット30日後に離婚します」韓国映画らしいドタバタラブコメディ。気分転換に最適

          映画感想文「アイアイ」不思議な引力ある作品。永山瑛太と森山未來が凄い

          不思議な引力のある映画。 まず、森山未來と永山瑛太の役者としての力量がすごい。目が離せない。息が付けない。身体中からオーラを放つ、全身役者って感じのこの2人を心から尊敬すしてる。この人が出てる作品はなんであろうと観なきゃね、と思う。 バンドマンのマヒトゥ・ザ・ピーポー監督の初作品。 関西地方の地方都市。退屈な日々を過ごしていたコウ(富田健太郎)は、地元ではちょっと有名なバンドのヒー兄(森山未來)と出会う。 強引な彼に、俺の弟とバンドを組めと命じられ、言われるままに従う

          映画感想文「アイアイ」不思議な引力ある作品。永山瑛太と森山未來が凄い

          映画感想文「映画マイホームヒーロー」予告とは違うテイスト。勿体無い。それなりに良かった

          もったいない。 そういう映画が年に何件かある。 予告で良さを伝えられてない。ならまだしも、予告で実際とは違う映画であるかのようなメッセージが伝わるケース。 この映画もそうだった。 予告編見る限りこの映画は選ばないと思ってた。内容がちょっとグロそうだし、予定調和のドタバタコメディだろうと。 絶対見ないわーと、公開以来避けてきたが、観た人の感想を読んで「あれ?予告編よりも期待できる?」と思ったので視聴。 確かに予告とは違うテイストであった。家族愛、特に親の愛を描いた作

          映画感想文「映画マイホームヒーロー」予告とは違うテイスト。勿体無い。それなりに良かった

          映画感想文「ブルックリンでオペラを」唐突な展開が最後に大円団を迎える、正にオペラで心地よい

          なんてチャーミングな映画なんだ。 こういうの、めちゃくちゃ好き。唐突な展開だが最後に全てが集約されてうまくまとまっていくところ、正にオペラ的だ。 NYのブルックリンに住むセレブカップル、精神科医のパトリシア(アン・ハサウェイ)とオペラ作曲家のスティーブン(ピーター・ディンクレイジ)。 平穏に暮らしているが、それぞれ悩みを抱えていた。 スティーブンは5年間も新曲を書くことができず、長い大スランプに陥っている。毎日家で悶々としていたが、ある日、妻のパトリシアに励まされ出か

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          映画感想文「GOD LAND」アイスランドの雄大な自然を前に人間の小ささを感じるロードムービー

          アイスランドの自然が美しい。 雄大な山脈。ともかく山々が目に刺さるくらい迫力ある。透明な水を湛える川。高くて青い空。 それを楽しむと思えばよし。しかし、内容は、ひらすら暗い。そして、ひたすら長い。 しかも日本人に苦手な宗教。 デンマークの牧師ルーカス。彼は当時デンマーク占領下のアイスランドに布教活動に訪れる。 僻地の村に教会を建てるのだ。 しかし、言葉は通じない。村人は心を開いてくれない。村までの道は険しい。雨風の災害にも見舞われる。孤独と疲労の中、段々と彼は精神

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          映画感想文「アイアンクロー」愛と束縛は紙一重。マッチョな家族の悲劇。ため息漏れる力作

          プロレスは詳しくない。 辛うじてジャイアント馬場とアントニオ猪木がわかる程度だ。よって、当然ながらこの映画で取り上げられている、プロレスラーのフォン・エリック家のことは全く知らない。 父親は元チャンピオン。しかし自分が果たせなかった夢を息子4人に託し鍛え上げる。それは愛なのか束縛なのか。妥協を許さないその執念は知らぬ間に子供達を追い詰める。そこに愛があるだけに尚更やっかいだ。 一家はとても仲良しだ。 兄弟4人で筋トレし試合に出て、また家で共にトレーニングする。団結力が

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          映画感想文「オッペンハイマー」原爆を作った男の苦悩の戦後が切ないヒューマンストーリー

          広島と長崎の原爆投下。 小学校の教科書にも出てきた。いかに悲惨なことが起きたのか、何度も習った。 よって、日本人にとってタブーな感じがある原爆。 公開も危ぶまれた作品である。やっと映画館で観ることが出来た。 結論から言うと、かなり良かった。原爆どうこうというより、ひとりの研究者の生き様を描いたヒューマンストーリーであり、その苦悩が心に響いた。 才気走る、若き物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。 まだ未開拓の分野であった理論物理学の先駆者。

          映画感想文「オッペンハイマー」原爆を作った男の苦悩の戦後が切ないヒューマンストーリー

          映画感想文「パリ・ブレスト」希望がいかに人を駆り立て幸せにするか。舌触り良き映画

          どうしようもない母親を持つヤジッド。 育児放棄。約束は守らない。嘘を重ねる。おまけに精神不安定。 典型的な、自分の面倒も見れないのに子供を産んでしまったパターン。親だって完璧ではない。それでもこんな親の元に生まれたら本当に辛い子供時代を過ごすことになるとわかる。ひたすら胸が痛む。 なにしろ、これは実話を元にした映画なのだ。 しかし救いはある。それはひとときの里親の家での家族団欒だ。その家にはパティシエとして働く息子がいる。ヤジッドは彼を兄のように慕い一緒にスイーツを作

          映画感想文「パリ・ブレスト」希望がいかに人を駆り立て幸せにするか。舌触り良き映画